第5話 放課後
「さ、榊原さん!?な、なんでこんなことを?」
「なんでと言われましても、もうこんな時間なのに基山さんが寝ていらっしゃいましたので」
「こんな時間?」
そう言って俺は教室の前の黒板の上にある時計に目を向ける。
「まだ5時じゃん……って5時!?俺そんな寝てたの!?」
「随分と気持ち良さそうに寝てらっしゃったので起こすのを躊躇ってしまいました。すみません……」
「いやいやいや、榊原さんは何も悪くないって。むしろ起こしてくれてありがとう」
「はい、私も役得でしたので」
「役得?」
そう聞き返すが榊原さんはにこにこと微笑むだけでそれ以上は何も言わない。
よく分からないが、取り敢えず帰ろうと思い立ち上がるとぎゅるると俺のお腹からみっともない音が出る。
今日は昼飯を食わなかったことを今になって思い出した。
美人な榊原さんの前でとんでもない醜態を晒してしまった……。
「お腹空いてらっしゃるんですか?」
「……うん、今日昼飯食えなかったんだよね……」
「なるほど……。あ、そうだ!それならこれから一緒にご飯とかどうですか?」
「へ?」
榊原さんとご飯?
実は前にも1度榊原さんにご飯を誘われたことがあった。
しかしその時はまだ俺は莉子と付き合っていたのでお断りした。
しかし今俺は誰とも付き合っていないわけで問題は無いし、それに誘われてなくても帰りはどこかに寄ろうかと考えていた。
けれど問題はそこじゃない。
「俺は良いんだけど、榊原さんが俺とご飯とか食べてるとこを誰かに見られたら嫌じゃない?」
「嫌?なんでですか?」
「え、そりゃ俺なんかと付き合ってるみたいな噂流されるかもしれないわけで」
「なるほど、ですが私は全然嫌じゃないので大丈夫ですよ?」
「そ、そう?じゃあ行く?」
「はい!」
そんなわけで俺は榊原さんとご飯を食べに行くことになった。
二人で下駄箱まで降り、靴を履きかえて外に出る。
太陽は少し傾き始めている。
「そういえば榊原さん、どこに行くか決めてる?」
「いえ、私実は全くと言っていいほど外食しないのであまり知らなくて……。基山さんが決めて下さって構いませんよ?」
「うーん、じゃあ近いし駅前のサイジェリアとかはどうかな?」
「分かりました!じゃあ行きましょうか」
そんなわけで俺達は二人で横並びになって歩き始めた。
その光景をすれ違う生徒達に凄く見られていたが、二人は気付く気配もなかった。
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