第6話 一触即発・犬猿の仲
榊原さんと俺は目的だった駅前のサイジェリアにやって来た。
扉を開けて中に入る。
「いらっしゃいませ~、お客様何名でしょ……」
「しょ?」
店員がいらっしゃいませの挨拶を不自然なところで止まった。
怪訝に思い店員の顔を見る。
店員と俺の目が合い、直後二人とも驚愕する。
「仰っ!?なんでここに!?」
「遥っ!?どうしてここに!?」
月山遥。
一言で言い表すならば幼馴染みだ。
家は隣同士、両親同士の仲もよく、小さい頃から兄弟のように育った。
家族ぐるみで旅行やキャンプに行くこともしばしば、幼稚園から高校まで一緒の腐れ縁でもある。
遥は中学までは真面目といった雰囲気だったが、高校に入った途端ギャル化した。
髪は紫とアッシュグレーを混ぜた感じの名前が分からない色のミドルヘアー、今はバイト中らしいので普段付いているピアスは無い。
非常に整った顔をしており、大きな目に小ぶりな口、左目の下の泣き黒子が彼女の愛嬌を引き立てる。
ちなみに胸はぺったんこである。
とは言えモテることに変わりはなく、俺に「遥ちゃんと付き合いたい!力を貸してくれ」みたいなことを男子達から大量に依頼された。
まぁその依頼は遥に受けるなと厳命されているので受けてはいないが。
とまぁ遥の解説はこのぐらいにしておいてだ。
俺が回想モードに入っている間に何故か遥と榊原さんの間の空気が凍てついている。
「あら榊原さんじゃないですか。今日は何のご用で?出口は後ろでございますよ?」
「誰かと思えば月山さんではありませんか。私は今からここにいる基山さんと“2人”でお食事をしますので早く席まで案内していただけませんか?」
二人とも凄いニコニコしている。
しているのだが、何だこの激しい緊張感はっ……!?
俺は何やら遥の後方に虎が、榊原さんの後方に龍を幻視してしまう。
うん……なんか帰りたい……。
入り口でそんなことはあったものの、今は俺と榊原さんは二人で向かい合って席に座っている。
そしてそこに笑顔ながら額に💢マークのついた遥が近付いてくる。
「お冷やでございます」
俺の前に水の入ったグラスが置かれ、榊原さんの前には何も入っていないグラスが置かれる。
「当店はお水はセルフサービスになります。ふふふふふ」
「あら、ご丁寧にどうも。ふふふふ」
やっぱり二人の仲が何故か険悪である。
空のグラスを置いた遥の口の端はまるで嘲笑うかのようにつり上がっている。
榊原さんは目は笑顔なのだが口が全く笑っておらず、更にこめかみがピクピクと痙攣している。
うん、やっぱり帰りたい……。
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