第7話
僕はひざまずいて、人形の首をだきかかえました。あとからあとから、なみだがぽろぽろ出てきます。気がついてみると、僕はぼろぼろになった馬にむかって、一生懸命に話しかけていました。
「ねえ、もう1回話しかけてよ。もう1回僕を乗せてよ。」
僕はなみだをぬぐうと、そっと馬をかかえて、車に積んで帰りました。
今、馬君はすっかりきれいになって家にいます。その背中には、あの頃の僕のように、僕の息子が乗っています。あの頃、あんなに大きくみえたのは、僕がまだ小さかったからだったのでしょう。息子も僕におねだりをしては、馬君の背中にのっけてもらっています。彼も、あの頃の僕のように、心の中で緑の野原をかけていることでしょう。その姿をじっとみつめていると、窓ガラス越しの夕日をあびて、馬君がほほえんだような気がしました。
幻の馬 OZさん @odisan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
短歌/OZさん
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます