第4話 魔狼との出会い2

「神獣……まさか夢であったことって?!」


 確か夢では魔族もいたはずだ。


「やっぱり、あの夢はただの夢じゃなかったのか」

「ライト!」


 夢で聞いた声?いったい誰が?


「詳しいことは後で話すわ。それより、魔族はまだ生きてる」

「生きてる?」

「後ろ!」


 突如、右横腹の方にとてつもない痛みを感じ、木に激突した。


「がはっ!」


 大量の血を吐き出す。

 訳も分からないまま自分の血をただ眺めている。

 え?何が起こったの?


「ライト!」


 体中が痛い。

 魔狼が僕を呼んでる。

 なんでだろう?体中痛いはずなのに、気持ちがいい。


「くそ!あの魔狼、素直に死んでおけばいいものの!」

「まさかこの俺が不意打ちで気絶していたとはな」


 魔族の声か?


「それにしても、まさか人間がこんなこところに来るとはな」

「いや、待てよ?ここに人間が来たということは……」


 そう言って、魔族が近づいてくる。


「お前も運が悪かったな」


 僕って死んじゃうのかな?


「ライト!しっかりしなさい!」

「まさかこんなにも早く出てくるとは思わなかったが。あの爺さんも、教えろよな」


 魔族が刃を首元にあてる。

 冷たい。

 親孝行もできてないのに…… 

 

「ライト!あなたはここで死ぬような人じゃない!」

「あなたも気づいているはずよ!自分の力に!あなたの力は魔王を倒すために必要なの!」


 魔狼の声が頭の中に流れてくる。

 僕が死んだって、世界は変わらない……ただの農民だから……

 こんな僕に勇者の力が与えられたのはなんでなんだろう。それだけでも知りたかったな……

 勇者か……今思えば、ロイヤルナイトよりもかっこいいな。もし、生まれ変われたら、その時は勇者に……

 視界が薄れていく。


「なんだこいつ?死んだのか?まっ、念のためにとどめは刺しておくか」


 魔族が刀を引こうとした。


「ライトぉぉぉおおお!!」


 その瞬間!


「なんだ!?」


 凄まじい金属音がした!

 生きてる?一体何が起こったんだ?

 血のせいで視界はっきりしない。が、彼には何が起こったのか、一瞬にして理解できた。


「あれは?!」


 そこには、村長からもらった刀があった。

 

「俺の刀が魔素化しただと?!」


 刀が浮いている?しかも戦ってるだなんて。


「ライト!」


 魔狼の声だ。


「いい?ライト今から言うことをよく聞きなさい!」

「あなたはあなたの力は勇者様の力と同じ!たとえ農民でも、きっとあなたには勇者様の意思が引き継がれているはず!」


 勇者の意思が引き継がれている?


「今こそ覚悟を決めなさい!そうすれば、あなたは真の力をてにいれることができる!」


 僕は勇者?

 僕が勇者?

 だって僕は農民のはず……いや、今はそんなことはどうだっていい。

 僕に足りないのは覚悟。

 もし僕が本当に勇者なのならば、きっと神はきっと力をくれるはずだ。

 僕には守らなければいけない人たちがいる。

 いや、僕にしか守れないんだ。だって僕は……


「――勇者――なんだから」


 突如白い光が、天から雷のごとくライトに落ちてきた。


「次から次へと!どうなってんだ!」

「痛みが……なくなってる」

「それに体も軽く……」

「お前は瀕死の状態で倒れてたはずじゃ!?」


 危険を察知したのか、思わず後ずさりしている。


「なんだこの感じは?無限にパワーが湧き出してくるような」

「ステータスを見てみよう」


 体力が132

 魔力が110

 攻撃力が57

 守備力が64

 素早さが34

 神聖力が……91?!

 神聖力が3倍以上に増えてる!


「それにこのスキル……」


 スキル 勇者の意思

 Lv.1 ホーリーショット...神聖力を相手に向かって放つ(魔素にのみ有効)

 Lv.2  神 の 羽 衣...常時神聖力を纏う


「新しいスキルが追加されている」

「よそ見するとはずいぶん余裕なっこった!」


 魔族のこぶしが迫ってくる。

 間に合わない!

 避けようとするが、顔をかすってしまった。


「っ!かすっただけでこの威力……油断はできない!」


 すぐさま刀を呼ぶ。

 なんだろう?まるで戦ったことがあるかのように、体が勝手に動く!


「ぐっ!ぐあああぁぁぁぁぁぁああ!!」


 突如魔族が叫びだした。

 

「か、かだがああああああああ!」


 いきなりどうしたんだ?!

 急いで距離を取り、構える。

 どうなっているんだ!?魔族が魔素化を始めている。


「俺が死んでも……いずれお前は殺される!」

「せいぜい……あがいて……み……ろ……」

 

 そう言うと、魔族は跡形もなく消え去った。


「なんだったんだ……今のは」

「あっ!それよりも!」


 急いで魔狼のもとへと駆け寄る。


「どうしよう!回復魔法が使えれば!」

「ライト。倒すことができたのね」

「魔族の攻撃のせいで神経が魔素に汚染されてるみたいなの。ライトの浄化で魔素にを取り除いてくれないかな?」

「わかりました!」


 魔狼に手を当てると。


「浄化!」

「……どうですか?」

「ありがとう」

「しゃべった!」


 それは、脳にではなく直接耳から聞こえた。


「ヒール!」


 魔狼の傷がどんどん治っていく。


「すごい回復力!」

「ふぅ、やっと動けるようになったわね」

「改めてお礼を言うわね。ありがとうライト」

「い、いえ」

「この姿で話すの少し違和感あるよね}


 そう言うと魔狼は姿を変えた。


「ええ!魔狼が人間に!?」

「これはただの擬人化よ。それよりさっきから魔狼魔狼って!私は白狼!魔狼みたいな魔物と一緒にしないでよね」

「すみません……それより、服を……」


 ライトは目をつむっている。


「おこちゃまなのね」


 そう言って、白狼は笑っている。


「服なんてないわよ」

「それじゃあどうすれば!?」

「とりあえず狼の姿でいましょうか」


 するとみるみるうちに、白狼の姿へと変わっていく。


「そういえば、自己紹介まだだったわね。」

「私は、神獣である白狼のネロ」

「僕は、ライトです」

「知ってるわよ。私はライトのお手伝いをするために来たの」

「お手伝い?」

「そう。白狼は勇者に付き添い、ともに魔王討伐を目指すのがルールなの」


 改めて、勇者って言葉を聞くと違和感がある。


「本来、もう少ししてから出会うはずだったんだけど、どうやらあなたの近くに魔族が潜んでるみたいでね」

「それって、もしかしてさっきの?」

「そう。それとあと一匹いるわよ」

「あと一匹?!一体どこにあ?」

「それは、セリア村よ」


 衝撃の発言に思わず目を見開いた。







 

 



            

 

 


 


 


 

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農民なのに伝説の勇者のステータスが与えられた件 希島カツキ @kattuntun

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