04 鬼

 抱き抱えられる。


 腰に回った手。


「う」


 思わず、声が出てしまった。


 体勢を、入れ換えられる。わたしが下。彼が上。


「ただの思春期だな」


「え?」


「鬼ってのはな。もっと、もっともっと恐ろしいものだ。身体のかたちも、人より大きく外れた見た目をしてる。遺伝子異常だからな」


「わたしは」


「お前は、名字が鬼ってだけの、ただの女子高生。鬼でもなんでもない。かわいいもんだ」


「じゃあ、これは何。抑えられない、この承認欲求が。性欲が。わたしの中を支配する、あなたに支配されたいという気持ちは。何なの。これが鬼じゃないというなら、これは、これは何なのよ」


「恋だろ」


「は?」


「恋愛感情じゃん、それ。人が好きってことなんだろ」


「うそ。そんなことが」


「相手は誰だ?」


「あなた」


「は?」


「あなたが好き」

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