第九章

 返事をした畠田はすぐに席を立って役員室をでると、その足でもう一つ上の階にある近藤常務のいる役員室に向かった。

「失礼します」

 近藤のいる役員室のドアをノックし畠田は部屋に入った。

「どうした、遅かったな。余計なことは何も言わなかっただろうな」

「常務、それどころではありません。今河原の件で警察が」

 そこで事情を全て説明した。

「今、警察が待っています。私が対応するまで待つように指示しておりますのですぐに行かなければなりません。今日のところは警察も捜査令状を持ってきているわけではなく、あくまで調査協力依頼と言っているので、ある程度任意で答えられる質問にだけ答え、早めにお引き取り願う予定です」

 そう畠田は言葉を切ったあと話をつづけた。

「しかし、そのあとが厄介です。河原が逮捕されたとなると彼がどこまでしゃべるかにもよりますが、少なくとも覚せい剤の取引ルートに関しては捜査のメスが入るでしょう。暴力団と殺人の疑いに関しては彼らの個人的なこととして会社とは何のつながりもないとつっぱねればいいでしょうが、入手ルートに関してはそうはいきません」

「わかった。今回の入手ルートが公になれば会社や私達だけでなく、先生達にも影響が及ぶ可能性がある。そちらのほうから警察の上層部に圧力をかけてもらおう。それは私が連絡する。畠田君は席に戻って警察の対応をした後、彼の取引関係書類などでまずいものを全て処理するんだ。その後、大野取締役には取引書類が見当たらない、河原自身が処分したまたは所持している可能性があると報告しておけ。その後はこちらで何とか抑える。大野がこれ以上騒ぐと会社に不利益になることは明白だ。河原が逮捕されたなら、彼だけの個人的な責任にして切り捨てて会社は関知していないことにするしかない。いいか」

「わかりました。しかし河原を切り捨てるということは、彼の」

 そこで近藤は畠田の言葉を遮った。

「分かっている。それも含めて先生達に動いてもらう。覚せい剤所持の現行犯で逮捕されたのならもう助けようがない。あとは覚せい剤所持の罪だけで終わらせることだ。そうすれば執行猶予も付く可能性はある。彼の父親が優秀な弁護士をつけるだろう。わかったなら早く行け。警察に万が一余計なことを話す人間がいると困る」

 そう畠田に指示し、役員室から追い出すようにした後、近藤はすぐに携帯で電話した。

「あ、先生、突然申し訳ございません、近藤です。実は……」

 電話に出た相手に、今までの経緯を説明し始めた。

 

 畠田は三十階にある流通管理部のフロアに戻ると、応接室で待っているはずの四人の刑事らしき男達が前野の席まで出てきて押し問答をしていた。

「いつまで待たせるのですか。ご協力いただけないということですか」

「いや、そういう訳では」

「それなら前野さん、質問に答えてください。河原浩司はどういった取引を扱っていたのですか?」

「ですからそういうご質問は部長が戻ってきてから」

 必死に刑事からの質問をかわしていた前野がフロアに戻ってきた畠田を見つけ、ほっとした顔で言って刑事達を押しやった。

「今、部長の畠田が参りました。応接室にお入りください。そちらでお話しさせていただきます」

「ああ、あなたが畠田部長ですか」

 相当待たされていらいらしていた刑事の一人が、お待たせしてすみません、と頭を下げながら応接室に一緒に入った畠田に対し高圧的に出る。席に座るなり質問してきた。

「こちらにお勤めの河原浩司の件ですが畠田部長は詳細をもう聞いていますよね。彼はどういった取引を担当していたのですか。特に海外のどこの国から何を運んでいたのか、お聞かせいただけますか」

「はい。聞いております。彼が痴漢をしていた、という動画も先ほど私も確認しており、その件で役員と話をしていたのです。驚きました。彼があんなことをしたなんて信じられません。真面目な社員だと思っていたのですが」

