第2話 二日目ー元ヤンはちょろいん?ー



 二日目、彼はやってきた。

 ただ、具体的に何時頃と約束したわけではないけど少し遅くないか?

 彼が事情を話してくれたけど、人助けなら寧ろ褒めるべきだよね。


 今日の彼はきっちり8個入りを500円で購入してくれた。

 私はこの500円玉を別の袋に入れて保管した。


 「私が学校サボってるのは……父親の介護といえば聞こえは良いけど面倒を見てる?的な。」

 

 父が交通事故で重症を負い、暫く歩けず入院生活で、入院中の差し入れとか洗濯物とかやることが多い事。

 蓄えも多くあるわけではないため、バイトして少しでも足しにしている事を話した。

 そのため学校に行く余裕がない事も。


 父の名言である

 「知らない天井だ……」

 「あれ?トラックに轢かれたのに異世界転生してない。エロフは?冒険者は?魔王は?NTRは?ざまぁは?」

 そして看護師に中二病だと言われた事を話すと彼は苦笑いをしていた。

 どうやら彼はラノベとかアニメとかに嫌悪しない人なのかな。

 私はヤンキーでありヲタクでもある。

 

 思わず、母が既に亡くなってる事も話していた。


 「そんなわけだから今もこうしてたこ焼きの屋台をやってるっつーわけなんだよ。」

 この三日間自分が屋台でたこ焼きを焼いて売っている事の説明はこんなところだ。


 「何か手伝えないかな?もちろん作る方は売り物だから何も出来ないけど。列整理とか道具洗いとか。」

 彼は人助けをしないと済まない性格なのだろうか。

 そういえばここに来るまでもおばあちゃんとか子供の話をしていたもんな。


 私は正直嬉しかった。

 父の助言や商工会の手伝いもあったとはいえ、女一人で屋台一軒を回すのには限界を感じていた。

 彼のこの行動はきっと、計算されてないんだろうな。

 困った人、困っている人を放っておけない性格なのだろうな。


 最初はぎこちなかったけど、1時間もする頃には彼も手馴れてきていた。

 たまに列を無視するような客には私が一括し綾瀬川に沈める発言すると、大抵大人しくなる。


 すると余裕が出来たのか、たまにこちらを見ているのがわかる。

 や、恥ずかしいからやめろって思いながらも悪い気はしない。

 手元が狂わないようにしないと。


 お客さんからは美味いとかたこでかいとか感想が漏れてくる。

 まぁウチはたこは大きくワンコインがスタイルだからね。

 リスクを孕むロシアンたこ焼きは300円だけど。

 まぁ1割も売れてはいないんだけど。


 「いやぁ、助かった。一人だとトイレすら行けないから。それじゃぁほい。これ出来立てほやほやの新鮮なやつ。」

 彼に手渡したのは今さっき転がしていたたこ焼き。


 今日は二人で一緒に食べる。


 「はひはほふふんふぁ?」

 つい食べながら喋ってしまう。


 「明日も来るんか?」

 来ると言って欲しい。

 ってあれ?昨日もだけど何を期待してるんだろう。

  

 「明日も来るよ。」

 

 そう言ってたこ焼きを食べ終わると、屋台の片付けを手伝ってくれた。


 連絡先を知らなくてもここでなら会える。

 でも明日が終われば……

 もう会えないのだろうか。


 もし、もし彼が私の頭に浮かんでいる人と同一人物であるならば。

 そうであればきっと学校にさえ行ければ……学校に行けば。

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