第4話 目が合う気がする
「こんにちは、おねぇちゃん」
「あっ、来てくれたんだ。小林さん」
「愛梨だよ」
「愛梨ちゃん、こんにちは」
「うん♪」
日曜日になるとさっそくこの前の小学生、お母さんと一緒に愛梨ちゃんが訪れてくれた。
「ねぇ、ちょっとだけ・・・お話いい?」
私はちらっと、館長を見ると、優しい顔をした館長が頷いてくれる。
「じゃあ、ちょっとだけ・・・ね」
今日は日曜日だがそこまで人がおらず、彼もいない。
私と愛梨ちゃんはテーブルの隅でお話をする。愛梨ちゃんのお母さんは愛莉ちゃんにあっち行っててと言われて、話が聞こえないぐらい机で本を読んでいる。
「あのね、私・・・クラスの神津君のことが好きなの」
「へぇ・・・そうなんだ」
「それでね、私が見てると、神津君とよく目が合う気がするの。この本みたいに」
彼女は小説を私に見せてくれる。
その本は大人しい少女が成長しながら意中の男の子に告白する話だった。
「その神津君とは仲がいいの?」
「うーん・・・わかんない」
愛梨ちゃんは自信なさそうに俯く。
私は小学校の時に同じ男の子をずーっと見つめていて、気持ちが悪がられてしまった子のことが頭をよぎった。
(可愛らしい愛梨ちゃんなら、大丈夫だと思うけど・・・)
「神津君、意地悪してからかってくる時もあるけれど、私が困ってるときとか、忘れ物した時!とかね、消しゴム貸してくれたり優しい時もあるの・・・」
「そう・・・」
(あぁ、大丈夫だ。この子たちは)
私は暖かい気持ちになった。
「ごめんね、お姉さんにはわからないな」
「・・・そっか」
肩を落とす愛梨ちゃん。
「そのお話は愛莉ちゃんと神津君が作るお話だから」
「えっ?」
「その本の女の子も最初はなかなかできなかったけど、好きな男の子に素直な言葉を伝えていたよね?」
「うん」
「愛梨ちゃんはお礼を神津君に言えてるかな?」
「あっ」
私は微笑む。
「今のままでも愛梨ちゃんはかわいいから、神津君はオッケーしてくれるかもしれない。でもお姉さんには神津君の気持ちはわからないから無責任にそういうこと言いたくないの。だから、お姉さんが言えることは1つ。愛梨ちゃん、お礼が言える素敵な女性になってほしいな」
純粋な二つの瞳。
「わかった、ありがとう、お姉さん。お母さんは大丈夫、大丈夫しか言ってくれないから信用できなくて・・・さっそく頑張ってみる」
「うん」
愛莉ちゃんはお母さんの元へと行く。
(きっと、愛莉ちゃんなら上手くいく)
もしかしたら、遠回りさせてしまったかもしれないが、愛莉ちゃん自身が自分を好きになれる自分になれることはいいことだろう。それに―――
(きっと恋は叶うまでが、一番楽しいのだから)
私もそろそろ受付へ戻らないと。
私は彼と目線が合うことはほとんどない。受付で一瞬合うか合わないか。
しかし、彼は私に聞いてきた。私のおすすめの本を。選ぶのがプレッシャーだったが、彼女のおかげで楽しんで選ぶことができそうだ。
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