極悪非道の強盗集団は辺鄙な村を襲う

茄子の皮

極悪非道の強盗集団は辺鄙な村を襲う

 世界は東西南北の国に別れ、四つの王国が統治する世界。人々は一つのスキルを授かり、戦争もなく平和な世界となっていた。


 遥か東に極悪非道と悪名高い強盗集団【輝く葡萄フラッシュグレープ】がいた。

 フラッシュグレープなどとふざけた名前だが、団員300人以上の強盗集団だと言うのだから笑えない。襲った村人達も奴隷の様に扱われ、今までの生活から一変した生活を強要されているらしい。


 地方貴族だろうが、国王だろうが関係なく反抗し、今まで誰一人も捕らえられた事はない最強の強盗集団だ。


「まったくそんな奴らがこんな辺鄙な村に来るとはな。」


 ここは北よりの村【ホクラ村】。村人100人ほどの小さな農村地で、貧しくも楽しい生活をおくっている。


「抵抗しても良いがどうなるかわかってんだろうな!ふざけた真似したらこいつみたいに蹴り殺すからな!」

 強盗団の手下だろう男が近くにある木造の家の壁を蹴り壊す。


 もともと強い造りでは無いが蹴り壊すこともないだろうに。


「村人はこれで全員か?」


「そのようね。ざっと100人前後かしら。」


「それにしてもしょうもない村だな。吹けば飛ぶような家ばっかりじゃねぇか。」


「ふふふ。そうね。最後に私達に目をつけられたのが災難よね。」


 明らかに強者の風貌の2メートルはあろう筋肉が盛り上がっているスキンヘッドの男がいる。なぜか上半身裸で下半身は膝上の真っ赤なパンツの格好だが。

 もともと真っ赤な上下の服を着ていたが突然脱ぎ出した露出癖のある男もとい変態だ。

 近くにいる20代後半の金髪美人と話している。


「おう!ジョンブル!使える奴はいるか?連れていく奴だ!」


 村人は全員一ヶ所に集められている。子供達は怯え、親は庇う様に身を寄せている。

 俺は親も恋人もいない悲しい二十歳独身男性だ。黒髪の普通の村人にはきっと気にしないだろう。


「ボス。めぼしい奴は二人ですね。」

 ジョンブルと呼ばれる燕尾服を着た黒縁メガネの男性が答える。


 やべぇ。きっと村人一番の美少女カナリアちゃんが狙われている!13歳の金髪美少女カナリアちゃん。貴族から求婚されるほどの美少女で彼女の笑顔に老若男女全ての村人が好意を抱く、ホクラ村のアイドルだ。

 目の前のカナリアちゃんは怯えて下を向いている。


 風に乗ってめっちゃ良い匂いがする!これで死んでも後悔はない!


 もう一人はきっと村一番の騎士ゴールドさんだろう。一時期王国騎士として活躍し、お金がたまったから村に戻ってきた、とてつもなく強い人だ。強盗団のボスに剣で斬りかかるもボスに笑いながら倒されてしまった。

「ふははは!こんな村に面白い奴がいたな!来て良かった!」と言われるほどには、好感を持たれたのだろう。


「あの方とあの方ですね。」

 ジョンブルが指を指して言う。


 やっぱり!目の前のカナリアちゃんも狙われてた!後はやっぱりゴールドさんだな。


「おい!さっさと来い!」

 手下の男がカナリアちゃんに近づいて来る。


 カナリアちゃんは手下が近づいて来るに連れて、泣き出してしまった。

 そうだよな。こんな強盗団なんかに連れさられ、どんな生活をするか何て考えるだけで恐ろしい。


 俺は知らんぷりして下を向いてやり過ごそう。


 手下の男は怒鳴る様に言う。

「この野郎!さっさと立ちやがれ!」


「ん?」


 手下の男は俺の脇に手を入れ無理やり立たされた。


 えええええ!俺?いやいやいやいや!カナリアちゃんでしょ!え?まじで?なんでぇぇぇえ!


 手下の男は無理やり俺をボスの前に連れていく。


 ヤバい殺される。目の前の男を見るだけで足がガクガク震えている。尿意が!漏れそう!そうだ!俺一人じゃない!ゴールドさんもいる。


 別の手下が男を無理やり引きずってきた。


「いやなのだ!僕はお前達と何て行きたくないのだ!」

 肥満体型の男が引きずられている。


 いやお前誰だよ!


 ゴールドさんは!


「おい!弟をどうするつもりだ!」

 ゴールドは声を張り上げている。ゴールドの後ろに隠れていたのだ。


 弟!


「ふっ。野菜達が泣いている。」などと言いながら畑に寝っ転がっていたあの男が弟!村人一番の変人と噂され近寄る人も皆無のあの男が弟!そんな奴と二人選ばれた俺はなんなんだ!


「うるせぇ!俺はエルモンドだ!知ってるか知らねぇが輝く葡萄フラッシュグレープの頭だ!」

 スキンヘッドの大男が大声で話す。


「この二人は俺たちが連れて行く!文句あるか!」


 村人は誰も声を上げない。

 村人一番の変人と俺。村人は良かったと安堵の表情を見せている。


 は?こいつらなんか仲間じゃねぇ!!


