はるか とおき かほり…。

宇佐美真里

はるか とおき かほり…。

「昼間、懐かしい匂いと街ですれ違ったんだ…」

僕は薄く黄色掛かった液体の中に浮かぶ氷をグラスの側面に当てて、カラカラと音を立てながら言った。

「そして昔の記憶が甦った…と云うわけですね」

カウンターの向こう側で、ひとつずつグラスを丁寧に磨きながらマスターは言った。

「そう。二十年以上昔の記憶がふいに…ね」

「そうやって記憶が甦ることを"プルースト効果"(注①文末参照)と謂うらしいですね」

「プルーストって、作家の?」

「そうです。マルセル・プルースト。『失われた時を求めて』でしたか…。お読みになりましたか?」

「いいや。読んだことはないね。随分と長い小説だった様な…」

「大長編です。まぁ、私も手にしたことはありませんが…」

そう言うとマスターはまた黙って、グラスを磨き続けた。僕にとって丁度好い間合いを保ってくれるのが心地良い。歳の頃は僕と然程変わらないのであろうが、僕は彼の正確な歳は知らない。それでも僕が彼の店…この店に足を運ぶようになって…もう三年は経っただろうか。第二のリビングルームかの如く、隅の席で僕は、時にくつろぎ、時にカウンターで"書き物"をさせて貰っている。


僕は着ているジャケットのポケットから、ライターと幾分軽くなったタバコの箱…ホープライト(注②)を取り出し、箱の蓋を引き出して開ける。箱の中には四本のタバコが収められていた。黙ってマスターがガラス製の灰皿をカウンターの上に置いてくれる。

法律(注③)が変わり、タバコを喫う場所もめっきりと減った。それでもまだまだ他の国々に比べれば、規制は緩い方なのだろう…。

僕は火を点けて、ひと息喫い込む。一本分軽くなったその箱とライターを重ねて灰皿のすぐ脇に置いた。


「この二十年、あの匂いを嗅いだことはなかったよ…一度も」

「そんなに珍しい匂い…。香水ですか?」

「そう…フレグランス。オー・ド・パルファム…」


*****


初めてその香水を嗅いだのは、二十数年前。

それは…やはり、今僕が居る様な当時行きつけの小さなバーでのことだった。

当時、まだ"音楽家"としては駆け出しだった僕は、小さなインディペンデント映画の音楽を幾つか担当させて貰う程度で、取り立てて忙しいわけでもなかった。借りていた部屋から、それほど遠くないところにある小さなバーのカウンターを"デスク"として使うことを、その店の初老のマスターは何も言わず温かい目で許してくれていた。

ある日、いつもと同じ様にカウンターで、白紙の譜面にペンを落とすこともままならず、グラスのブルドッグ(注④)ばかりが減っていく最中、ドアベルを鳴らして、"その人"は現れた。


「いらっしゃいませ」

"その人"は、カウンターの内側に居る白髪のマスターに軽く頭を下げて言った。

「こんばんは…」

全身黒の…シンプルではあるけれど、よく見ると細部が割りと凝ったデザインの緩やかなワンピースを"その人"は纏っていた。

じろじろと観察するように視線を遣っていた僕に気付いた"その人"は、僕にも軽く頭を下げた。どれほどじろじろと眺めていたのだろう…と気不味くなりながら僕も同様に頭を下げた。


*****


「その方が付けられていた香水だったのですね…今日再会した香り…」

マスターが言った。

「そう…」


*****


その日、カウンター一番奥の"定位置"に陣取っていた僕と、入口に一番近い席に座った"その人"とは、会話を交わすこともなかった。

作業にひと区切りつけて、カウンターの上に広げていた…半ばほどまでしか埋まらなかった五線譜数枚をまとめて鞄に入れ、僕は立ち上がった。

「マスター、ごちそうさま…」と出入口まで来て、"その人"の後ろを通り過ぎる時、初めて僕はその香りに触れた。

初めて触れる"妖しげ"…とでも謂ったらよいのか?それまで体験したことのない感覚。スパイシーな香り…。もちろん麻薬など経験はなかったけれど、正に"麻薬のように…"とでも形容するのが相応しい刺激的で、かつ優しくもある香り。説明にけっして容易くはない香りだったけれど、それでも嫌ではない香りが鼻腔へと届いてきた。

