第21話 結奈の手作り弁当

 結奈と心から繋がったような幸せな出来事を経験した次の日。学校に行くための身支度をしていると、インターホンがなった。玄関の扉を開くと、そこには結奈の姿があった。


「おはよう」


「お、おはよう。どうしたんだ?」


 この歳になって、結奈に毎日起こしてもらうのは流石に恥ずかしい。一応規則正しい生活を心がけるようにしていし、朝食は結奈の作ってくれた夕食の残りを食べるようにしている。

 父さんと母さんが海外に行く前よりも健康的な生活を送っでいる自信がある。

まぁ、全て結奈のおかげなんだけど……


 もじもじと何かを言いにくそうにしている結奈。学校が始まるまでまだ、時間があるので焦る必要はないだろう。


「あの……これ」…


 差し出されたのは綺麗に包まれた弁当箱だ。


「ちょっと作りすぎちゃったから…迷惑じゃなかったらもらって欲しいの」


「えっ……いいのか?」


「うん」


「嬉しい、ありがとうな!」


 喜んで弁当箱を受け取る。昼はいつも似たようなものばかり食べていて飽きてきたところだった。そして何より、昼も結奈の手料理が食べられることが何よりも幸せだ。


「これで昼休みまで頑張れるな」


「大袈裟だよ」


 大袈裟なんかではない。結奈の手料理は本当に美味しい。正直俺の胃袋はすでに掴まれてしまっている。

 心も胃袋も掴まれてしまった俺は完全に結奈の虜になってしまっている。

十年以上も片思いしているんだ、胃袋を掴まれる前から虜になっていたけど……

 一番の問題は結奈が無自覚であるということだ。まったく、恐ろしい幼馴染だ。


「私、学校に用事があるから先に行くね」


「おう、弁当ありがとうな」


 結奈を見送ったあと、急いで出かける準備も終えて家を出た。


 ◆◆◆◆


 楽しみがあると時間の流れが早く感じる。気づけばお昼休みだ。いつものように健吾一緒に昼食を食べる。


 健吾はいつもと変わらずコンビニで買ったパンだ。俺もいつもなら健吾と似たようなものだが、今日は違う。

 意気揚々と今日の朝、結奈からもらった弁当箱を取り出す。


「今日は弁当なのか、珍しいな」


 少しだけ自慢げに弁当箱を開ける。中身は見るからに美味しそうだ。


「旨そうだな。一口くれよ」


「いくらお前でもこればっかりはあげられないな」


「なんだ? もしかして彼女が作ってくれたのか?」


 彼女という言葉で、この弁当を作ってくれた結奈の顔が浮かび、顔がにやけそうになってしまった。誤魔化すように慌てて否定する。


「ち、違うわ」


「その焦り様、なんだか怪しいな……彼女出来たんなら、ちゃんと報告しろよな」


「なんで報告しなきゃいけないんだよ」


「親友だろう?」


「関係ないだろ」


「あれ?」


 いきなり廊下の方を見て疑問の声を上げる健吾。


「どうしたんだ?」


「皇さんが教室に入ろうとしたけど、入らずにどっか行っちゃったんだよ」


「へー、何か用事があったんじゃないか? というかなんで見ているんだよ」


「別に見ていたわけじゃないぞ。ただ、皇さんって目立つだろ?」

「まぁ……」


 あれだけ美少女なのだから自然と視線が引き寄せられるのだろう。俺も似た様なものだ。

まぁ、俺の場合は好きな子を自然と目で追ってしまっているのだが……


「あっぶな、誤魔化されるところだった」 


「何がだよ?」


「お前の彼女の話だよ」


 勝手に話を逸らしたのはお前だろ、って思ったがめんどくさいので黙る。


「で? 誰なんだよ、お前の彼女」


「そんなんじゃないって。いいから食べるぞ。昼休みが終わる」


「はいはい」


 やれやれと言わんばかりに肩をすくめる健吾。

 健吾を無視して弁当を一口食べる。うん、やっぱり結奈の料理は最高だな。

 そういえば……


「最近、智先輩の姿をあまり見ないな」


「なんか練習試合が多かったり、試合が近いみたいで部活が忙しいらしいぞ。サッカー部の奴が言ってた」


 智先輩はキャプテンだったな。

 そんなことを思いつつ、取り留めのない話をしながら箸を進めた。

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恋愛ざまぁ小説を勧めてから、幼馴染みの様子が少しおかしい カムシロ @kamusiro

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