2章了 おやすみ、黒ドラちゃん

 馬車を降りると、黒ドラちゃんとブランは竜の姿に戻りました。ドンちゃんは眠ってしまっているので、白い布でくるんで黒ドラちゃんが背負いました。

「ブラン、今日はありがとう。とってもとっても楽しかった!」

「黒ちゃんこそ、スズロ王子を救ってくれてありがとう」

「あたし、何にもしてないよ?王子にクマン魔蜂のはちみつ舐めさせてあげられなかったし」

 そうでした。結局王子様にあげようとしたはちみつは、ゲルードが巣ごとどこかに持っていっちゃったんです。

「約束通り、今度は僕が街を案内してあげるね」

「本当!?やったー!あ、ドンちゃんも一緒に連れて行けるかな?」

 黒ドラちゃんが不安そうに言います。

「もちろん。その時にはドンちゃんのお母さんにも、ちゃんと僕からお話するよ」

「本当?!ありがとう!」

 黒ドラちゃんは嬉しくて嬉しくて、ドンちゃんを背負っていなかったらお空に飛びあがって一回転しているところでした。

 ブランが「またね!」と言いながら帰っていくと、黒ドラちゃんは急いでドンちゃんちの巣穴まで飛びました。もう、一番星が小さく輝きはじめています。巣穴に着くと、ドンちゃんのお母さんが心配そうに穴から顔をのぞかせていました。

「ただいま!ドンちゃんのお母さん、遅くなっちゃってごめんなさい!」

 黒ドラちゃんが背中からドンちゃんを降ろすと、お母さんはドンちゃんの匂いをふんふん嗅いでから「お帰りなさい」と言ってくれました。

「黒ドラちゃんも疲れたでしょう?ドンちゃんを運んでくれてありがとう」

「ううん、ドンちゃんが一緒に来てくれたから、とっても楽しかったし緊張しても大丈夫だったの」

「そう、良かった。お城はとても楽しかったのね」

「うん!」

「じゃあ、お城でのお話、明日ドンちゃんと一緒に聞かせてくれる?」

「うん!いっぱいいっぱいお話しすることあるんだよ!」

「楽しみだわ、じゃあ、また明日ね」

「うん、また明日!」

 黒ドラちゃんは、明日ドンちゃんのお母さんにお城でのお話を聞かせることを考えると、ワクワクしてしまって眠れなくなりそうでした。


お城にはキラキラの王子様が居て

王子様には妖精がたくさんついていて

でも妖精たちが離れて行って

金のクルクルはカツラになって

ゲルードは王子様に駆け寄って

はちみつをどこかへ運んで行って

それからそれから……


 全然眠れないと思っていたのに、洞に戻ってゴロンと横になると、黒ドラちゃんはそのまま夢の中へ入ってしまいました。

 


 空にはたくさんのお星さま。

 

 大きな大きな木のそばの湖で、お魚がぴちょんと跳ねました。


 丸い波紋が広がって、森は夜に包まれました。


 おやすみなさい、黒ドラちゃん。






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