3章*おとなになるって、かゆいんだ! の巻

第24話ーなんかへんだな

 黒ドラちゃんとドンちゃんがお城へ出かけた日から何日か経ちました。


 朝、目を覚ました黒ドラちゃんは、洞から出て大きく伸びをしました。このところ、なんとなく体がグンと大きくなってきたような気がして、湖に自分の姿を映してみましたがよくわかりません。

「ドンちゃんに聞いてみようかな?」

 黒ドラちゃんはドンちゃんのおうちに行ってみることにしました。


 ドンちゃんのおうちに行くとお母さんとドンちゃんがちょうど巣穴から出てくるところでした。

「おはよう!ドンちゃん」

「あ、黒ドラちゃんおはよー!」

 さっそくドンちゃんに聞いてみます。

「あのさ、ドンちゃん、あたし大きくなったかな?」

「黒ドラちゃんは、もともと大きいよ?」

「えっと、そうじゃなくて、この頃目が覚めるたびに体が大きくなってきてる気がするんだけど」

 ドンちゃんのお母さんが黒ドラちゃんに尋ねます。

「洞が窮屈になってきたの?」

「ううん、そんなことは全然無いんだけど。なんだか体がムズムズするっていうか、体の中から何かが溢れそうっていうか……」

 ドンちゃんもドンちゃんのお母さんも、黒ドラちゃんの言う感覚がよくわからないようで首をかしげています。

「どうやったら黒ドラちゃんが大きくなったってわかるのかな?」

 森には黒ドラちゃんよりも大きな生き物はいないので、大きさを比べることは出来ません。

「うーん……」

 黒ドラちゃんも考え込んでしまいました。


「そうだわ、ブランに見てもらえば?魔力で大きさを調べる方法って、あるかもしれないし」

 ドンちゃんのお母さんがお耳をピンッとさせて言いました。

「そうだよ、ブランに聞いてみようよ!きっとそろそろ遊びに来てくれる頃なんじゃないかな?」

 ドンちゃんもお耳をピンッとさせて言いました。そういえば、スズロ王子とお別れする時にゲルードを森に寄こすようなことを言っていました。きっとその時にはブランも一緒に来てくれるに違いありません。

「じゃあ、今度来てくれた時に聞いてみる!」

 黒ドラちゃんがそう言った時、遠くの方からガチャガチャした音が聞こえてきました。黒ドラちゃんとドンちゃんはパッと顔を見合わせます。


「来た!!」


 ドンちゃんを背中に乗せると、黒ドラちゃんはびゅーんとスピードを付けて音のする方へ飛んで行きました。

 森のはずれを、ゲルードと鎧の兵士さんたちが歩いてきていました。

「ゲルード!いらっしゃい!」

 黒ドラちゃんがドシンっと降りると、ゲルードがさっとひざまずきました。

「これは古竜様、わざわざ出迎えていただくとは恐悦至極にございます。私どもだけではこれ以上進むことが出来ずにいたので大変助かりました」

「迷っちゃったの?まだ森の入口だよ?」

 黒ドラちゃんが不思議そうに言うと、

「ここは古の森。人の身ではこれ以上立ち入ることは出来ません。これまでは輝竜殿と一緒に居ればこそ、中の方まで進むことが出来ました」

「へー。そうなんだ」

 そういえばブランもそんなことを言っていました。黒ドラちゃんが一緒じゃないと、湖の方までは入ってこられないって。


「ブランは?」

 黒ドラちゃんはそう言ってキョロキョロしましたが、ブランの姿は見えないし匂いもしません。

「輝竜殿は新たな魔石を作るとかで山に籠られております」

「あんなにいっぱいあったのに?まだ作るの?」

「輝竜殿の棲みかにはお邪魔したことがありませんので、なんとも……。ただ、新しく特別な魔石を用意するため、とのお話でした」

「そうなんだ……じゃあ、今日は来ないんだね?」

「はい。本日はスズロ王子より古竜様のご機嫌伺いをするようにとのことで参上いたしました」

「ごきげんうかがい?」

「それなあに?」

 黒ドラちゃんとドンちゃんはゲルードがいったい何をしてくれるんだろうとワクワクして聞き返しました。


「古竜様がお元気かどうか、何かお入用のものや、お困りのことがあればお助けするように、とのことです」


「あたし、元気だよ!」

 黒ドラちゃんがすぐに答えます。するとドンちゃんが「黒ドラちゃん、あのことゲルードに聞いてみたら?」と背中からささやいてきました。

「あのこと、とは?」

 ゲルードったらしっかり聞いていたみたいです。


「あのねー、あたし大きくなったかなー?って」

「はて?」

 ゲルードにはよくわからないようでした。

「あのね、最近目が覚めるたびに体が大きくなってきてる感じがするの。体の中の方からグーンて感じに」

「ふむ、グーン……ですか」

 ゲルードは黒ドラちゃんのことを上から下までじっくり見ました。

「私が見る限り、あまり変化はないような気がしますが」

「そういうの魔力でわからないの?国一番の魔術師なんでしょ?」

 黒ドラちゃんが言うとゲルードは白いマントをサッとひるがえし「もちろん、国一番でございます!」と胸を張りました。

「しかし、竜と言うのは謎の多い存在で、まだまだ人の手で解明できている部分はほんのわずか」

「そうなんだー」

 黒ドラちゃんはがっかりしました。一緒にドンちゃんのお耳も垂れちゃいました。

「ですが、輝竜殿でしたら何か分かるかもしれません」

「でも、ブランは来られないんでしょ?」黒ドラちゃんが尋ねると「連絡を取ることは出来ます」とゲルードが答えました。マントの中から白い大きな魔石のついた杖を取り出します。

前に言っていた、王様から成人のお祝いでいただいた杖ですね。そして、魔石の部分を握りしめると、何かブツブツと呪文を唱えだしました。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る