第8話

「ガフッ…!」


 ハーブ神父の前蹴りヤクザキックでジュージは壁まで派手に吹き飛んだ。


 ハーブはジュージの手から捩じりとったマチェットを窓の外の暗闇へ放り投げた。


「…ハッハァ!これでご自慢の得物マチェットは残りあと一本やでこの殺人サイコパスがァ!」


「ハーブ…エイジアに伝わるヤクザ喧嘩殺法の使い手とは…やりますね」


「誰がヤクザやオンドレェ!?ワイは神父や!?死ねェ!」


 ハーブは脳天目掛けてコルトパイソンをエイムする。


 が、その瞬間に既に視界からジュージは消えていた。


(…ッ!?ちょお待てや…!?)


 ハーブは気配を感じ咄嗟に斜め前にステップする。が、ジュージはそれを読んでいたかのようにより速くマチェットを振りかぶっていた。


「…なんでさっきより動き速うなってんねん!」


 ハーブは振り下ろされるマチェット目掛けて間一髪銃弾を放った。


 ―が、それと引き換えに放たれた回し蹴りがまともにみぞおちに叩きこまれる。 

 

「がッ…!?」


 間一髪片腕でガードしたがそれでも衝撃は殺しきれず視界が薄くブレるのを感じた。

 

 闇夜に照らされるジュージの顔は、菩薩像の様に凄絶に微笑んでいた。


「…やっぱお前ナチュラルなイカレやろ…?アドレナリンガンギマリやないかい…!」


「ふふ…ハーブ…楽しいですね…私はあなたを好敵手と認めます」


「ミリも嬉しゅうないわ…」


 その時ハーブの目に映ったのは、ジュージの真後ろに着弾する寸前のロケット弾だった。


「アホ抜かせェ!?」


・ ・ ・


「フフフフフフ…」


「し、シスター…??」


 シスターに肩を貸しながらやっとの思いで裏庭から前庭に移動すると、ハーブ神父の威勢のいい罵倒が聞こえた。


 シスターの肩に担がれているのは携帯式対戦車擲弾発射器RPG-7Rocket-Propelled Grenade。ウィステリオは覿面に嫌な予感を感じつつシスターに肩を貸していた。


「前提を間違えていたのよ…白兵戦というね…フフ…クソ喰らえだわ…」


「あ、あの…」


「ウィステリオ、ここでもう大丈夫よ。ありがとう」


「全然大丈夫な感じがしないんですが!?」


「SHUUUUUT UUUUUPPPPPPP!!!」


「ギャーーーーーー!?」


 歪な動線を描きつつ、ロケット弾は館の最西端に着弾し爆風を巻き起こした。


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