"その人"は振り返り、再度、僕へと頭を下げた。僕も歩きながら頭を下げ返し、店の扉を背にして家路についた。

香りが記憶として、僕の中に刻まれた瞬間だった…。


香りについて全く知識もなく、パルファム、トワレ、コロン…その差(注⑤)についても無頓着だった。

『ロードゥ・イッセイ・オードパルファム』(注⑥⑦)。当時交際していた女性のひとりがつけていた香り。その香りが僕の唯一知っていた香水の名前だった。

その日体験した、"その人"の纏っていた香りは、今まで知っていたそれとは対極にある様な香りだった…。それも深く僕の中に刻まれた理由のひとつだったのかもしれない。


後日、僕は再び店のカウンターでブルドッグを片手に、先へと一向に進捗を見せていない五線譜を広げていた。

「この前の女性…」

カウンターの内側でグラスを磨いているマスターに、僕は訊ねた。

「初めて見掛けたけれど、よくいらっしゃるんですか?」

頭を綺麗に白くさせた初老のマスターはニコリと笑って答えた。

「えぇ…。先日は久し振りにお見えになりましたが、いらっしゃるようになってからは随分と経ちますね。気になりますか?」

まだ二十代だった僕を、下品にならない様に気を遣いながらも、マスターはからかって言った。

「ええ…。雰囲気のある方だったから、気になって…」

百戦錬磨のマスターを相手に、誤魔化そうとしても必ずボロは出るだろう…と、僕は正直に"人生の先輩"へと答えた。

「あの方も…貴方が帰られた後に、貴方のことを訊ねてらっしゃいましたよ?」

「本当に?どんなことを訊かれたんですか?」

思わずカウンターに乗り出してしまった僕を、マスターは笑った。

「何をなさっている方なのか…と。失礼ながら"音楽"をされている方…とだけお答えさせて頂きました」

微妙な回答だな…と正直、僕は思った。

"バンドマン"とでも思われたとしたら、"その人"のせっかくの"好奇心"も萎えてしまいそうに思ったからだ。バンドマンにも色々とあるけれど、僕はそれとは少し違う。もちろんかつては僕もバンドマンの端くれだったけれど、一応"音楽家""作曲家"として生計を立て始めた頃であったし、そう云う自負もあった。僕は"その人"の反応が知りたくて、マスターに再度「それで?」と訊ねたけれど、「ご自身でご確認された方が好いのでは?」と笑うばかりでそれ以上、答えてはくれることはなかった。


その後、マスターの話によると、"その人"と僕とは入れ違いが続いたらしい。

何度目かのすれ違いの後、ようやく僕が"その人"の姿を目にすることが出来たのは、ひと月近く経過してからのことだった。僕は例の如くカウンターの一番奥の席に陣取って、新たな仕事のために真っ新の五線譜を目の前にしながらグラスを傾けていた。送られて来た映画の台本のページを捲っていると、"その人"が再び現れた。

やはり全身に纏っていたのは黒だった。入口で"その人"が一度立ち止まると、僕に気を遣ってマスターはカウンターの中ほどを掌で指し示しながら「よろしければ…」と言った。"その人"は僕から二つ席を置いたスツールに、腰掛けた。腰掛けながら僕に顔を向け「こんばんは」と挨拶する。僕も同様に返した。


