第7話 帰路

居たたまれない空気もそう長くは続かなかった。

というのも遥はあくまでバイト中なのである。

俺と榊原さんが来たときはまだ空いている席がかなりあったが、今は部活帰りらしい学生などで店内は賑わいを見せている。

先程から遥もひっきりなしに働いており、俺たちに絡む暇も無さそうだ。


そんなことを考えていたら丁度遥が注文したメニューを運んでくる。

俺の前に置かれたのはハンバーグとドリアと旨味チキン、榊原さんの前にはカルボナーラだ。

俺のは昼飯と夜飯を兼ねているため量が多い。

待ちきれず食べようとした瞬間、遥から耳打ちされた。


「今日私7時にバイト上がるんだけど一緒に帰らない?久しぶりに話したいことがあるの」

「んー、了解。じゃあ終わったら目の前の本屋にいるわ」

「ん……」


何故か遥は少し頬を赤らめ俯き、そのまま店の奥に戻っていった。

その様子を不思議に思ったのか榊原さんが尋ねてくる。


「高橋さんはなんて?」

「あぁ、久しぶりに一緒に帰ろうってさ。まぁ幼馴染みだし家は隣同士だからな。」

「なるほど……。抜け駆けされてはしまいましたが、まぁ今日は一緒にご飯に来れただけ良しとしますか……」

「ん?榊原さん今なんか言った?」

「いえ、お気になさらず」


そして俺たちは談笑しながらご飯を食べ、一時間程で解散ということになった。

会計を済ませ、歩いて数分ではあるが駅まで榊原さんを送る。


「今日は誘ってくれてありがとう」

「いえいえ、出来ればまたご一緒しませんか?」

「榊原さんが良ければぜひ」

「はいっ!ではまた明日」

「うん、バイバイ」


榊原さんは今日一番の笑顔を残し、改札を通り過ぎていった。

その笑顔はとても可愛らしく、自信の頬が少し熱くなった気がした。

咄嗟に少し火照った顔を振り、そして俺はさっき食べたサイジェリアの前にある本屋に向かう。

遥のバイトが終わるまであと15分ほどある。

俺は漫画コーナーの最新作が並べられている場所に行く。

俺はあまり文字を読むのが得意ではない。

アニメは少し見るが、ラノベは読まないタイプである。

だから基本的に俺が買うのは漫画だ。

丁度俺が買ってるシリーズの漫画の最新刊が売られているのを見つけ、少し嬉しくなる。

レジは比較的混んでおり、数分待って買うことが出来た。

満足感に浸っていると、後ろから肩をポンポンと叩かれる。

振り返ってみると細い指が俺の頬に突き刺さる。


「引っ掛かったね」

「はいはい」


そこにいたのは先程約束した遥本人だった。

今の服装は制服。

おそらく学校から直接バイトに行っているので、当たり前と言えば当たり前だ。

しかし美少女×ギャル×制服には手堅い需要があるようで、周囲の男達の目線を集めてしまっている。

それが何故かは分からないが不快に感じた。

遥の手を取って歩き始める。


「えっ!ちょっ!?」


遥がなんか言っているが気にしない。

俺たちは早足で本屋を後にした。

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