第5話 解脱
―――僕は過去を捨てた。
その日よりも前のこと辛い過去も悲しい過去も全てを忘れることができた。
後悔はない。
そもそも後悔する思い出がないのだから。
爽快だ。
手足が軽い。
体が軽い。
そして、心が軽い。
(僕はどこだって行ける)
僕は屋上を降りて、知り合いに会うことなく僕は玄関に行く。
(あっ)
下駄箱には靴が無かった。隠されてしまったようだ。どこのどいつかも、何人いるかもわからないが、こんなことが日常茶飯事だったのだろう。その場でどうしようか考えるが、こんなに気分がいい日に裸足に帰るのも嫌だと思った。
そのままで玄関を出る。
―――さぁ、帰ろう。
僕は玄関を出て、校門を出る。
1歩、2歩、3歩・・・・・・
―――あれっ
僕は違和感を感じて足を止める。
この道はあっているのだろうか。あってるとは?
どこに向かっているんだ?どこに向かえばいいんだ?
僕は軽くなった頭と心をフル回転させる。
(ない・・・ないっ・・・ないっ!!)
僕は過去最大に焦った。そして、過去最大に苦しい気持ちになった。
僕は自分の両手で顔を覆う。
(僕の・・・過去が・・・記憶が・・・何にもないっ・・・)
短い過去。赤ん坊よりも短い過去。
僕は慌てて、さっきの屋上へ向かおうと、振り返る。
―――そこにいた。
そこには、涙を流しながら嬉しそうに笑顔にしている私がいた。
悲惨な過去いただきます 西東友一 @sanadayoshitune
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