リンゴちゃんの野望

倉井さとり

リンゴちゃんの野望

 リンゴちゃんはあるとき、「大人おとなになったので、仕事しごとがしたいなー」といだしました。まだ子供こどもなのに。


 パパリンとママリンは大人おとななのに、いつも、らくがしたいなー、とおもっていました。ですので、リンゴちゃんにいえのお手伝てつだいをおねがいしましたが、リンゴちゃんは「ノーノー」とって、おこりだしてしまいました。


 リンゴちゃんがうには、もっとおおきな舞台ぶたい活躍かつやくしたいのだとか。リンゴちゃんはかわいいかおをして、いがいと野心家やしんかなのですね。


 ジジリンとババリンはそんな3にんのようすを、「ほのぼのするのー」「それなー」といながら、ながめておりました。


 そんななか、寝癖ねぐせをはねさせたままのネエリンが、2かいからころがってまいりました。みんなからはなしをきいたネエリンは、こういました。「それなら、まちいちばんのぐうたらの、プリンスプリンのところにったげたら」


 ジジリンとババリンは、「あのプリン、もっとダメになるんじゃなかろうかー」「それなー」とこそこそっておりましたが、リンゴちゃんはもういえをとびだしておりました。


 リンゴちゃんは、ころころところがって、プリンスプリンのおいえをめざしました。


 するとおいえのまえで、プリンスプリンが、こまったようにぷるぷるとゆれておりました。


「なんか仕事しごとよこしーや」とリンゴちゃんがこえをかけると、プリンスプリンはこうかえしました。「あ~あ~、それなら~、キャラメルヤマから~、キャラメル帽子ぼうしを~、とってきてくれ~」

 このプリンはいつもぷるぷるしているので、こえまでいつもぷるぷるしているのです。

 リンゴちゃんは仕事しごとをもらえてうれしくなって、ころころとわらいながら、「まかせてー」といました。


 リンゴちゃんは、いつもよりよけいにころころころがって、キャラメルヤマをめざしました。

 紅茶こうちゃのおいけをこえて、かりんとうのはしをわたって、不気味ぶきみいたみどめのもりをぬけ、ころころころころ、ころころと。


 しかし、リンゴちゃんは世界一せかいいち方向音痴ほうこうおんちだったので、いつのまにか、とおくはなれた『アオリンゴのくに』にきておりました。

 リンゴちゃんは、はじめておとずれたそのあおあおとしたくにに、かがやかせておりました。

「おー、ここで一旗ひとはたあげるのもわるくないなー」とリンゴちゃんはって、そのくに会社かいしゃをつくり、社長しゃちょうになってしまいました。リンゴちゃんは、本当ほんとう野心家やしんかだったのですね。


 リンゴちゃんは、ぐうたらのプリンはもちろん、だいすきな家族かぞくのこともわすれて、いっしょうけんめい仕事しごとをがんばりました。


 さいげつがながれ、家族かぞくのことをおもしたころには、リンゴちゃんは、ひと財産ざいさんこさえて、りっぱな大人おとなおんなになっておりました。

 もうわたしがおらんくても、この会社かいしゃはあんたいやー、そうかんがえたリンゴちゃんは、アオリンゴ副社長ふくしゃちょう会社かいしゃをまかせ、家族かぞくのもとにかえりました。


 そして、リンゴちゃんがこさえた財産ざいさんをもとに、リンゴちゃんの一族いちぞくは、数世代すうせだいにわたりさかえましたとさ。


 おしまい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

リンゴちゃんの野望 倉井さとり @sasugari

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