「いや、痴漢のことはいいです。彼が逮捕されたのは覚せい剤所持の現行犯です。しかも暴力団と一緒にいたのです。答えてください。彼はどういった取引を扱っていたのですか」

 芝居がかった畠田の受け答えに刑事の声はさらに荒くなった。

「どういった取引と言われましても私どもは世界を股にかける総合商社ですから、あらゆる国とあらゆる物の売買を行っております。そしてその流通に関して管理する部署が私どもの部署ですから、あらゆる国とあらゆる物、としかお答えできません。河原君が担当しているだけでも五十カ国以上の国が関わっておりますし、その中の取り扱っているものも多岐にわたります。申し訳ございませんが一言ではお答えできない、としかいえないのですが」

 恐縮した態度ながら答えている内容はふざけている。腹の立てた刑事は詰め寄った。

「それでは、彼の担当している取引に関してリストを提供いただけますか。何か一覧にした担当表などがあるでしょう」

 すると、その言葉をうけた畠田の目つきが変わった。

「申し訳ございませんがそれはできません。顧客情報など特殊な情報が記載されているものですから。それとも刑事さんは捜査令状をお持ちですか?」

 急に態度が強気になった畠田に対し、逆に刑事達は大人しくせざるを得なかった。

「捜査令状はありません。あくまで任意で捜査協力をお願いしているのです」

「それでは、取引内容などのリストはお出しできませんね。それに今回、当社の河原が覚せい剤所持で逮捕されたことは遺憾ですが、暴力団と一緒のところを逮捕されたということでしたね」

 畠田はそう刑事に確認をし主張した。

「それでは覚せい剤は暴力団から手に入れたものではないのですか? 当社の取引で手に入れたというのはどうでしょう。これは彼の個人的な犯罪であって当社には全く関係ないことではないか、と私どもは考えております」

「いや、取引現場では河原浩司が用意したバックに現金と覚せい剤が入っていて河原浩司から暴力団に手渡されたところを確認しています」

「それでは河原君が仕事の取引でどこかの国から密輸入したと言っているのですか?」

「いや、それはまだ」

 畠田の質問に刑事は答えることができなかった。今日の早朝に河原を逮捕して現在取り調べを行っているが、暴力団の三人を含め彼らは完全黙秘をしているのだ。

「それでは、当社の取引上で入手したという証拠はないのですね。ではやはりリストの提供などはできません。もちろん、インターネットなどでそういう噂が書かれていることは当社でも把握しております。ですから、河原君が当社において不正な取引を行っているかどうかをこれから社内調査して確認したいと思っております。もちろん河原君は覚せい剤所持で逮捕されたのですから、そのような社員は本日付で懲戒解雇いたします」

 さらに畠田は、今日のところはお引き取りくださいと刑事に告げた。刑事達は食い下がろうとしたが、捜査令状もなく任意の捜査協力依頼であるためやむなく引き揚げた。

 畠田は部下に通常業務に戻るように指示し、刑事達が帰ったことを確認してから内線で大野取締役に刑事とのやり取りを報告すると、彼は先ほどの剣幕とは打って変わった静かな口調で告げた。

「それでは、至急彼の取引関係に関して調査してください」

 畠田は携帯で近藤常務に連絡するとすぐに出た。

「畠田です。これからよろしいですか」

「ああ、終わったか。部屋に来てくれ」

 近藤の言葉通り、畠田は再び四十六階の役員室に入った。近藤は役員室にある大きな机の向こうにどっかりと座っていた。畠田は机の前まで進み報告をする。

「常務、警察にはお引き取り頂きました。余計なことは言っていません」

 大野に報告したことと同じように伝えた後、ふと彼の先程の態度に違和感を持った畠野は、近藤にその旨を告げた。すると常務は笑いながら答えた。

「ああ、先ほど大野には私の方からあまり深く関わらないように言っておいた。畠田部長に任せておくようにとね」

 なるほど、すでに手を打っていたのか、と納得をした畠田は尋ねた。

「それでは、すでに警察の方にも」

「ああ、先生の方にお願いしておいたよ。河原がしゃべらない限りおそらく当社へ捜査の手は伸びないだろう」

「さすが常務、行動が早いですね」

 上機嫌な近藤を持ち上げて、畠田もほっと一息つくことができた。

 

