第2話 自分と相手の世界を繋げる魔法
「ありがとうございました!!」
図書館の外で元気よく挨拶をする生徒達。
元気な笑顔の子どもたち。
「何読んだ?」
「えっとね・・・」
「ねぇ、聞いて聞いて!!僕が読んだ・・・」
本の話をしながら、バスに乗り込んでいく生徒達。本の素晴らしさを知ってもらえて、なんだか嬉しくなる。
「・・・お姉ちゃん」
大人しそうな女の子が声を掛けてくる。
私は腰と膝を曲げて視線を彼女に合わせる。
「なぁに?」
「お姉ちゃんは告白したことある?」
「えっ?」
「少ししか読めなかったけど・・・女の子がね、好きな男の子に・・・」
女の子はバスの方で、優しそうな男の子を見る。
「小林さん、行きますよ」
「あっ、はい」
女の子は走ってバスへ向かおうとする。
「小林さん!!」
私が声を出すと、女の子は振り返る。
「あなたのお話、また、聞かせてね」
「うん!!」
元気な顔を見せて女の子はバスに乗った。
(告白か・・・)
私と館長は手をふりながらバスを見送る。
好きだった男の子は何人かいた。
けれど、私には告白する勇気も自信もないし、ましてや、好きな男の子と仲良くすることすらできなかった。たまに交わす言葉は一言、二言。
私は遠くで好きな男の子を見つめていることしかできず、声を掛けられた時も読んできた本の物語のように、何かが起こることを期待していたが、何も起こらなかった。
自分でもわかっている。自分で動かなければ始まらないことも。そうしてきた多くのヒロインも私は知っている。けれど、私はよくも悪くも自分の空間が心地よいのを知っている。誰も入ってくることのない、予定調和的で傷つくことのない私だけの世界に。
そう考える私は、無理に自分の世界に招き入れようともしないし、男の子の世界にも入ろうとも思わない。
当然、自分の世界に入ってくることも求めてくる男の子もいるかもしれないが、その考え方は私には理解に苦しむし、私のようなどんくさい女が入ってもめんどくさいだろうなと思ってしまう。
私は振り返り、館長と図書館内に戻ろうとする。
「あっ」
彼がいた。
「すいません、図書の貸し出しをお願いしたいんですがいいですか」
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