ぼくひとりで片付ける
そこで足が止まった。男子三人のだ。
注意が逸れる。この部屋の外。廊下からだ。
It followed her to school one day
school one day, school one day,
It followed her to school one day
That was against the rule.
か細い声だ。意外なことに、そんな聞き慣れない発声でも分かってしまう。言いつけを守らないでこっちにまで顔を出してくるとは、なかなかどうして役割分担をした意味がないな。呆れたという思いから、大きく深くため息を吐いた。決して安心してなどいないし、ましてや事態が解決に向かうとも思えない。
『メリーさんの羊』を原語で歌いながら、あいつは当たり前のように社会科準備室にまで到達した。
「やあこんにちは。ぼくの最愛の人に乱暴したやつは、いますぐ前に出てきてね」
開口一番笑ったマチは、そのまま私を守るように立ちはだかった。
どうしてパンダカラーがここまでやって来られたのか、疑問は解決することはなかったけれど、そんなことは後回しで構わない。私ひとりではどうしようもなかったところに思わぬ助っ人。願ってもない猫の手だ。
しかしながら、その登場がなにか状況を打開させるかといえば、そうは問屋が降ろさないだろう。小柄なマチでは力づくで難敵を打破することは叶わないだろう。どうにかして一縷の望みを掴むことができるかもしれないが、実現は奇跡であろうことには変わりない。
「……先生は下がって、ぼくひとりで片付ける」
パーカーの四次元ポケットから右腕だけを出し、挑発するよう男子たちに向ける。指だけを曲げ、かかってこいと暗に示す。
「無茶言わないでよ。私も加勢するから、あんたは隙を見てポーチを奪って」
「いい、足手まといだから」
はっきり言ってくれるが、あんただって男子三人以上には勝ち筋がないって言っていたじゃないか。無謀な挑戦を止めなければならない。若干身体が痛むが、マチに矛を収めさせなくてはならない。
「お前も誰だか分かんねーけど、とにかく出てけよ」
金髪が私よりも早くマチへと詰め寄る。ぬかったなと思う。が、マチが歩み続けたということも原因のひとつであろう。もともと無茶苦茶なことをするやつではあるが、こんなときくらいは冷静になってくれないと困る。
「相手は三人だって!」
叫ぶが、とうていマチに及ぶ手を払うことはできない。傷つくことは、ダメなのに。
「女ひとりでなにをするんだ?」
伸びる手。やめてくれ。
血が飛び散る。
マチの膝。
激突したのは金髪男子の鼻。
「これで、ふたり」
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