 警視庁の上層部にある政治家から連絡が入った。河原浩司の勤める商社への捜査を控えるようにとの圧力がかかったのだ。涼介が「藤堂」と呼んでいた男の耳にその情報が入る。

「藤堂」は、すぐさま大物政治家の一人である阿川大悟あがわだいごに連絡をとった。彼は政権与党の最大派閥、阿川派の領袖であり、閣僚も何度か経験している人物である。

「阿川先生、「藤堂」です。お忙しいところ申し訳ございません。今、お時間はよろしいですか」

「ああ、君か。なんだ、改まって。いいよ。君からその名で連絡がくるということは、厄介な事件がらみのようだな」

「はい。実はある政治家の先生から、当方に捜査妨害ともいえる圧力がかかりました。阿川先生にお口添えをいただき、止めていただきたいのです」

「ほう。私がその先生に止めてください、と、そういうだけでいいのかい?」

「いえ、それだけの説得材料を用意してあります」

 「藤堂」が阿川にそう言い、四人の政治家の名前を挙げた。そしてその人物達があるレストランの個室で違法取引を行っている現場の映像が手元にあると告げた。驚くことに四人のうち一人の政治家は覚せい剤を自ら使用していたようだ。

 その内容を聞いた阿川は唸った。

「そうそうたる面子だな。それだけのネタがあれば、私を通さずとも君から逆に圧力をかけても十分通用すると思うが」

「いえ、私達警察から圧力をかければ角が立ちます。またそれだけのメンバーを違法取引で逮捕することになれば、政治的にも大きな混乱を招くことでしょう。政権与党でそれだけのスキャンダルがあれば、阿川先生にも迷惑がかかります」

 「藤堂」はさらに続けた。

「それに、阿川先生から四人の先生に引導を渡していただければ、政権にも傷つかず先生の影響もさらに大きくなるでしょう。その方が今後我々の仕事がやりやすくなります」

「その四人を引退させるだけでいいのかな。法の下で裁きを受けなくてもいいのかい」

「確かに私腹を肥やすための違法取引や覚せい剤取締法違反は許せませんが、それ以上の大義のためです。引退という社会的制裁で手を打ちましょう。引退した政治家はただの人ですから。今回の件で先生から圧力をかけていただければ、彼らが引退後に裏から力を使うこともできないでしょうし」

「なるほど。引退すればただの人か。耳に痛い言葉だな」

「ただ、殺人に関わった黒幕の一人は許しません。表舞台からは引退していますが、あの人にはしっかり罪を償ってもらいます」

「あの人はとっくに表舞台から去ったと思っていたがとんでもない曲者だったということだな。それに比べれば他の四人なんてかわいいものかもしれん。今回明らかになった事件の元凶だからな」

「それではお願いします」

「わかった」

 

 その後、阿川大悟から大物政治家の一人で警察に圧力をかけた如月きさらぎ議員に電話をした。

「如月先生、少しお耳に入れたい情報があるのですが」

「阿川先生ですか。なんですか藪から棒に」

「先生は警察の方で河原とかいう男が逮捕された事件はご存知でしょうか」

「ん? いや知らないな。その男がどうした?」

「実はその事件を調べている中で、とんでもないものを警察が発見してしまい処置に困っているようなのです」

「なんだ、まどろっこしい。何なんだ、はっきり言ってくれ。その事件が私とどう関係するんだ」

「それでは、はっきり申し上げます。警察ではあなたを含め後三名が、今回覚せい剤所持で捕まった河原浩司という男の兄が経営していたフレンチレストランでの密会映像を入手したようです。その店はもう廃業していて、経営していた男も死亡しているのですが、そこの個室でお金を受け取っていたり、違法に国内へ持ち込んだレアメタルや美術品などを受け取っていたりするやり取りが映っていると耳にしました」