「この村は俺たちが支配する!俺たちのために働きやがれ!」


 強盗団達は手際良く村の機能を支配した。村長はエルモンドに連れられて行った。村人達は団員に連れられ強制労働させられている。畑仕事や外壁の補強などさせられている。


「よし。二人はこちらに来てもらおうか。」

 手下に引っ張られジョンブルに着いていく。村一番大きな家に入る。村長の家だ。中には幹部と思われる強盗団3人と村長がいる。


「で、村長よ。ここを支配している貴族はどいつだ?」

 エルモンドが聞く。

 村は地方貴族が管理し、税を納めている。


「イジガン・ギッダンヌ様です。」

 ギッダンヌ家。代々この村を納める貴族で気まぐれで税を上げるろくでもない貴族だ。


「ギッダンヌか。知らねぇな。調べてくれ。」


 幹部の一人が家を出て行った。


「これからはそいつに税を払うんじゃねぇぞ?俺たちに全部払うんだからな!」

 エルモンドは笑顔で話す。


「そんな!そんな事をしたら貴族様に怒りを買ってしまいます!」

 村長は慌てている。


「ははは!良いじゃねぇか!貴族だろうが相手になってやるよ!」


 幹部達も笑顔だ。この集団狂ってる。


「ところでこの二人は連れて行くが良いんだな?」

 エルモンドは村長に再度確認する。


「え?はい。」



 はい。じゃねぇ!

 村長だろ!村人が拐われるのに別にこいつらなら良いです見たいに言うな!



「ふは!お前ら人望ないんだな!」

 エルモンドは笑っている。


 俺は泣きたくなってきたよ。



「ジョンブル。細かい事は説明してやれ。」


 ジョンブルは、家を出る。後ろを手下に引っ張られ着いていく。近くの馬車に乗せられると、馬車は走りだした。


 アジトに行くらしい。村とお別れだ。


「まずなぜお前ら二人なのかを説明しようか。名前は何て言うんだ?」


「ヨルスです。」

 俺は答える。

「シルバ」

 肥満変人男は答える。


「まずシルバ、お前は【農業神の友達】スキルを持っている。」

【農業神の友達】農作物の最高の状態を見極め、育成方法を行える。農業魔法を極めている。


「なるほど。だから野菜達の声が聞こえていたのだな。」

 シルバは納得している。


 ただの変人じゃなかったんだな。俺も納得だ。

 納得か?

 いや変人には変わりないな。それよりもスキルが分かるだと!スキルはスキルを鑑定出来るスキルがないと知ることが出来ない。村に鑑定出来る人がいないため、村人は誰もスキルをしらないのだ。


「次にヨルス。お前は【偽装の聖人ぎそうのせいじん】のスキルを持っている。」


 偽装の聖人ってなんだ?


「【偽装の聖人】はどんな怪我や病でも治す魔法を使えるらしい。」


「凄い。」

 俺は呟く。今まで知らなかった。


「ただし、治したい人が本気で治ったと意識しないと無意味の魔法らしい。本人の思い込みで治す手伝いをする上位魔法の一つだね。」

 ジョンブルは興奮ぎみに話している。


 なるほど腹が痛い時に大丈夫と思ったら治ったのは、このスキルの効果なのか。今まで大きな怪我もないから知らなかったな。


「おいお前怪我してたよな。」

 ジョンブルは手下の男に問う。


「へい。ここに。」

 男は右腕の服を捲り腕に刀傷がみえる。赤い水ぶくれになっていた。


「良し。やってみてくれ。」


 やってみて?どうやるの?


「傷は治ります。治りました。」

 俺は男の傷を触れながら言う。こんなので良いのか?


「傷は治る。治った。傷何てない。」

 何度か言っていると、手下の男の腕が赤い光に包まれた。男が声を上げる。


「すげぇ!治ってるじゃねぇか!ありがとうな。」

 男は俺の背中をバンバン叩きながらお礼を言う。


 痛てぇ!背中が痛い!力強すぎだろ!絶対手形に赤くなるやつ!

