第4話 離れる二人、薄れる約束

 ―――その日、私は家に帰り大泣きをした。


 そして、次の日休んだ。


 気持ちを切り替えて、ハルトに謝ろうとしたが、ハルトは私が声を掛けようとすると私を避けた。ナギサは心配して相談に乗ろうとしてくれたが、ハルトをこれ以上傷つけたくないと思って、話さなかった。


 そして、ハルトとは全く話すことがなく、高校生活が終わり、卒業式。

「ハルト!!」

「なんだ・・・ナギサ」

 

 カシャッ

 

 ナギサは私とハルトのツーショットを撮る。

「もう1枚。ちゃんとポーズして」

 私とハルトは目を合わせる。あの日以来合わせなかった目。ハルトの顔。

「はいはい、もう少し寄って」

 お互いが緊張した顔をして、じりじりっと距離を詰める。

「はーい、こっち見て。はいチーズ」

 

 カシャッ


「じゃっ・・・」

「うん・・・」

 足早に同級生の元に帰るハルト。

「あ~行っちゃったか」

「ありがと・・・ナギサ」

「泣くと綺麗な顔が台無しになっちゃうぞ?私の親友」

「・・・うん」



 それから、私は東京の大学に進んだ。2年生になって髪を染めて、ピアスも開けた。

「・・・であるからして、ギリシャ神話ではたびたび、神々の恋について語られます。そして、嫉妬や誤解、勘違いから様々な神々の繋がり、広がりが生まれるわけですね」

「先生」

「はいっ?」

 神話学の講義を受けている中で、私は思い切って手を上げた。

「ヴィーナスってどんな神話ですか?」

「えーっと、ヴィーナスはローマ神話ですね。ギリシャ神話とローマ神話は親戚のようなもので重複する部分もありますが。それは時代背景を・・・」

 キーン、コーン・・・

「今の話は次回の冒頭で触れましょう。皆さんお疲れ様でした」

 生徒達が立ち上がる中、ミサキはスマホの画面に打ち込む。


『ねぇ、ハルト。ヴィーナスがローマ神話だって知っていた?』

 

 しかし、ミサキは打ち込んだ文章を送信しようと親指を動かすが、画面をじーっと見て、送信ボタンではなく、消去ボタンを押した。 


 ピロリン


 画面を見ると、ナギサからだった。


『成人式帰ってくるよね?高校のクラスメイトで二次会やるからよろしく♡』

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