僕は手元の台本に目を落としながらも、"その人"の様子を気にしていた。

"その人"はバッグからマールボロ(注⑧)を取り出し、細く長い指で一本取り出しながら、マスターに「ウォッカトニック(注⑨)をお願いします…」と丁寧に注文した。

「ウォッカ(注⑩)は、アブソルート(注⑪)で宜しいですか?」

「はい…」短くしっかりと、"その人"は答えた。


「アブソルート?」耳慣れない言葉に僕は、思わず脇から口を挟んでしまう。

マスターがカウンター裏の棚に並ぶ、数多くのボトルの中からひとつを手に取って教えてくれる。

「ウォッカのブランド名です。元々はスウェーデンのブランドです」

「初めて耳にした気がする…」僕が言うと、"その人"も続いた。

「私は初めて飲んだウォッカがこれだから…。別に拘っているわけではないのだけれど…」

正直、その時…僕は「何だか恰好が好いな…」と思った。まぁ、そう言う自分もいつも同じウォッカでブルドッグをお願いしていたわけだけれど…。

「こちらの方はいつもスカイウォッカ(注⑫)なのですよ…」マスターは棚にあるブルーのボトルを指して言った。

「綺麗なボトルですね…」"その人"は言った。

何を思ったのか僕は、危うく「貴女も…」と気取った言葉を口走りそうになり、慌てて手元のブルドッグを口にして誤魔化した。何故その時、そんなキザな言葉が脳裏に浮かんだのか…。今以てしても分からない…。


*****


「素敵な方だったのですね…」

「そうだね…。素敵な人だった…」

二十年前の甘やかな記憶を辿りながら、僕は二本目のホープライトに火を点けていると、マスターが言った。

「お代わりされますか?何ならアブソルートでお作りしましょうか?」

"その人"の好きだったウォッカを、僕はこれまで一度も口にしたこともなかった。

「好いアイディアだね。一度も試したことはなかったよ…。何故だろうか?」

「かしこまりました…」

マスターはアブソルートのボトルを棚から取り出して僕に見せてくれた。


ゆっくりと深く煙を喫い込み、再びゆっくりと吐き出すのを二度繰り返す間に、マスターが目の前のコースターに乗る氷だけとなったグラスと引き換えに、新たなブルドッグを置いてくれた。

「"その人"のタバコの喫い方が、それが何処か…美しかったんだ…」

「そういう方、たまにいらっしゃいますよ…。嫌味でない…」

「そう。正に嫌味でない。何が…と訊かれてもはっきりと説明は出来ないけれど、ちょうど良い感じ…とでも謂ったらいいのかな…。とにかくちょうど良い」


タバコを持つ指…。浅過ぎると何故か嫌味っぽく映る。かと謂って、深く持ち過ぎると今度は途端に野暮ったくなる。僕自身、どう謂った感じでタバコを持っているか…そんなことは特に意識したこともないけれど、"その人"のタバコを持つ仕草、それを口元へと持って行くまでの流れ、喫い込んだ後にふっ…と吐く煙の角度、量…何もかもが完璧なバランスだった…。

少なくとも当時の僕にはそう映っていた。


当時、別れて間もなかった交際相手もタバコを喫っていた。その女性の喫っていたのはセーラム・ピアニッシモ(注⑬)。その時代、今ほどに"嫌煙"について煩くなかった時代、多くの女性が巻きの細いタバコを喫っていた。僕自身が喫煙者だったこともあり、交際相手がタバコを喫うことに抵抗は全くなかったのだけれど、僕はその女性のタバコを吸う仕草が、実はあまり好きではなかった。やはり何処が?と問われても具体的には説明出来ないのだけれど、兎に角あまり好ましいとは思っていなかった。当然それを口には出来なかったし、することもなかった。


「そういう方も、いらっしゃいますね…正直なところ」

マスターは小さく笑いながら繰り返して言った。


*****


そうして僕と"その人"は、その後も何度か店で顔を合わせることとなり、隣同士で腰掛けるほどには親しくもなったけれど、約束して会うことは一度もなかった。

「今夜辺り、会えるかもしれない…」と"当て"をつけ、カウンターに五線譜を広げながら待つことはあっても、会えず仕舞いと云うことも多かった。それでも、いや、それだからこそ、"その人"が店に顔を見せた時、僕は嬉しくなった。