 大丈夫、痛くない、痛くない、おっ痛くない!こんな感じか。


 俺は【偽装の聖人】を理解した。単純な人ほど掛かりやすい。信用されていないと発揮しないのはしょうがないな。


 いろいろ話しているとアジトに着いた。以前村があった場所だ。こんな立派な家なんか無かったはずだが、頑丈そうな家が20軒ほど建っている。


「シルバは畑に行ってもらう。ヨルスは俺と一緒に来てもらおう。」


 シルバは手下の男と畑に向かっ行った。


 ジョンブルの後ろを着いてレンガ造りの家に入る。外から「野菜が踊っている!きゃほーーい!」と変人の声が聞こえるが無視だ。



「ヨルス。お前には仲間を救って欲しい。」

 ジョンブルは深刻そうに話し扉を開ける。


 部屋にはベッドが並んでいた。


「ジョンブルさん。この方は?」

 白衣を着た黒髪のおさげ髪美人が声を掛けてきた。名前はアカネと言う。


「こいつらを治す救世主だ。」

 ジョンブルは冗談とは思えない真剣な口調で答える。


「そうですか!よろしくお願いします。」

 黒髪美人アカネは俺の手を握り頭を下げる。


「任せてください!」

 俺は人生で一番の笑顔で答える。手の温もりが心地いい。


 俺はベッドに横たわる男を見る。右手が無い!体も刀傷や火傷だらけで包帯が血だらけだ。うめき声を上げながら苦しんでいる。


「大丈夫です。傷は治ります。もう治りました。」

 俺は何度も声を掛ける。一向に治る様子は無い。


「ダメじゃないですか!」

 アカネは涙ながらにジョンブルに言う。


「そうだな。おいジャック!俺を信じろ!傷は治る!手も元通りだ!元気なお前をイメージしろ!」

 ジョンブルはジャックの頬を叩きながら言う。


「ジョンブルさん。俺はダメだ。もう終わりだ。」

 ジャックは悲しそうに答える。ジョンブルが慰めていると思ったのだろう。


「ジャック!お前は治る!こいつはヨルス!俺たちが探していた最高の治癒魔法使いだ!お前が治ると思えば治るんだ!」


「へへ。最後に良い夢を見せてくれるのか。ヨルスさん俺は治るのか?」


「治りますよ。むしろもう治ってますよ。」


 ジャックの体が青く光っている。


「あったけぇ光だ。痛みがなくなってきた。お迎えが来たみたいだな。体も元通りだし右手もあるし。右手!動いている!」

 ジャックはベッドから飛び起きた。


「おはようジャック。最高のお迎えが来たみたいだな。」

 ジョンブルが笑顔で見ている。


「へへへ。ジョンブルさん。最高だな。」

 涙を流しジャックは答える。


「礼ならヨルスに言ってくれ。それもこいつら全員を治してからだがな。」


「ありがとうよ。ヨルスさん。俺も手伝うぜ!」


 残り30人ほどを俺は治していく。俺の言葉はまったく信用されなかったがアカネ、ジョンブル、ジャックの言葉を信じて治っていった。


「ありがとう!命の恩人だな!」

「何があってもお前を守ってやるよ!」

 等々感謝された。手を握られたり、背中を叩かれたりして、体中激痛が走る。こいつら力強すぎる!

 すぐにスキルで治したから問題ない。俺の体が頑丈になるイメージで治すと痛くなくなったから、強くなったのだろう。思い込みって凄いね。



 全員を治し終わり、食堂へ向かっていく。俺はこの強盗団と一緒に生活するらしい。村には返してもらえないのだ。


「こんなスキルがあるのに返すわけないだろ?」とジョンブルは笑顔で答えてくれた。

 うん。おっかねぇな。


「おう!戻ったぜ!」

 ひときは大きな声が響く。エルモンド達が帰ってきたのだ。


「ジョンブル!どうだった!」

 エルモンドが食堂に入りジョンブルを見る。


「問題ない。見てみろよ。」


「おお!お前ら!治ったのか!」

 エルモンドは一人一人に声を掛け、無事を確認している。元負傷者達は笑顔で会話している。エルモンドは上半身裸ではなく上下真っ赤な服を着ている。



 良い光景だな〜。強盗団じゃなければ。


「ヨルス!ありがとうな!お前のお陰で仲間達が元気になった!よし!飯だ!」

 エルモンドはヨルスに向かってお礼を言う。ヨルスは苦笑いで答える。手下の男女が食堂に料理を並べている。テーブルには新鮮な野菜や魚や肉など多くの料理が並んでいく。ガラスのコップにワインを並々注がれている。


「ぬふふ。この野菜達はブレイクダンスしているのだよ。」

 料理を運んでいる一人にシルバも見える。村に居たときよりも元気良さそうだな。


 食堂には100人を超える団員達が集まっている。


「揃ったな!それでは乾杯だ!」


 料理が並べ終わりエルモンドの合図と共に食事が始まった。賑やかに会話をしながらも、暴れるような奴は一人もいなく、礼儀正しい食事だ。

 村での食事よりも贅沢な料理だと思うと、被害にあった村達に申し訳ないが。


「もっとうるさいと思ったけど普通なんだな。」



 騒ぎもなく食事が終わった。



「明日イジガン・ギッダンヌの屋敷に向かうメンバーを発表する!」

 エルモンドが突然発表しだした。



 イジガン・ギッダンヌの屋敷に向かう!襲うのか!

 笑顔の団員達や不安な団員達などさまざまだ。



「ジョンブル!アリス!ジャック!ダン!ジンロ!」

 アリスは村で見た金髪美人か。ダンとジンロは引っ張られた手下の二人か。


「シルバ!」


 シルバ!あいつも行くのか。御愁傷様。


「ヨルス!」

 ヨルス。俺か!


「以上六人と来たい奴ら十人着いてこい!」


「はい!」

 ジョンブル、アリス、ジャック、ダン、ジンロは返事をする。


 何で俺?

