キャット部屋デビュー
猫たちが、キャリーケースから出てくるようになってからは昭と美優は次の段階を考えていた。
自分達以外の人にも慣れてもらわねば…。
友達や、バイトの知り合いに事情を話して来てもらう。類は類を呼ぶものだろう。皆、猫好きな人ばかりなので喜んで来てくれた。
10日目になり、その間でも猫たちは家族ずれの子供たち、老人、外国人などいろいろな人が店に来てくれて猫たちも慣れていった。
「苦労したんだね」多頭飼いの保護猫たちと事情を説明すると、みな愛おしそうに猫たちをみつめる。多いときは10人位の友達や知り合いが来てくれたが、その優しさを感じとったのか、スリスリして甘えたり膝の上に乗ったりしてメロメロにしていく。そう、彼らはもう優秀なスタッフなのである。
2匹以外は…。低い声のテノールと、シッボが切れているオキレだけは最初からずっーと警戒しっぱなしである。キャリーケースからも出る様子がない。彼らの心の殻は頑丈だ。こればっかりは、待つしかない。
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11日目 開店 『キャット部屋』
開店の花々が届き、こじんまりした部屋の廊下に、祝い花の胡蝶蘭やバラやユリの花等が置かれていて華やかになっていた。個々花々が合いまった甘い香りが広がっている。
花束には、友達や知り合い業者からのメッセージカードが花々の間に添えられていた。
今日という日を迎えることができて、二人とも朝日が昇り始めた早々に目が覚めていた。
スタッフの猫たちは、それぞれマイペースだが開店1週間はチラシが入るので頑張ってもらわねば。
店の前は開店前の20分前から、列になっていた。その様子を、二人は少し強張った顔で見ていた。
「さあ、10分前だ。ゲージを開けよう」開けたそばから、それぞれお気に入りの場所へ移動する子や、ウロウロ歩き回るものや、他の子にちょっかいかける子さまざまである。
「10時になった。客入れてくるよ」昭は、短い距離なのに小走りでドアまで行く。
「いらっしゃいませ。今日は、ようこそお越しくださいました」
「いらっしゃいませ。どうぞ、うちのスタッフも心から今日という日を楽しみにしていました」今日は、初日ということもあって15人は来てくれただろうか。
全員入れるにはうちの部屋では少し手狭なので半数くらいの人数に入ってもらい、後の半数は受付のフロアや廊下に椅子を持ち込んだ席で待ってもらう。
客の中を猫たちは渡り歩いたり、やせ子は膝に乗ったり、アイドルはすりすりしたりと、10日間の研修期間が功を示している。お客は個々に首輪につけられた名札を見ながら、猫たちに声を掛ける。
名前が決まった時から呼ぶようにしていたから自分たちの名前がわかるのか、呼ばれると一応近づいていくが、中にはスルーしていく子も。このツンデレな仕草もまた、猫好きにはたまらない。
お客の中には、研修期間に来てもらった馴染みの顔もちらほら見かけた。猫たちが、覚えているのかどうかはわからないが…。
セカンドライフ 猫 クースケ @kusuk
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