"その人"は、いつも黒い服を纏っていた。

初めてその姿を見た時と変わらず、シックなイメージではあるけれど、ところどころにアバンギャルドを感じさせる…そんなデザインの服が多かった。、色は常に黒…。

「いつも黒い服なんだね?」何気なく僕は言った。

「これでも何年か前には、オレンジ色に髪を染めて、派手な服を着ていたりしたんだけれど…」と、少しだけ恥ずかしそうに昔を懐かしみながら、"その人"は言った。

「いつも同じブランドの服なの?」

知り合いにアパレルで働く者が多かった僕は、知らず知らずの内に幾つかのブランドの名前を記憶する様になっていた。もちろんそれは、有名な幾つかだけに限られていたのだけれど…。

「コム・デ・ギャルソン(注⑭)」

詳しくは知らない。それでも名前程度ならば僕も知っていたブランドだった。

そのブランドの店先を通り掛かったことはあると、僕は"その人"に語った。ようやく"その人"との接点を見つけたと思った。とは云っても、その店の独特な雰囲気に圧倒され気後れし、ただただ前を通り過ぎるだけだったと語る僕に、「私も最初はとても勇気が要ったわ…」"その人"は笑って言った。


別の機会に"その人"は言った。

それは僕が"音楽家"だと云うことを"その人"が知った後だ。

もちろんマスターが"その人"に僕のことを語ったわけではない。僕との会話で僕自身が口にしたことだった。

「私、実は少し前からチェロ(注⑮)を習い始めたの」

「チェロって珍しいよね?同じ弦楽器なら、バイオリンの方がポピュラーじゃないかな?」

実際、僕の知人でもバイオリンを習ったことがあったり、我が子にそれを習わせていたりする人も何人か居た。

「ヨーヨー・マ(注⑯)を聴いたの。聴いたことあるかしら?『無伴奏チェロ組曲』(注⑰)?初めて聴いたときに私、鳥肌が立ったの。それで…勿論足元にも及ぶわけではないけれど、私も弾いてみたくなって…」

ヨーヨー・マの『無伴奏チェロ』と云えば、クラシックに明るくない僕でも知っているほどの物だ。当然、耳にしたことはあったけれど、"触り"程度に過ぎなかった。

「クラシックには明るくないんだ…。でも、つい最近、弦楽四重奏については少し調べてみたことはある…その程度。クラシック"の様な"弦楽曲を…と云う仕事の話があったからなんだけれど…」

"その人"は目を輝かせて、僕の話に耳を傾けた。

「ブロドスキーカルテット(注⑱)って知ってる?」

"その人"は頷いた。「有名よね」

そのカルテットがエルビス・コステロ(注⑲)と共演したアルバム(注⑳)を、僕はしばらく前に"勉強の為"に繰り返しプレーヤーに掛けていた。何度も何度も繰り返し聴いていた。クラシックでは僕にとって重くなり過ぎで、本格的なクラシカルな曲調は、当然"仕事"として僕には求められていなかった。ロックと弦楽四重奏の共演…。求められていた仕事の為に、僕はそのアルバムを何度も繰り返し聴いていた。それは結果として、参考"程度"にはなった。

「その人は知らないわ…残念ながら」

ロックとは縁遠い人だった。かつてバンドマンだった僕が挙げたロックスターの名前を尽く「知らない…」と申し訳なさそうに、"その人"は言った。

僕は"その人"の興味を惹いているチェロに絡め、依頼されていた仕事について話せる範囲で話した。


「素敵ね…。貴方の書くチェロの曲…聴いてみたいわ」


密かに"その人"をイメージしてフレーズを探る。幾つかのフレーズが頭に浮かび、その中で最も"その人"にふさわしいと思われるモチーフを基に、鞄から取り出した真っ新の五線譜へと、ペンをサラサラと走らせていった。

