再会の日

雨世界

1 愛は家族。恋は他人。

 再会の日


 登場人物


 赤鳥玲 れい 帽子をかぶって、赤いジャージを着ている少女 十五歳


 白雲渡 わたる いつも笑っている優しい黒髪の少年 十五歳


 緑川鞠 まり 無表情な少女 渡の友達 十五歳


 プロローグ


 私はいつだって全力だよ。

 いつだって全力で人生を走ってる。


 僕はいつだっていい。

 いつも君のことを待っているよ。


 勇気をもらったんだよ。

 本当にたくさんの勇気をもらったんだよ。僕は君からさ。


 本編


 愛は家族。恋は他人。


 空からはとても冷たい雨が降っている。

 それもそのはずで今、季節は十二月。今夜は雨は、……もしかしたら今年初めての雪になるかも知れない。(大きなビルの街頭モニターの中で、とても有名でいつも綺麗なアナウンサーの女の人が、さっきそんなことを言っていた)

 そんな雨降りの暗い空を見上げる赤鳥玲の吐く息は空中で真っ白になった。

 玲は真っ白な息が空中で消えるのをじっと見てから、視線を下げて、たくさんの人たちで賑わっている都会の大きな駅前の風景に目を向けた。

 そこには五年前とほとんどなにも変わらない風景があった。(でも実際にはあらゆるものが変わっているのかもしれない。目に見えるものだけが世界の本当の姿ではないということを、今の玲は知っていた)

 思い出の中の風景と違って、変わっていたのは自分。赤鳥玲という名前の、一人の世間知らずのわがままな少女、一人だけだった。

 この五年間で自分は随分と変わったと玲は思った。(よく言えば、随分と大人になったもんだな、と自分のことながら、本当に頑張った。本当にすごいなと思った)

 十五歳から二十歳になるまでの五年間。

 まるで宝石のように大切で価値のある、きらきらとなにもかもが輝いて見える、そんな宝物のような、本当に楽しくて、本当に素敵な時間だった。(その代わり、あっという間に過ぎ去ってしまったのだけど)

 玲はそんなことを思って小さく笑った。(その玲の笑顔を見て、数人の男性が玲に気づかれないように、そっと目を向けた)

 玲はとても美しい女性だった。子供のころからみんなから綺麗だね、って言われてきた玲だったけど、この五年間でその美しさにさらに磨きがかかっていた。

 玲は東京の大学に通っている大学生の一人だったのだけど、その大学生の生活をしながら、子供のころからずっと続けている雑誌のモデルの仕事をしていた。

 たぶん、このまま玲は大学を卒業して、今の仕事の延長線上にあるプロのモデルになるのだと思う。(もちろん、未来のことは誰にもわからないのだけど)

 赤鳥玲はその唇に(自分の名前の中にもある)赤い口紅をつけていた。

 赤は、玲の世界で一番大好きな色だった。(燃えるような赤。情熱的な、自分にいつも元気をくれるような、そんなはっきりとしていて、綺麗で鮮明で明るい色だから)

 少し前の時間から、きょろきょろと周囲の雨降りの風景の中を動き回っていた玲の大きな黒色の目があるところでぴたっと止まった。

 その先には、『二つの同じ色』をした傘を指している二人の人物の姿があった。

 その二人の姿を見て、赤鳥玲はにっこりと笑った。

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