 シルバは、大根に頬擦りしている。



「よし!呼ばれた奴意外は解散だ!十人は勝手に決めろ!」


 他の団員達は食堂を出ていく。


 俺達は、エルモンドの席の近くに集まってくる。


「ヨルス!再度礼を言うありがとうな。」

 エルモンドは頭を下げる。瀕死の仲間達が元気になって感謝しているのだ。遅ければ死んでもおかしくない仲間達もいたのだ。


「いえ。俺のスキルを知ったのは、ジョンブルさんのおかげですから」


「いえいえ。ヨルスがいなければ死んでもおかしくない人が全快したのは、ヨルスのおかげですよ。」

 ジョンブルが笑顔で話す。


「そうだぜ。俺だってこの通り治ったからな!」

 ヨルスに刀傷を治してもらったダンも服を捲りながら答える。


「とにかくお前がすげぇスキルを持ってるわけだ!ジョンブルは【能力確定のうりょくかくてい】のスキル持っていて、能力を鑑定出来るスキルを持っている。」


 ジョンブルが頷く。相手がどんな能力なのか分かるのだ。


「ここにいる全員スキル持ちだからな。最高な集団だぜ!」

 エルモンドは笑顔だ。


「話進めますね。ダグラスからの報告を読みます。」

 アリスが話し出す。


 ダグラスはギッダンヌ家を調べる為に出て行った幹部で、【正直者の友人】のスキルがあり、村人から噂話を聞き、真実の噂のみを集めることが出来るのだ。戦闘力は高くない。


「ギッダンヌ家はこの辺の村五つを納めている貴族で、納税が厳しいらしいです。」


 確かに収穫した農作物などを半分以上納めろなどと言っている貴族だったな。俺は正直に納めなかったが。


「【農業の神】のスキルを持っていると各村の村長に言っているが、実際に農作物が豊作では無いので嘘だと思います。」


 そうだね。ホクラ村も豊作とは言えないからな。ゴールドさんの畑だけ豊作なのは、シルバの【農業神の友達】スキルがあるため豊作だったのだろう。畑に知らぬ間に魔法で豊作になったのだろうな。


「この五つの村全てが貧しい状態で、特にヒドリ村が深刻な状態です。私達はこの五つの村全てを支配しようと思います。」


「そうだな。そんな貴族よりも俺達の為に働いたほうが良いだろうな。」

 エルモンドは頷いている。


 強盗団に支配されるのが良いわけないだろ!とは口にだせない。大人しく聞いていよう。


「そこで、明日ギッダンヌの屋敷に行き、ギッダンヌを潰して五つの村を支配するのです!」

 アリスが力強く話す。


「護衛隊がいるが、俺達にかかれば相手にならねぇよ。ヨルスは怪我したらよろしくな。」

 エルモンドは、自信満々だ。


 うん。怪我しないように頑張ろう。


「お前はいるだけで大丈夫だ」

 シルバはいるだけで良いのか。そうだよね。役に立たないのに必要なのか?


「他の奴らはいつも通りに行くぞ!なるべく殺しすんじゃねぇぞ!」


 殺しはしないのか。なるべくだから死んだらしょうがないのか。


「明日の10時に出発するから、ゆっくり休んでくれ!」


 ヨルスとシルバは部屋に案内される。ダンとジンロと同部屋だ。大浴場もあり、風呂に入って休むのだ。


 ☆


「行ったか。」

 エルモンドとジョンブルは食堂に残っていた。


「ジョンブル、ヨルスの能力はそんなに凄いのか?」

 エルモンドが不思議そうに聞く。


「凄いぞ。意識してればどんな怪我だろうが病だろうが回復するスキルだ。スキルを使ったら普通疲れるが、ヨルスは疲れると思ってないから疲れも回復しているみたいだ。」

 普通は魔法を使うと、精神と肉体が疲労してしまうがヨルスは魔法と思っていないため、相手と自分自身も回復しているのだ。


「それなら一撃で死なない限り死ぬ事はないな。仲間でいれば最強の能力だな。」


「問題はヨルス自身を信頼していないと回復できないがな。ジャック達は、俺が声を掛けたら回復したからな。」

 本気で治ると思わないと回復しないのだ。


「それなら仲間でヨルスを信頼しない奴はもういないだろ?これだけの事をやったんだ。」


 ジョンブルも無言で頷いている。


「それにしても地方貴族どもは、どこも腐ってやがるな。」


「権力だけのゴミなのは、今に始まった事でもないでしょう。」


「だがなこの前だって…」


 エルモンドとジョンブルの貴族の不満は続いていった。



 ☆


 翌日


 うん。目覚めは、悪くないな。ただシルバのイビキがうるさかったせいで、眠気は残ってるな。よし!眠くない!おっ!眠気なくなった!スキルすげぇ!


 ヨルスは体を伸ばし、ストレッチをする。

 シルバ、ダン、ジンロも起きだした。


 顔を洗い、食事を済ませる。


 10時になると4台の馬車が用意され、その内の一つに乗り込む。ギッダンヌの屋敷に向かっているのだ。



「ヨルスは回復役なんだから後ろでのんびりしてろよ!俺が守ってやるからな!」

 同じ馬車のダンが元気良く話している。鉄の鎧を身にまとい、剣を腰に装備している。



 馬車に揺られギッダンヌの屋敷へ着いた。

 四台の馬車を二人の仲間に預け徒歩で屋敷に歩いていく。三階建の屋敷だ。



「誰だ!お前達は!」

 槍を構えた門番が叫ぶ。


「俺達は強盗団輝く葡萄フラッシュグレープだ!」

 エルモンドが大声で答える。


 エルモンドは上下真っ赤な服を身にまとっている。エルモンドの趣味は独特だな。背中に真っ赤な斧まで背負ってるし。


「な!輝く葡萄フラッシュグループだと!何しにきた!」

 他の門番が仲間を呼びに屋敷に向かって行った。


「ホクラ村、ヒドリ村、ニジロン村、ダイゴ村、ジャゴキ村は俺達が支配した!」

 今日他の強盗団はホクラの村以外も支配するよう、村に向かっている。


 他の門番が戻ってきた。大勢の鎧や盾を装備した護衛隊などを連れて。

「貴様ら!ギッダンヌ様からお前達を捕らえろと命令が来た!大人しく捕まれ!」

 護衛隊達30人ほどが走って向かってくる。



「行くぜ野郎ども!蹴散らしてしまえ!」

 エルモンドを先頭に強盗団が向かっていく。


 後方にヨルスとシルバが残されて。

 ダン!お前は俺を守る予定だろ!何笑顔で向かってんの!