すぐ脇でウォッカトニックを飲みながら"その人"は、少しずつ進む並べられていく音符の列をみつめていた。

それは三十二小節の、ほんの短い小品だったけれど、僕が"その人"のためだけに書いた物となった。

「僕は弾くことは出来ないけれど…。弾いてくれたら嬉しいな…」

そう言いながら譜面を、"その人"に渡した。

「何て素敵なのっ!頂いてしまってもいいのかしら?」

僕は照れながら頷いた。

紅潮した"その人"から、フレグランスが微かに香った。

「その香り…」問い掛けた僕に"その人"が答えた。

「コム・デ・ギャルソン(注㉑)…」


*****


「昼間、懐かしいあの香りと街ですれ違ったんだ…」

僕は氷の浮かぶブルドッグを、カラカラと音を立てながら言った。

「そして昔の記憶が甦った…と云うわけですね」

丁寧にグラスを磨きながらマスターは笑った。

「私もその曲を聴いてみたいですね…。今も覚えてらっしゃいますか?」


「あぁ、しっかりと…」

三本目のタバコにライターを近づけながら、僕は言った。

二十年ぶりにあの時書いたチェロの滑らかな調べが頭の中で流れている。

それを弾いているのは、もちろん"あの人"…。



-了-


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■①プルースト効果

特定の香りが、『無意志的記憶』として、それに結びつく記憶や感情を呼び起こす現象。

フランスの小説家マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』に因んで、その名前が付けられた。作品の冒頭、語り手である"私"は紅茶に浸たしたマドレーヌの"香り"によって引き起こされる記憶をきっかけにして、様々な体験が甦る。その描写が元となっている。


■②ホープ・ライト

1957年に日本初のフィルター付きタバコとして発売されたホープの名を継ぎ、通例20本入りが多い中で、ホープ同様10本入りで1992年に発売開始された。

他のタバコに比べ、少し太め、かつ短め。糖分が多く甘い香りのする"黄色種"と云われる葉を主体として、添加される香料には蜂蜜が使用されていた。微かなハニーレモンの味わい。軽やかに甘い香りを感じさせつつ辛味も充分に味わえる。1992年発売当初からワタシは愛飲していたけれど、何度かのテイストチェンジを経て、まろやかな香りが減り辛さがきつくなった…と謂う印象。一時はその味のあまりの変化を嫌って、別の銘柄に浮気していたものの、気付くと再び戻っていたり。

パッケージデザインの弓矢は、神話のキューピッドが持つ弓矢をイメージしたもの。弓矢の色は銘柄によりホープは紺、ライトは赤。後に発売されるスーパーライトは銀、メンソールは緑。

ホープライトのキャッチフレーズは『芯からずぶとい』。1998年以降、店頭ポスターや雑誌広告などで『ホープ』のイメージキャラクターを赤井英和が務めていた。キャッチコピーは『ホープの男。』だった。


■③『改正健康増進法』(2020/04~)バーやスナック、小規模店などの場合は、これまでどおり店内の全て、若しくは店内の一部で喫煙できる。対象となるのはバーやスナック、または2020年4月1日時点で既にオープンしている小規模店(客席面積100平米以下、かつ資本金5,000万円以下)。これらの店では、何れも現在と同じく自由な喫煙が認められる。

バーやスナック、そしてタバコ販売店は『喫煙が主目的』であると見なされたため、今後も『喫煙目的店』、または『喫煙目的室』がある店として保健所へ届け出れば、店内の全て、若しくは一部で喫煙が可能。


