第6話
馬君は、夕日に照らされた野原を走りはじめました。さっそうと、ある時は勇ましく、ある時は軽やかに、どんどんどんどん走ってゆきました。するとどうでしょう。遠くの方に、なつかしい僕のふるさとが、僕の家がみえてきたのです。近所の広場では、子供たちが遊んでいます。みんな知っている子ばかりです。あのなつかしい、おさななじみのよしえちゃんもいます。みんな何をして遊んでいるのでしょうか。おにごっこかな。いやちがいます。わかりました。かんけりです。僕はすっかりうれしくなって、おもわずみんなの方へかけてゆきました。
どれくらい遊んだことでしょうか。ふと気がつくと、あたりはもう、うすぐらくなっていました。あちこちから、
「ごはんですよ。」
と、呼ぶ声が聞こえてきます。みんなもそれにつれられて帰っていきます。
「僕もおなかがすいちゃったな。はやくおうちに帰らなくっちゃ。」
そう思ってふりかえると、馬君が立っていました。
「ねえ馬君、僕を家まで乗せてってくれるかい。」
馬君は、僕を乗せると歩きはじめました。もう、すぐそこに、僕の家がみえています。お母さんのばんごはんのしたくをしている音が、聞こえてきます。
そこで、ふと僕の頭に、
「あれ、僕のあの家は、火事で焼けてしまったんじゃなかったっけ。」
そんな思いがうかんできました。
するとどうでしょう。まわりの景色が、ふいにぼやけてきたではありませんか。
馬君がふりかえると、さみしそうに言いました。
「さあ、もうお別れの時間だ。また君に会えて」、とてもうれしかったよ。」
僕は何か言おうとしましたが、あたりの景色はあっというまにぼやけてしまいました。おどろいてあたりをみまわすと、何かが半分土に埋まっています。ひざまずいてよくみると、馬の人形のようでした。僕は夢中でほりかえしました。
出てきたのは、古ぼけた、ぼろぼろになった馬の人形でした。昔はきれいに布がはってあったのでしょうが、今はすりきれてほとんど残っていません。それに高さも僕の腰ぐらいしかありません。でも、なんだかみおぼえがあるような気がします。一生懸命になって調べたら、かすかに、みなれためじるしが残っているではありませんか。
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