第8話 充実してた

「ちょっ!?仰!?」


遥が何やら言ってはいるがとりあえず無視して歩き続ける。

最初は少し抵抗を見せていた遥も少ししたら俺に従うかのように何も言わずに着いてくるようになった。

そして少し経った頃俺は手を離し遥に謝る。


「ごめん、なんか気が付いたら手を勝手に繋いでた。」


自分でも何故そんなことをしたのかはよく分からない。

気付けば勝手にとしか言えない。


「ま、まぁ幼馴染だし?別に繋ぐくらいは大丈夫。だけど繋ぐ前に一言は欲しかったな。私にも心の準備が必要だから。分かった??」


「お、おう。」


そう遥は言うと俺の手に自分の手を絡めてくる。

俺はみっともなく


「え?」


という声を出してしまった。


「何よ、嫌なの?」

「いや、嫌ってわけじゃないけど」

「ならこのままね」


遥はそういうと俺の手を引っ張って進んでいく。

俺は内心心臓バクバクである。

さっきまでのは気がついたら無意識でやっていたし、手も普通に繋いでいた。

しかし今は遥が知ってか知らずか世間で言う恋人繋ぎという指を絡める繋ぎ方である。

慌てて前を進む遥を見ると耳が分かりやすく真っ赤になっていた。

なんだかそれが面白くて俺も悪乗りしてしっかり手を握り遥の隣に並んで歩く。

久しぶりの幼馴染みたいな行動、それが懐かしくて昔のことを思い出す。

どこに行くにも2人で手を繋いでいた。

幼馴染なら手を繋ぐとかは当たり前。

その日は2人で手を繋いだまま家まで帰った。



家に帰り、自分の部屋に入る。制服のブレザーを脱ぎ捨てリュックを下ろすと俺はベッドにダイブする。

そして今日の充実していた1日に思いを馳せる。

最近は彼氏彼女らしいことはしていなかったが一応莉子と付き合ってはいた。

だからこそなるべく他の女子と必要以上に関わらないように出来るだけ避けていた。

しかしそれから解放され、俺は色々な人と今日だけで話せた。

今まで知らないことも知れたし、何より面白かった。

別れて正解だったなあ。

そう思っているとそのまま眠気に負け、俺は微睡の中に意識を手放した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

彼女と別れた瞬間、大量の美少女ヒロイン達が現れた!~ヒロイン達は彼女になりたそうな目でこちらを見ている~ ごま塩アザラシ @zeo_19390503

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