■④ブルドッグ

ウォッカをグレープフルーツジュースで割ったカクテル。ロングカクテルスタイル。アルコール度数は10度程度。ウォッカ:グレープフルーツ=1:3が通例。同じくウォッカとグレープフルーツジュースのカクテルで、グラスの淵に塩を盛ったものが『ソルティードッグ』。ブルドッグと比して、ソルティードッグの方が断然有名だろう。ワタシも若い頃、ソルティードッグは知っていたが、ある日、取引先の方が「ブルドッグお願いします」と注文していたのが気になり、「あぁ…ソルティードッグの塩のないヤツですヨ…」とさり気なく答える様子に憧れてみたり。実際に今もよく飲む。


■⑤パルファムとトワレ、コロンの違い

パルファム……香料濃度10%~15% 持続時間5時間~7時間

トワレ…………香料濃度5%~10% 持続時間3時間~4時間

コロン…………香料濃度2%~5% 持続時間1時間~2時間


■⑥ロードゥ・イッセイ・オー・ド・パルファム

 (L'EAU D'ISSEY EAU DE PARFUM)

1992年発表。イッセイ・ミヤケの発表した最初の香水。コンセプトは、ピュアでフレッシュな"水"。その香りは"アクアティックフローラル"。瑞々しく透明感のある爽やかでかつ、優しい香りは正に水の様。白を基調とした三角錐の頂点に球が乗る特徴的なボトル。


※フローラルノート(Floral note)

花の香り、花香調の総称。 香調の範囲は広く、柑橘系の香りのシトラスノートと並び、フレグランスの香りの基本となる。 女性向けのフレグランスや香粧品には、フローラルノートを基調としたものが多い。


■⑦イッセイ・ミヤケ(ISSEY MIYAKE)

三宅一生(1938-)により、1973年パリ・コレクションにでデヴュー(設立は1971年)。

衣服の原点である"一枚の布"で身体を包む、“西洋”とも“東洋”とも違う所謂“世界服”を謳った。布と身体のコラボレーションというべきスタイルを確立。1993年に発表された『プリーツ・プリーズ』は、皺を気にせず、かつ身体にフィット、コンパクトに収納が可能なデザインは代表作となった。


■⑧マールボロ

米フィリップモリスが製造するタバコのブランド。世界的に有名なタバコ・ブランドのうちのひとつ。

当初、マールボロは"女性向けタバコ"として展開。パッケージ上部の特徴的な赤いデザインは、女性の唇を魅力的にイメージしたもの。1960年代に入り、男性向けに戦略変更を行い、『マールボロ・カントリー』のキャッチコピーとともに『マールボロ・メン』として知られるマッチョな男性像を象徴したカウボーイをイメージ定着させた。

ワタシ自身、タバコを喫い始めた頃、このマールボロの赤いパッケージに憧れてみたものの、初めはその味がきつく、マールボロ・ライトを何箱も喫った後に、"昇格"を試みた…と云うナンとも情けない初心者時代を送った。


■⑨ウォッカトニック

ウォッカをトニックウォーターで割っただけの簡単かつ、シンプルなカクテル。シンプルな分、誤魔化しは効かず、ウォッカ本来の味を楽しむことが出来る。ライムかレモンを添えて。ワタシ自身は物足りなさを感じるので、あまり飲むこともない…。そしてワタシはライムが苦手…。


■⑩ウォッカ

ウォッカは、スピリッツ・蒸留酒のひとつ。大麦・じゃがいも・ライ麦などを原料として蒸留した後、白樺の炭で濾過して造られる。アルコール度数は40度前後のモノが多い。味や香りにクセがないためストレートでも飲みやすいのが特徴。

ジン・テキーラ・ラムと並ぶ『4大スピリッツ』として知られ、ロシアなどの寒冷地で古くから飲まれてきたことでも有名。銘柄の種類が豊富な上、先述の通り無味無臭に近いため、様々なアレンジが可能。


■⑪アブソルート(Absolut)

