over extended.

「まさか街に戻ってくるなんてなあ」


「いいじゃん。なんだかんだ、元鞘で」


 ウエディングドレスの、ふたり。


「さあ。行きましょう。ふたりとも」


「そうだな。おい。行くぞ。いつまでタキシードでぐったりしてるんだ」


「もう少し休ませてくれよ。おまえら、ふたりして旅行中ずっと懇ろにしやがって。俺の体力は有限なんだぞ」


「ふたりとも愛するってのは」


「そういうことでしょ?」


「いやまあ、そうだけどさ。式までそのまま雪崩れ込むのはさあ」


「このドレスを、見せたかったんだよ。おまえにさ」


「わたしも。あなたに見せたかったの。そして、今。あなたがわたしたちの相手として、ここにいる」


「そう。それだけでいい」


 ふたりが。


 自分の手を握って。


「しかたないなあ。行くかあ」


 式が、始まる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

朝陽の前に連れ出して 春嵐 @aiot3110

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