第4話 終演

「さぁ、私の話はここまでです。如何でしたかな?しかし、こんなこと本当にあるんでしょうかね。不思議なものですが、この暁さんという方は、確かに実在する人のようなんですよ。彼の行ったという湖も本当にあるのかどうか確かなものはないですがね。ただ、彼が行った湖はその後も観光名所となり、紅葉の時期の一面の紅葉は、それはそれは絶景なんだとか、そして立ち入り禁止の柵の先に時より黒髪紅い瞳の美女がいるとかいないとか、、、、、、。おや、雨が止んだようですよ。」

「お、本当ですね。いやぁ、それにしても話し方が巧みで、ついついのめり込んでしまいましたよ。一体こんな話をどこから仕入れてきたんですか?ほかにもこんな話をお持ちなんですか?」

「ふふ、企業秘密とだけ言っておきましょう。わずかな時間のなかで、楽しんでいただけたようで何よりです。ささっ、名残惜しいですが今日のところは今のうちに帰られた方がいいかもしれませんよ?今日のところはね。」

「そうですね。また来ます。タオルもありがとうございました。ごちそうさまでした。」

そう言って、男は店を出て行った。


ぎいいいいい、、、、、、、、、、、、、、、、


「えぇ、もちろんまた来てください。今度は、あなたにしかない物語となって。」


店主はそう言いながら年季の入った書架の間を歩いていた。


コツコツコツ


「さぁ、お戻り、、、、、、」


店主が棚に戻した書籍の背表紙にはこう書かれていた。


「待ちきれない小さな紅葉」


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待ちきれない小さな紅葉 雨月紫陽花 @einsame-nacht

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