「鬼かどうか、判別してやろうか。ひとつ質問をする」


「その前に、腰から手を離して。おねがい。ぴりぴりして、力が入らなくて」


「俺は、お前のことがきらいだ。付き合うつもりはない」


「う」


「さて。どうなるかな?」


「うわああああ」


「ほら。お前は鬼なんかじゃない。失恋して泣いてやがる。泣く鬼がいてたまるか」


「振られた。わたし。振られちゃった」


「うそだよ」


「う?」


「うそだ。俺は、そんなに恋愛に関して欲求が大きくない。だから、伴侶には恋愛の要求値が高めの人間がいいと思っていた。突然押し倒してくるような人間なら、大歓迎だね」


「でも、わたし」


「鬼か?」


「うん」


「えいっ」


「んっ」


「腰を少し押しただけで力が抜ける鬼か」


「ひいい。ちょっと、ちょっと休憩」


「ほれ。手を離したぞ。これでいいか」


「だめ」


「あ?」


「腰に手を」


「要求が多いな。これでいいか」


「うん」


「俺のこと、好きか?」


「好き」


「まだ、自分のことを、鬼だと思うか?」


「思う」


「えいっ」


「んうっ」


「もういちど訊く。お前は、鬼か?」


「鬼じゃないっ。鬼じゃないからっ。腰を手で押さないでっ」


「よし。それでいい」


「あっもう少し触っててほしい」


「要求の多い鬼だこと」

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陰陽五行、鬼の素顔 春嵐 @aiot3110

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