 ダンは剣で護衛隊に嬉々として斬りかかる。スキル【麻痺斬剣技】によって切りつけ出血した護衛隊は倒れて動かない。切りつけられ出血した人は麻痺してしまうのだ。どんなに小さな切り傷でも麻痺出来るスキルなのだ。


「お前なら守るのに最適だな!任せたぞ!」

 とエルモンドに言われてたのに、普通に消えるなよ!


「弱ぇなぁ!」

 エルモンド達は疲労も怪我もなく、護衛達を戦闘不能にしてしまった。


「強い。」

 5分もかからずに終わらせてしまった。


 エルモンド達は、屋敷の中に入っていく。遅れないように着いていく。


 屋敷に入ると、護衛隊が襲ってくるが、輝く葡萄フラッシュグレープのメンバーは余裕で倒していく。

 スキルを意識しているのと、していないのでは相手にならないのだろう。


 階段を登り、ついに三階の広い部屋に着いた。



「お前達が輝く葡萄フラッシュグレープか?」

 金色の高そうな椅子に座る身長160センチ金髪の肥満男性。イジガン・ギッダンヌだ。

 近くに護衛隊が守っている。


「そうだ!お前がイジガン・ギッダンヌか!」

 エルモンドが答える。


「いかにも私がイジガン・ギッダンヌ男爵だ!」

 イジガンは偉そうにふんぞり返る。手の指には、キラキラと指輪が光っている。


 全部の指に指輪を着けるなんて、悪趣味だな。似合ってないし。


「お前の納めている村は全部支配した!二度と手を出すんじゃねぇぞ!」


「ふん。そんな嘘何て知らんな。強盗団なんて犯罪集団私が捕まえてやろう。おい!捕まえろ!」

 護衛隊の一人が歩いてくる。


「私は護衛隊長のギランドだ。ギッダンヌ様のおかげでヒドリ村は豊作になったと報告が来ている!ギッダンヌ様に害する者は我らが許さん!」

 ヒドリ村出身の護衛隊長。白い盾を構え、白い剣をエルモンドに向ける茶髪短髪の茶髭の似合うダンディな男性だ。


「くっくっくっ。ギッダンヌも馬鹿だと思ったが隊長も馬鹿だとは悲しいなぁ〜」


「何が言いたい!」


「現実を見てねぇやつは、馬鹿だって言ってんだよ。」


「犯罪者が私が成敗してくれる!」

 ギランドは白い剣をエルモンドの肩に向けて振りかぶる。


「はっ!」

 エルモンドは、背負っていた斧を振り剣を弾く。

「手出すなよ!こいつは俺がやる!」

 エルモンドは笑っている。


 エルモンドが斧を横に切りつけるも、ギランドは盾で防御する。防御しながら剣を振るも、斧で受ける。


「何度も受けることは無理だな。」

 ギランドが斧を受けた盾は、斧の攻撃で凹んでいる。

「おらぁ!」

 ギランドが剣を振りかぶり、エルモンドが斧で受けると、ギランドは盾でエルモンドの腹を殴りつける。


「ぐっ!」

 エルモンドがよろける。


「いまだ!」

 ギランドがエルモンドから離れると、他の護衛隊達が魔法を唱える。


【ファイアボール】炎の球を飛ばす。

【ファイアーランス】炎の槍を飛ばす。

【炎上】対象を燃やす。触れる必要はない。

 と炎系統のスキル魔法が飛んでくる。


「あっちぃ!」

 エルモンドが火だるまになっている。


【ウォーターボール】

 アリスが魔法を唱えると、水の球がエルモンドに直撃した。


「ふぅ〜。ずりぃ奴だな。正々堂々サシで勝負も出来ねぇのか。」

 エルモンドの服は燃えてなくなり、上半身裸になってしまった。ズボンも短パンになっている。


「犯罪者に正々堂々もない!」

 ギランドは剣で斬りかかる。


「それもそうだな。」

 エルモンドはギランドの剣におもいっきり斧をぶつける。


 ガギン!


「え?」

 剣が斧を受けた部分から折れて砕けた。


「ぼさっとしてんじゃねぇよ!」

 エルモンドが斧を振りおろす。


 ギギギン!ガラン!

 ギランドが防御した盾が縦に切り落とされた。


「え!」

 ギランドは呆けている。


「だからぼさっとしてんじゃねぇよ!」

 エルモンドは盾ごと蹴り飛ばす。


 ギランドが半分になった盾で受けるも後ろにぶっ飛んでいった。盾は持ち手を残して、ボロボロになって砕けている。

 ギランドは倒れたまま動かない。


「おらぁ!魔法でも何でも打って来やがれ!」

 エルモンドが挑発する。


【ファイアボール】

 護衛隊の一人が魔法を唱える。


 エルモンドに向かって炎の球が向かって行くが、エルモンドは炎の球を拳で殴りつけた。


「えっ!凄い。」

 俺は思わず声をだした。


 炎の球は消えてしまった。


【ファイアランス】も拳で殴り消してしまった。

【炎上】は「あっちぃ!」といいながらアリスに【ウォーターボール】で消してもらっていた。【炎上】はダメだったんだね。


「俺のスキルの前では魔法なんて効かん!」

【炎上】はなかったことにしてエルモンドは、宣言している。


 他の護衛隊達もジョンブル達が戦闘不能にした。

 最初から皆でやれば良かったのに。


「ヨルス治してくれ!」

 エルモンドが俺に近いてくる。


「はい。俺を信用して元気な自分をイメージしてくださいね。」


「おう!」

 エルモンドが返事をすると、体が赤い光に包まれた。


「完璧ですね。」

 俺はエルモンドの体を見てつげる。火傷もない、健康体だ。


「すげぇな!ありがとよ!」

 エルモンドは俺の両肩を後ろから興奮して叩く。


 バシン!バシン!