スウェーデン生まれのウォッカ。現地で栽培された小麦を使用して造られる。

アメリカをはじめ世界各国で愛飲され、ウォッカの代表的な人気銘柄のひとつ。何度も蒸留を繰り返すことで、穀物を思わせるリッチで複雑な味わいの仕上がり。仄かなドライフルーツの香りがアクセント。滑らかでクリアながらも芳醇な飲み心地。…とネットなどでは紹介されているが、ワタシはよく知らない。かつて知り合いが愛飲していた。


※4大スピリッツ

4大スピリッツとは、蒸留酒の中でもジン・ウォッカ・テキーラ・ラムの4種類を総称する。それぞれに製法や味、風味が異なり、どのスピリッツを使ってカクテルを作るかによっても、大きく印象が変わる。


カクテルの種類は膨大であり、カクテル初心者にとっては何を選べばいいかわからないと感じることもある。またカクテルの名前が恥ずかしくてなかなか注文出来ない…などという過去がワタシにはある。そんなトキには、ベースとそれに掛け合わせるモノとをそれぞれ伝えれば、大抵大丈夫である。どうもカクテルの名前を口にするのが、「気取りやがって…」と思われている様で苦手なワタシ。「ブラッディマリーを…」などとは恥ずかしさに真っ赤になりそうで言えない。「ウォッカとトマトジュースで…」などと言えれば充分だとワタシは今でも思う。バーテンさんは何も言わずそれで理解してくれるし、周りの客たちも誰も「このキザ野郎…」などとは思ってもいない。自意識過剰なだけである。

4大スピリッツの中でもウォッカベースは、他の4大スピリッツに比べて味わいにクセが少ないため、初心者にもうってつけかと。ウォッカと聞くとアルコール度数が高いイメージもあり、少し敬遠してしまいがちではあるのだが…。実際はそんなコトもない。


■⑫スカイウォッカ(SKYY VODKA)

アメリカ、サンフランシスコ生まれのピュアウォッカ。

4回蒸溜し3回ろ過する、手の掛かる製法で造られる。不純物を丹念に除去、クリアな味わい。ストレートでも飲みやすい滑らかな口当たり。もちろんカクテルベースとしても活躍。鮮やかなブルーのボトルがスタイリッシュでオシャレ♪プレミアムなウォッカだが手頃な価格。

特に銘柄指定などするコトもなく「ウォッカとトマトジュースで…」と恥ずかしながら『ブラッディマリー』を注文していた若い頃、ある店で口にした『ブラッディマリー』がとにかくワタシの口に合った…ので、ナンとなくお店の方に「ナンてウォッカですか?」と確認して知った…と云う銘柄。それ以来のお気に入り。まぁ、他の銘柄と比べられるホドに飲み比べをしたワケでもない…。


■⑬セーラム・ピアニッシモ

セーラム(SALEM)は、米R.J.レイノルズ・タバコ・カンパニーによるタバコのブランド。

ピアニッシモ(PIANISSIMO)は、日本たばこ産業(JT)製造・販売のブランド。もともとはセーラムブランドで販売されていたが、2004年ブランドとして独立。女性向けのタバコの印象が強い。


■⑭コム・デ・ギャルソン(COMME des GARCONS)

1969年に川久保玲が設立したプレタポルテ(高級既製服)ブランド。

1980年代前半、細密なパターンとそれを生かす最小限の色彩…白・黒を中心としたデザインを多く発表し、それまでのファッションの常識を覆したとも評された。同時期に設立された山本耀司率いる『ヨウジ・ヤマモト』と共に"黒"のスタイルを形成し、『黒の衝撃』『東からの衝撃』と、当時のファッション界に旋風を引き起こし、黒を前面に打ち出すファッションが世界的に流行。後に日本では所謂『カラス族』なる言葉をも生んだ。


■⑮チェロ

西洋のクラシック音楽における重要な楽器の一つで、オーケストラによる合奏や弦楽四重奏、弦楽五重奏、ピアノ三重奏といった重奏の中では低音部を担当する。また、独奏楽器としても重要。多くのチェロ協奏曲(チェロ・コンチェルト)やチェロソナタが存在する。ポピュラー音楽に於いては決してメジャーと云うわけでもないが、よく聴くと結構ポップスやロックの曲中でも用いられていたりもする。


