第3話 魔狼との出会い

 その日の夜はなかなか寝付けなかった。


「お母さんもお父さんも急にあんなことを言われて、なぜ許可を出したの?」

「本当は行かせたくなかったわよ」

「ロイヤルナイトはライトの小さなころからの夢だもんな」

「どうやらライトは戦闘職らしいじゃないか。条件も満たしているのに止めることなんてできないよ…

「でもねライト、いつでもかえって気いいからね!」

「その時は旅の話をたくさん聞かせてくれよ」

「もちろん!」


 おそらく混乱するのを招くため、僕の勇者のステータスについては黙っててくれたらしい。


「明日の朝出発するらしいわよ。準備しておきなさいね」

「え?もう明日出発するの?」

「らしいわよ」


 ということらしい。

 まだ心の準備ができてないっていうのに。

 でもなんだろう。明日から僕の新しい人生が始まるって考えると、不安もあるけどワクワクの方が大きいな。

 そんなことを考えているうちに、やっと眠ることができた。


「ライト、ライト」

 

 今声が聞こえたような……気のせいか


「ライト、気のせいではないわ」


 ?

 呼ばれているのか?

 目を開けると、そこは真っ暗な世界だった。


「夢……なのかな?」

「ライト、こっちよ」


 よく状況が理解できていないが、とりあえず声のする方へ進んでみる。

 

「なんろうあれ?あそこだけ光に包まれている」


 光に包まれている場所へと足を運ぶ。


「うぅ!うわぁぁぁあああ!」

 

 急に頭が割れるような痛みとともに、白い魔狼の姿が流れ込んでくる。

 魔狼の前には魔族が立っているようだ。


「え?!」


 魔族がいきなり魔狼に斬りかかった!

 魔狼のきれいな白色の毛先が、どんどん赤く染まっていく。

 魔狼が最後の力を振り絞って、魔族に殴りかかろうとした瞬間、夢から目覚めた。


「何だったんだ?あの夢は」


 何かを伝えたかったのかな?どうしてもただの夢だとは思えない。

 ふと窓の外を見ると、外はだいぶ明るくなっている。


「もう朝か。あの夢のこと、長老さんなら何か知っているかもしれない」

「それにしてもいい匂いがするな」


 もう朝食ができているのだろうと思い、部屋を出た。


「おはよう母さん」

「あら、おはようライト。今日はいつもより早いわね」

「父さんはまだ寝てるの?」

「息子とのお別れの日だっていうのに父さんったら」


 用意されていた朝食を食べる。


「まだ少しなら時間あるよね?」

「そうね、お散歩でもしてきたらどう?」

「そうするよ」


 急いで朝食を食べると、早速村長の家へと歩いた。


「おっ、村長さんだ」


 ちょうど村長が家から出てきたようだ。


「村長さん、おはようございます」

「おぉライト。ちょうど今からお前の家へ行こうと思っておったんじゃ」

「村長にお聞きしたいことがありまして。


 今朝見た夢を村長に話した。


「白い魔狼だと?そいつはおそらく神獣だ」

「神獣?」

「あぁ。魔族は魔素からできておるのは知っているだろう?神獣はその逆で、神聖力をからできておるのじゃよ」

「なぜ夢にそれが出てきたんでしょうか……」

「それはわしにもわからぬ。だがしかし、神聖力は神獣と勇者しか使えないと言う」


 神聖力を使えるのは勇者と神獣だけか。僕は勇者なのかわからないけど、神聖力を使えるのは確かだ。何かしら関係があるのかもしれない。


「それよりも、今日お前が通っていく森の地図を渡しておく。この道は魔物は出ないから、お前ひとりでも大丈夫なはずじゃ」

「僕1人だけですか……」

「このくらいで怖気づいとったら、ロイヤルナイトには絶対になれんぞ」

「そうですよね…頑張ります」

「もう準備はできておるのか?」

「はい」

「そうか。なら父母に別れの挨拶をして来い」


 村長に言われ一度家へと戻った。


「母さん!僕ももう出発しなくちゃ」

「もう出発するの?待ってお父さんを起こしてくるから」

「大丈夫だよ。疲れてるんだろうから寝かせてあげて」

「わかったわ。ライト絶対に帰ってきてね」

「もちろん。それじゃ行ってくるね!父さんにもよろしく伝えといて」

「いってらっしゃい。頑張ってね!」


 急いで長老のところへと戻る。


「挨拶は済んだようじゃな」

「はい」

「では森まで行くとするか」


 村長の後を追った。


「ここじゃ。ここから先はお前1人で行くことになる」


 こんなところがあったなんて。

 薄気味悪いところだなぁ。今にも魔物が出てきそうな感じだ。


「では、行ってきます」

「頑張るんじゃぞ」


 そう言って、森の中へと入っていった。

 にしてもこの森静かすぎるよ。

 妙に静かなのがこの森の気味の悪さを際立てていた。


「あんなところに水たまりが。湧き水でも流れてるのかな?」


 そう言って、水たまりに近づくと。


「うわっ!!」


 突如水たまりが飛びかかってきた。


「何なんだこいつ?!」


 どろどろとした体が動いている。


「もしかしてスライムなのか?」


 だけどそんなことありえるの?村長さんは確かに魔物は出ないって。

 そんなことを考えている最中にスライムがまた飛びかかってきた。


「いてっ!」


 ダメージを負ってしまった。くそ!体中がズキズキする!


「ステータスを表示!」


 体力が減り続けている。ん?そうか毒をくらったのか。

 急いで持ってきておいた解毒剤を飲む。


「ふぅ。どうやら毒状態は治ったようだ」


 てかスライムが意外と強いんだけど!油断してるとやられてしまう!

 どうやって倒せばいいんだ?


「そういえば!」


 急いで刀を取り出す。


「これさえあれば!」


 刀をもって素人の構えをとる。

 次にあいつが飛びかかってきた時がチャンスだ。

 しばらくにらみ合いが続く。

 

「来た!」


 スライムが飛びかかってきた。


「ここだ!」


 タイミングを見計らって、刀を大きく前へ振る。


「やった……のか?」


 真っ二つになたスライムはだんだん魔素へと変わり、静かに消えていった。


「はぁぁぁぁ。スライム一匹にここまで体力を削られるとは」

「ステータス表示」

「あっ!レベルアップしてる!」


 レベルアップしたせいなのか体力は全回復している。

 それぞれ能力値が5ずつ上がってる。

 レベルアップしたことによって能力値が上がっているようだ。

 

「とりあえず早めに行った方がいいな。いくらスライムでも危険すぎる」


 森の中を走っていく。

 かなり距離は進んでいるはず。あれ以来、魔物にも一度も出くわしてないし。

 

「なんだあれ?人?人が倒れているのか?!」


 急いで駆け寄るとそれは人ではなかった。


「え?!魔族?!」

「なんでこんなところに魔族が?」

 

 奥にも何が白いものが。

 ゆっくりと近づくと。


「こ、これって……」


 そこにはなんと、今朝夢で見た白い魔狼が倒れていた。





 

  





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る