 痛てぇ!なんだこの力!こいつ馬鹿か!こんなのに殴られたら死ぬぞ!

 俺は我慢出来ずに膝をつく。


「痛くない。痛くない。治った。元通り。」

 俺は小声で呟く。無意識に涙がこぼれる。この痛みに耐えれる体になるんだ!


「よし!治った!」

 涙を手で拭って立ち上がる。


「ボスのスキルは、【裸の覇王】って言って身につけている服が少ないほど、力が増すスキルだからね。」

 近くにいるダンが教えてくれた。

【裸の覇王】服などを身になければ、攻撃力が増す。半裸なら5倍。全裸なら10倍らしい。今は半裸で短パンだから7倍くらいだ。


「普通に叩いたつもりでも、7倍の威力なら肩の骨が砕けてもおかしくないから、気を付けろよ。」

 他の団員は全力で回避するらしい。



 うん。もっと早く言え!馬鹿か!


「後はお前だけだな、ギッダンヌ!」

 エルモンドが斧構えをギッダンヌに向ける。


「おい!誰かいないのか!」

 ギッダンヌが叫ぶが護衛隊達は、全員倒されている。


「おい!ギランド!お前の村が襲われるぞ!家族も皆殺されるぞ!」


「ううう。お前らなんかの好きにはさせん!」

 ギランドは意識が戻るも、立ち上がれない。

「ギッダンヌ様のおかげで豊になったヒドリ村の家族を守るんだ!」

 ギランドは必死の表情でエルモンドを睨み付ける。


「くっくっく。だからお前は馬鹿なんだよ!こんなゴミに騙されやがって。」


「ゴミだと!村の恩人に向かってその口はなんだ!」


「今のヒドリ村は豊作どころか、な〜んにも育ってねぇよ!実際に見たのか?ここ1年ほどなんも育たない畑だとよ!」

 仲間が調べた結果だ。


「嘘だ!家族からの手紙にも書かれていた!」


「見てねぇのかよ。本当に馬鹿だな!お前は!ジョンブル!このギッダンヌのスキルはなんだ!」


「そんなの【農業の神】に決まってるだろ!」

 ギランドが叫ぶ。


「いいえ違います。ギッダンヌのスキルは【真実の隠蔽】です。【真実の隠蔽】とは信用された人からは絶対に嘘がばれないスキルです。」

 ジョンブルが答える。


 ギッダンヌは驚愕して口を開けている。


「そうなのですか!ギッダンヌ様!」

 ギランドはギッダンヌに問う。


「ばばば馬鹿な事を!しょんなわけないだろ!しし真実のいいい隠蔽なんて知らん!この犯罪者どもの言いがかりだ!」

 ギッダンヌは滝のように汗を吹き出して話している。鼻息を荒くし、キョロキョロと上下左右を見ている。

 輝く葡萄フラッシュグレープのメンバー全員が嘘だと分かるほど慌てている。


「違うと言ってるぞ!お前嘘をついているな!」

 ギランドはジョンブルを睨み付ける。


 マジか!これでも気づかないなんて、スキルすげぇな!


「お前やっぱり馬鹿だな!がっはは!」

 エルモンドは爆笑した。メンバーも笑いをこらえきれないで、笑っている。


「ボース!ボース!」

 屋敷の外から声が聞こえる。



「おっ!ダグラスか!証拠が来たな!」

 屋敷にダグラスと仲間達が一人の年齢70代ほどのガリガリに痩せ細った男を連れてきた。服は破れボロボロで肌は黒く痣が見える。


「どうもボス。こいつがヒドリ村の村長ですぜ!」


 ダグラスが連れてきた痩せ細った男が村長だと!

 こんな男の村が豊作な訳ないだろ!


「ヒロル村長!どうしたんだ!その体は!」

 ギランドが驚愕し叫ぶ。


「おお。ギランドか。はは、元気そうで何よりだ。儂らヒドリ村は、もう作物が育たなくなってしまったのじゃ。」

 ヒドリ村の村長ヒロルは力なく答える。


「これがギッダンヌのスキルのおかげか!最高だな!ギランドさんよ!」

 エルモンドが嘲笑いながらギランドを見る。


「おい!ギッダンヌ!お前これはどう言う事だ!」


「わわ私は知らん!こいつらの働きが悪いのだろ!」

 ギッダンヌは声を荒げている。


「そんなはずない!野菜が育つ畑があれば村人全員働くはずだ!俺がいた頃も貧しくも、飢える心配なんてなかったぞ!」

 ギランドがギッダンヌを睨み付ける。


 ギランドが村にいた頃にギリギリの食料なら、税として取られたらそりゃ飢えるだろうさ。食料がなければ必然的に体力も落ちるし、病にもかかるだろうな。真面目な奴が馬鹿を見るんだろう。