■⑯ヨーヨー・マ(馬 友友、Yo-Yo Ma/1955-)

世界的チェリスト。1982年、バッハの『無伴奏チェロ組曲』をニューヨークで録音。その後1994から1997年にかけ再録音を行った。

2009年にはバラク・オバマの大統領就任式典にて演奏。2010年、バラク・オバマより『世界的チェロ奏者』として、大統領自由勲章を授与された。日本ではかつてウイスキーのCMで本人と共に曲が使用されたコトも…。

実際にはワタシ…それほど知っているワケではない…残念ながら。


■⑰無伴奏チェロ組曲

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach/1685-1750)作のチェロ独奏用の組曲。作曲年代は不明。チェリストの聖典的な作品とされている。組曲は以下の6曲からなる。


 ・第1番ト長調 BWV1007

 ・第2番ニ短調 BWV1008

 ・第3番ハ長調 BWV1009

 ・第4番変ホ長調 BWV1010

 ・第5番ハ短調 BWV1011

 ・第6番ニ長調 BWV1012


■⑱ザ・ブロドスキー・カルテット(Brodsky Quartet)

イギリスの弦楽四重奏団。1972年に結成。クラシック音楽のみならず、ポピュラー音楽界においても数多くのアーティストと共演。ビョークやエルヴィス・コステロ、ポール・マッカートニーとも。


■⑲エルビス・コステロ(Elvis Costello/1954-)

イングランドのミュージシャン。

1977年デヴュー。有名な曲として1999年の映画『ノッティングヒルの恋人』(Notting Hill)のメインテーマ曲『シー(She)』があるが、この曲は実は彼のオリジナル曲ではない。(シャルル・アズナヴールの曲)2003年にロックの殿堂入り。


■⑳ザ・ジュリエット・レターズ(The Juliet Letters)

『ジュリエット・レターズ』(The Juliet Letters)は、1993年に発表されたエルヴィス・コステロのアルバム。弦楽四重奏のブロドスキー・カルテットと共演し作詞作曲も共同で行なった作品で、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』にインスパイアされ、ジュリエットに宛てた手紙というテーマで作詞された作品となっている。20曲収録。62分55秒。


■㉑コム・デ・ギャルソン オー・ド・パルファム(eau de parfum)

1994年発表。コム・デ・ギャルソンが初めて発表したフレグランス。

けっして易しい香りではないけれど、感覚を直接刺激される…"薬"(ドラッグ"の様な香り。"毒"の様でもあるけれど、確実に"癒し""優しさ"をも感じさせる不思議な感覚…。忘れようもない香り…。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※

『香りは時に、薬のよう人の肉体に働きかけ、時には麻薬のように感覚を刺激し、気持ちをかきたて、心を奮い起し、ポジティブに強く生きたい人の感性に働きかけます。その瞬間5感に訴えかける刺激的なフレグランス。肉体を包み込みよみがえらせ、疲れを癒し、一日のストレスを解消する。麻薬のような魅力を持ち、一度経験すると中毒症状に、そんな香水を目指して開発されたオードパルファム。

このような思想を伝えるため、香料の60%は天然中抽出成分を使い、アロマテラピー効果を持つ様々なエッセンスを組み合わせ、癒しの感じられる香りを演出しました。シプレ(ガルバナムと呼ばれる木の葉から抽出されたリーフオイルとオークの木に生える苔から採取された香り。甘い蜂蜜系の香りを基調にシトラスやビャクダン(サンダルウッド)系の香りも感じさせる。)にスパイス系の香料を巧みに混ぜ合わせ互いの魅力を引き出しています。』

※※※※※※※※※※※※※※※※※※(公式オンラインサイトより引用)

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