「な、何を言っているんだ、君は!」

「事実、撮影された映像が動画として私の手元にあるのですが。メールで送付して送りましょうか? ああ、今、送りました。一応、動画にはセキュリティのためにパスワードを入力するようにしていますから。パスワードは●●●●●●です」

 しばらくして如月は自分のパソコンに届いたメールボックスを開き、そこに添付されていたファイルを阿川の言うパスワードで開き絶句した。

「こ、これは」

「先生はまどろっこしい事がお嫌いなようですから、率直に申し上げます。ほかの三名の先生ともども議員辞職してください。そうすれば警察には、私からこの映像に関して不問とするよう申し渡すことができます。もしお断りされれば、ご覧になった動画をインターネット上で公開することとなるでしょう。もちろん匿名で」

「私をお、脅すのか!」

「脅しではありません。もともとこの動画の入手も捜査の中でどうやって入手したか、警察でもはっきりとした発表ができないようです。ですからこの情報を持っているのは、警察だけではありません。しかしこれが世間に配信されれば、あなた方が失うものは政治生命だけではなくなるはず。いや、我が国自体が危機に見舞われます。そうなれば、おそらくこの裏にあるもっと大きな力が働き、四人の命を消すことになるでしょう。それはあなた方が一番良くご存じではないですか?」

 阿川の強い口調に如月は何も言うことができなかった。

「この件に関しては日本国内でなく、海外の複数の国が関わっているようです。だからそこまで波及する恐れがあった場合、いや、もうご説明は不要でしょう。他の先生にはあなたからご説明ください。お国のために、です。よろしいですね」

 阿川は最後には有無を言わさない威厳のある声でそう告げて、一方的に電話を切った。

 

 阿川が如月に電話した一週間後、如月を含めた政治家四人が引退を表明する記者発表があった。四人ともが自らの健康を理由に、という不自然な辞め方ではあったが、そういうマスコミの声も全て阿川が押さえ、その騒ぎは日々流れる多くのニュースの中に埋もれていった。

 さらに阿川は四人のそれぞれの選挙区からその息子や辞めた本人が後継者を指名させるようなことをさせず、党による推薦という形を取り、阿川の派閥の力で全く新たな候補者を選定した。そして四人は完全に政界から姿を消すこととなったのだ。

 しかし、その後明らかになったことだが「藤堂」はその四人を政界からの引退だけで放って置くことはしなかったらしい。

 覚せい剤を自ら使用していた男は、「藤堂」が予想していた通り引退後も個別にヘロインを手に入れて使用していたことが判明した。その為内偵をしていた麻薬捜査官によりヘロインを所持していたところを現行犯逮捕されたのだ。一度薬に手を出したものが抜け出すことはとても困難であることなど、周知の事実である。

 他の三人に関しては、私腹を肥やして隠し財産を形成していたことからマル査による調査が入り、脱税で逮捕し巨額の追徴金を課されることとなった。

 これは、巨悪に対してできる限りの社会的制裁を加える、というわずかながらではあるが悪を許さない「藤堂」の意地によるものであった。

   

 如月からの圧力が無くなった警察は、河原の勤めていた商社へも捜査のメスを入れた。

 河原の所属していた「流通管理部」の社員を始め、前野副部長、畠田部長らを任意で取り調べた。任意での聴取のため、畠田部長はなかなか応じず黙秘を貫いていたらしい。

 しかし他の社員や前野副部長は違った。特に前野は河原達の取引には無関係だったようで、任意に協力を求める「捜査関係事項照会書」に応じ、取引先のリスト提出をしてくれたのだ。

 そこから調査し、社員や前野の証言により近藤常務の名前がでると、警察は任意同行を求めた。これも当初は拒否されていたが、他の役員への個別のアプローチを行うことにより外堀を固め、近藤が畠田部長と河原を通じて違法な取引に関わっていたことが判明したのである。