 真面目な奴が多い村だったんだな。


 ギランドが反抗してるって事は、スキルの効果が切れたんだろうな。


「まぁまぁ、お二人さん。こんな所で無駄な争いをしてる場合じゃねぇぞ?ギランド!お前は村にさっさと行って現実を見ろ!ギッダンヌはそのあとにギッチリ話があるからな?」

 エルモンドはギッダンヌを笑顔で見る。右手で握り拳を見せているが。


「だがこんな状態じゃ動けない。」

 ギランドがふらつきながら立ち上がるが、すぐに膝をつき倒れてしまう。


「お前が俺達を信頼するならすぐに動けるようにしてやるがどうする?」


「頼む!俺が馬鹿だったんだな。」

 ギランドは床に頭をつけ頼んでいる。


「よし!わかった!ヨルス頼む!」


 うん。俺がやるのね。


「ギランドさん。俺はホクラの村人です。ヒドリ村の現状を知っています。傷を治すので、あなたが元気な時の体をイメージしてください。はっきりとイメージしてくださいね。」

 俺はギランドの体に触れながら話す。


 ギランドは大人しく俺の話を聞いてくれた。ギランドの体が青く光だした。俺を信用してくれてよかった。近くの村人なのが効いたかな。


「凄いな。こんなスキルもあるのか。」

 ギランドはふらつきなく立ち上がった。


「ギランド!お前の村にさっさと行ってこい!食料は俺らが用意して食わせたからな!ダグラス!案内よろしく!」


 ギランドはダグラス達と共にヒドリ村に馬車三台で向かって行った。ヒドリ村出身の護衛隊五人と村長を連れて。馬車には屋敷に有った食料を大量に積まれている。



「よし!お前らも誰が悪いかハッキリしたな!」

 エルモンドは他の護衛隊達に言う。

 ここの護衛隊は、ギッダンヌが納めている五つの村から集めた人達で構成されていたため、ヒドリの村の現状を聞いて誰もギッダンヌを信用しなくなっていた。


「お前ら!私にこんな事して、どうなるかわかってるのか!」

 ギッダンヌは身体中鎖で固められて床を這っている。護衛隊達が自ら拘束していた。

 護衛隊は、大怪我している人は一人もいなかった。気絶している人はいるが怪我はなさそうだ。


「よし!ギランドが帰ってくるまで宴会でもするか!」

 エルモンドが声をあげると仲間達は、馬車から食料を出しにいく。


「ふふふ。ついに僕の出番ですな。」

 シルバが笑顔で馬車に走りだした。あの肥満体型なのに俊敏な動きを見せて、野菜を出している。


 俺は何をすればいいんだ?

 うろうろと辺りを歩いていると、屋敷の外にテーブルが並び、その上に料理が並んでいく。屋敷内から料理が運ばれているから、料理は中でしているのだろう。使用人くらいいるだろう。


「よし!ギッダンヌからの解放記念だ!好きなだけ食え!」

 エルモンドの合図と共に皆食事を始める。


 屋敷の外に輝く葡萄フラッシュグレープの面々と護衛隊達が同じ食卓を囲んでいる。変な気分だな。


「旨いな。」

 並んでる料理はどれも旨い。村での食事より100倍旨いな。独り暮らしの食事なんて食えればいいのだ。


 シルバも旨そうに肉料理を食べている。

「野菜の悲鳴が聞こえる。」と耳を塞ぎながら食べている。

 野菜の声が聞こえるから食われてると悲鳴なのか。野菜を食べずに肉ばっかり食べてたから肥満体型なのか。良いスキルか悪いスキルか、分からないな。


「それにしても輝く葡萄フラッシュグレープは、聞いていたほど悪い集団でも無いんだな。」


「ヨルス。お前は、俺達を何だと思ってるんだ?」

 ジョンブルが料理を乗せた皿を持ってやってきた。


「強盗団だから村を襲って、略奪を繰り返してる集団だと思ってました。」

 噂でしか知らないからしょうがない。


「ははは!そんな効率悪いことするわけないだろ。」


「え?本当ですか?」


「はは!俺達は、村を支配して必要な物を貰っているだけだぞ。」


「はぁ〜。」

 殺され無いだけましだが、強盗団に支配された村か。ろくなことにならないな。


「ここら辺の五つの村も俺達の支配下となる。ヨルスの住んでいた村もだな。まぁ悪い様にはしないさ。」


 ギッダンヌより悪くなるのは難しいだろうな。俺は今後どうなるか心配だよ。



 食事も終わり、片付けをしていると、四台の馬車が屋敷に着いた。

 馬車の中からは、各村の村長達が降りてきている。

 エルモンドは、村長達を屋敷に入れ三階の広間に集めた。輝く葡萄フラッシュグレープのメンバーと護衛隊、村長達、床にギッダンヌが鎖に巻かれて転がっている。

 村長達は怯える様にエルモンドを見ている。


「お前達の村に俺の仲間達が向かったと思う。今後お前達の村は俺達輝く葡萄フラッシュグレープが支配する!文句はあるか!」

 エルモンドは力強く言い放つ。


 村長達は、力なく頷いている。反抗出来る武力を持っていないのだ。


「お前らの村が貧しい元凶のギッダンヌ家は、俺達が支配する!よって税率も変わる!」


 村長達の顔色が悪くなる。


「だが!俺達はいつまでもこんな場所に居るわけにいかない!よって相応しい仲間を残し責任者を決めたいと思う!」


「それは私達の中から責任者を決めるのですか?」

 ヒドリ村の村長が不安そうに聞くが、どこか期待した眼差しを向けている。



「そうだ!ここにいる奴で最善な人物がいる!そいつはここの村を最高に発展させるだろう!現状どの村も貧しい生活をしている!働く体力もないだろう!病に侵されてる者もいる!」



