素朴だけど心に沁みる。恋愛というものがどういうものであるか、その真髄を描き切った短編。内容は至ってシンプルで初恋に落ちた少年が勇気を振り絞って告白するまでを描いたものである。手垢に塗れたなんてもんじゃない。ファンタジーでいえば「囚われのお姫様を助けに行く」くらいにありふれた物語だ。
余程腕に自信がなければこの題材で書けるものではない。
いったい何をもってこの作者さまは凡百の作品群から抜きん出ようというのか?
丁寧な段階を踏んだ心理描写と王道であるがゆえのシンパシーがその答えだ。
大人には「そうだよね」と共感を与え、ノスタルジーに浸らせる。まだ恋を知らぬ子どもには「貴方の歩もうとする道はこうなっているんだよ」と人生の指針を詳細に示している。少年よ、歪まず、いじけず、真っすぐに歩んで欲しい。もしかするとそれは大人の我儘なのかもしれないが…。
この内容は正に全年齢の万人向け。
これこそ朝読書で読むべき作品なのではないかと感じた。