第6話:いつの間にか……
「団長、次はダンジョンに潜ってみませんか?」
国内の犯罪者ギルドを壊滅させた我々レジー傭兵団は、当初は各国の犯罪者ギルド壊滅を請け負い、各国を転戦していた。
その間に個々の能力と性格性質が明らかになり、何時の間にか上下関係や役割分担が生まれていった。
中には淘汰されて傭兵団を離れる者もいたが、それはしかたがない事だった。
私がどうにも気になっていた、没落したゲイツ伯爵家の若き当主リアン卿が、いつの間にか副団長となっていた。
「そうだな、もう各国からの犯罪者ギルド討伐も期待できないからな」
多くの犯罪者ギルドを討伐し、莫大な金を稼いだのはいいが、あまりにも容赦なく皆殺しにしたので、もう討伐する犯罪者ギルドがない。
しばらくすれば新たに生まれてくるだろうが、それまでの間収入もなしに傭兵団を維持するのは無駄だ。
稼いだ金の半分は、いや、利益の半分は稼ぎに応じて団員に分配しているから、買おうと思えば全団員が騎士位は購入する事ができる。
戦いに嫌気がさしているのなら、悠々自適の引退生活をしてもいいのだ。
「はい、ですから、冒険者のようにダンジョンに潜とうと思います。
そんな事をすれば、ほとんどの者が引退するか別の傭兵団に移籍するかもしれませんが、それは彼らの自由です。
ですが私は、無理矢理徴兵された民を殺したり、罪のない民を殺すのは嫌です。
それは団長も同じだとおもったのですが、いかがでしょうか?」
確かにリアンの言う通りだった。
純粋に傭兵団を維持しようと思うのなら、国同士の戦いや、領主同士の争いに雇われるのがいいに決まっている。
だがそれでは、民を助けるためという、リジー傭兵団設立の目的に反する。
金払いの悪い国や領主は、村々からの徴発権や略奪権を報酬にする奴が多い。
民から無理矢理金品や食糧を奪うなど、絶対にできん。
「そうだな、これから全員を集めて話をしよう。
無理に傭兵団を維持する必要もなければ、団員を引き留める必要もない。
我々は、民を犯罪者から救うという、傭兵団設立の理想を達成したのだ。
それを誇り、胸を張って解散するのもいいさ」
私は密かな期待を込めて傭兵団解散も考えていた。
恋がこれほど女を弱くするという事を、すっかり忘れていた。
いや、恋は女をとても強くすることもある。
「はい、団長」
それに、リアンだけしか残らない方が、私にはむしろ好都合だ。
リアンと二人きりでダンジョンの奥深くに潜り、共に戦う。
肩を並べ、背中を預け、いや、信頼して命を預けて戦ううちに、もっと仲良くなれるかもしれない。
リアンがゲイツ伯爵家が失った領地を買い戻し、堂々と社交会に復帰する時には、その横に並んでいたいな。
没落令嬢の秘密 克全 @dokatu
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