 俺は嫌な予感がするよ。



「そいつはそんな状態から復活させるだろう!」



 それは五つの村全ての村人を治せってことか。



「そいつがここを支配すれば、最高の村になる事間違いだろう。他の村、いや王国さえも敵わない強固な村になるだろう。」



 怪我も病も直ぐに復活する軍団なんて相手にしたくないよね。



「欲しいものは何でも手に入れるだけの、財力も手にはいる!ギッダンヌの財宝がはした金に思えるほどの金が!」



 金持ちが怪我や病に侵されてたら、金を払ってでも治してほしいだろう。



「だがそいつには、この村の為に死ぬ気で働く事を強要しなければならない!スキルがない他の村人ではどうにもならないからな!」



 だよな〜。死ぬまで村にいるのは良いが死ぬまで働くのは嫌だな〜。



「そいつはホクラの村出身のシルバだ!」



 ん!俺じゃない!


「しゃあああ!」

 無意識に叫んだ。

 皆変な目で見ているがそんなのどうでもいい!


 シルバは呆けている。


「シルバは【農業神の友人】のスキルがある!このスキルがあれば五つの村すべてが豊作を約束される!もちろんシルバ次第だが農業が好きみたいだから最適だろう。」



 うんうん。そうだね。シルバはやる男だよ。たまに奇行があるが。

 食べる物さえあれば、後は勝手に成長するさ。まぁ俺が病気の奴ら全員治してやるから任せとけ!このスキルで稼ぎまくってやるぜ!



「シルバがギッダンヌ家の代わりに五つの村をまとめてもらう!異論はないな!」


 村長達は異論なさそうだ。ホクラ村の村長は嬉しそうに見ている。



「ギランドも分かったな?お前が騙された【農業の神】のスキルはこのシルバが持っている。お前達護衛隊はシルバを全力で守り、助けてやってくれ!」


「そうだな。シルバ様、我らが全力であなた様を守ります。」

 ギランドが膝をつき忠誠を見せる。他の護衛隊達も同じ様に膝をつき頭をさげている。出身の村が助かるのだ、誰も反抗しない。


「農業の事は任せるのだ。他の事はよろしく頼む。」

 シルバがギランドにペコペコ頭を下げて言う。



 お前は普通に受け入れるんだね!凄い器のデカイ男だよ!俺なら文句たらたら言うだろうに。


「ギッダンヌは外交の為に飼い殺しにする。最低限の生活は保障してくれ。」

 外交を直ぐに他の人にするのは難しいのだ。



「これにて一件落着だな!はっはっは!」

 エルモンドは上機嫌に笑っている。


 周りを見て誰も不満なく、笑顔だから良い結果なのだろうな。ギッダンヌは、うん。しょうがないよね。ギッダンヌ家なのに他の人がいないのか。まぁ知らね。


 シルバは、村長達と話をして明日全ての村を見て畑を発展させるらしい。細かい雑務はギランドが補佐として着くから問題なさそうだな。


 話も終わり村に帰ろうとすると、ジョンブルに腕を捕まれた。

「アジトに泊まっていけよ!」

 笑顔で言われたから泊まっていく。

 けしてその笑顔が怖かった訳じゃないし!


 アジトで食べる料理は旨かった。団員達も話していて悪い感じはしない。


 それから一週間全ての村人の病を治していった。お礼としてお金や食料を貰った。

 シルバのスキルのおかげであっという間に野菜達が成長している。1日で収穫出来るってヤバいスキルだな!



 アジトで食事をしていると、エルモンドが話だす。


「よし!そろそろこの辺も落ち着いた!シルバが頑張ってる結果だな!」


 本当にシルバは頑張っている。好きな農業ってだけで出来ることでもないだろうに。行く村全てで救世主のごとき崇められている。忙しく動きまわりみるみる健康的に痩せていった。

「野菜の悲鳴は消えた」と野菜も美味しい食べて肥満変人男はもういない。イケメン変人男に変わってしまった。女性達に言い寄られオドオドするシルバは、見ていて面白い。


 めっちゃ羨ましいけどね!


「新しい仲間のヨルスも加わって次の村に出発するぞ!貧しい村を救ってやるぜ!」

 エルモンドが拳を頭上に上げると「オー!」と団員も拳を挙げている。


 まてまてまて!俺が仲間だと!いつ!俺が仲間になった!


「よろしくな!」

 ジョンブルは、肩に手を乗せて見る。


 お前を離さねぇぞってか!いいよ別に!悪い奴らじゃないし!別に村じゃ暇だったし!綺麗な女性が多いからじゃないし!


「よろしくお願いします!」

 俺は笑顔で答える。




 こうして極悪非道の強盗団輝く葡萄フラッシュグレープは村から村人一人を拐い消えていった。


 どこか遠くの貧しい村を標的に極悪非道の強盗団は進む。





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極悪非道の強盗集団は辺鄙な村を襲う 茄子の皮 @nasunokawa

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