 警察による長く地道な粘り強い調査により、業務上横領および海外からの違法取引の罪で河原が再逮捕、畠田と近藤も逮捕された。

 

 警察による様々な調査で明らかにされていく証拠を突きつけ、厳しい取り調べを続けたことが影響したのだろう。当初逮捕されても黙秘していた暴力団、河原、畠田、近藤らが少しずつ供述しはじめ、元凶とも思われる人物を浮かび上がらせることに成功した。

 警察は、河原浩司と河原圭の父であり元外交官の河原源蔵げんぞうの屋敷を訪れて言った。

「殺人教唆の容疑で逮捕する」

 そう、河原圭の父がすべての黒幕であった。

 海外との違法な取引のパイプを作ったのが、外交官であった河原源蔵だ。彼は体を壊して引退したがその人脈はそのまま続いていたという。そして帰国させた圭のレストランの開店資金をだすだけでなく、店に飾る絵画や調度品、または仕入れる食材を購入する中に紛れこませ、ヘロインや不正に取引したレアメタル、美術品などを密輸入していたのだ。

 これらを取り仕切ったのが商社である近藤や畠田、そして源蔵の次男である浩司だった。圭は日本に帰国してから、当初全くこのような取引に気付かなかった。弟であり商社に勤める浩司に任せていたからだ。雄一が手に入れた「K・Kが取り寄せた」というメモのK・Kとは、河原圭ではなく、河原浩司のことだったらしい。

 ある時、レストランの個室をよく利用する浩司の上司であるという近藤や畠田の他、有名な政治家などがよく利用していることに疑問を持った圭は、以前から交流のあった譲二に相談を持ちかけたという。それを聞いた譲二は、涼介に依頼して店の個室やトイレなどに隠しカメラや盗聴器を仕掛け、彼らの悪事を撮影、盗聴することに成功したのだ。

 彼らの取引の全貌を知った圭は、その裏に父も関わっていることを悟り、なんとかこの取引を警察沙汰などにせず止めさせる方法はないか、再度譲二に相談した。

 そこで譲二は、取引の舞台となっている店自体を閉店させれば、取引をなくすことはできると伝えた。それでも根本的な解決にならないし、店が無くなっても彼らはまた別の方法で違法な取引を続けるだろう。そう忠告したようだ。

 そして店が無くなったら圭自身どうするのかと尋ねた所、彼はフランスに戻りほとぼりが冷めた後にフランスで一からやり直す、と答えたらしい。

 また店が潰れた後の神田雄一の面倒を譲二に見てもらえないだろうか、と圭は依頼していた。譲二はそれを了解し、店をつぶす案として食品の産地偽造を仕掛けることを提案したのだった。

 圭の協力で産地を偽装したかのような食材の仕入れを行い、実際の調理は正規のものでお客様に出した。それはお客様には迷惑をかけられないという圭の強い思いからである。

 従業員には産地偽装がわざとばれるように仕掛け、また涼介の手配で複数の人間を使い、様々な方法でネットへ書き込みを行わせ、産地偽装の風評を広めることによって社員による内部告発まで誘導させて、証拠となる仕入れ伝票もリークして店を廃業に追い込ませた。

 その後は圭にはフランスへ逃げてもらい、ほとぼりが冷めるまで姿を消すように譲二は手配した。彼は当初、居場所を譲二以外には身内にも知らさなかったはずだ。フランスに渡ってからは譲二にすら連絡を取らなかった。これ以上迷惑がかかってはいけないと考えたのだろう。

 それでも彼がフランスに逃げた後、どこから情報を得たのか居場所を知った源蔵は、圭が違法な取引に気づいていると感じ、口封じのため浩司に依頼して暴力団に手伝わせ殺害したのだ。

 圭は自分の身の危険を察知していたのか、譲二を通じ英吾の扱いで一億円の生命保険に加入し、その三十%、三千万円を圭が亡くなったらNPOに寄付されるようにしていた。七十%は妻を受取人に指定していたのだった。

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