天使タリウル

「ようやく姿を現したか!! 天使タリウル!!」




「愚かな魔王よ……。貴様はここで始末する」




 ギルドは瞬く間に吹っ飛んだ。




「<神による魔力領域マイフィールド>」




 天使タリウルは自身で魔法を展開する。


 このテルイズ全体が見えない空間に閉じ込められた。




「ほう。魔力を使って俺たちを囲んだか……」




「我の魔力、<空間スペース>はどんなものでも囲うことができる。そして、その囲んだ者には確実な死を与える」




 天使タリウルはそう言った。


 彼の声はもう、ハリーさんでは無い。恐怖だった。




「ほう。では貴様らを慕っている人間、妖精は――」




「始末する」




 やっぱりそうだ。私たちはここで死ぬんだ……。




 私はごくりと飲み込んだ。




「なるほど、貴様の答えはそれか」




「愚かな魔王よ、貴様にかくじ――」




「だが、安心しろ。貴様みたいな下級天使に負けるわけがない」




 ケンははっきりそう言った。




 だが次の瞬間、透明の球が彼を覆った。




「ケン!!」




 私はまた呼び捨てで叫んでしまう。




「忌まわしき魂よ、神から送られる聖なる光にて滅せよ……。<神による聖光ホーリーライト>」




 彼を覆う空間が眩く光った。私はそのあまりにも眩しい光に腕を覆う。


 光は一瞬で消えた。そこに彼の姿はいなかった。




「どこにいるの……?」




 私は辺りを見渡した。だが、ケンはそこにいない。




「これで奴はいなくなった……。我は一端天界に戻――」




「誰がいなくなったって?」




 天使タリウルは恐る恐る後ろを振り返る。


 すると、そこには不滅の魔王ケン・アルベルトがニヤリと笑っていた。




「な、何故だ……!! 我は確かにしま――」




「だから言っただろ?? 俺は貴様みたいな下級天使に負けるわけが無――」




「<神による聖光ホーリーライト>!!」




 もう一度天使タリウルは魔法を放つ。魔法は<神による魔力領域マイフィールド>内に広がった。




 私の体が徐々に溶けるのがわかった。


 何故かわからないけど溶けたのだ。




 周りを見渡す。でも、周りが白く覆われてよく見えない。




 私、死んだの??




 と思うぐらい、周りが静かでとても気持ちよかった。


 だが、ここである魔法が聞こえた。




「<魔王による破壊ジ・ブラスト>……」




 その静かな声ですべての視界がもとに戻った。




「な、何故? 我の魔法が聞かぬ!!」




「すまないな……。貴様の魔力が弱すぎるからな……!!」




 ケンは背後から天使タリウルを殴った。


 それにより天使タリウルは地上へと落とされ、地面に大きなヒビが入る。




「お、おのれ……!!」




 天使タリウルは強烈な一発を喰らったものの立ち上がる。だか、立ち上がった側からケンが目の前にいた。




「ぐ、うあああああ!!!」




 ケンは下から天使の顎を殴りつける。


 天使はそこから上空へと向かい、自分の張った<神による魔力領域マイフィールド>にぶつかる。




「まさか、自分の張った魔法が仇になるとはな……」




 ケンは天使のところへ飛んでいき、くっくっくっと嘲笑った。




「ぐぬぬぬぬぬっ!! おのれええええ!!」




 天使は手を上にかざす。


 すると、奴の手から剣を召喚した。




「これは神の恩恵のもとで作られた神剣セントレイズだ。これで貴様には死んでもらう」




 そう言って今度は天使がくっくっくっと笑った。だか、ケンはそのまま




「ふっ!!」




 と口からわざと出して、クスッと笑った。




「お、おのれええええ!!!」




 天使の怒りは頂点に達した。その瞬間、奴はケンに剣を突き出して襲いかかる。


 でも、ケンはそれを難なく半身だけで交わした。


 天使は<神による魔力領域マイフィールド>に勢いよくぶつかった。


 周りに魔力の塵がばらまかれる。






 そして、再び天使タリウルはケンに目に追えないスピードで何回も、いや何百回も襲い続けた。




 ケンはその度に避けているのわかった。でも、体の至るところにかすり傷が目に写る。




「貴様は何をしたいのだ?」




 余裕な素振りでケンは天使に問う。


 すると、天使は空中でケンの前を静止する。




「わからぬか? 愚かな魔王め」




「??」




 ケンは首を傾げる。




 すると、天使タリウルはこう唱える。




「嗚呼、愛しき神よ。どうかかの魂に聖なる領域へと誘いたまえ」




「ふん、そういうことか」




 ケンはなにかを悟るも何もしない。それどころか余裕な顔だった。そしてーー




「<神による聖域ゴッドフィールド>」




 天使タリウルはそう唱えた。




 すると、ケンの傷から白い光が生じる。


 そしてケンの体は膨らんでいきーーやがて彼は爆発した。




「嘘……」




 彼の血が雨となって落ちてゆく。私は思わず足を崩した。




 そう、彼は私の目の前で突如いなくなったのだ。

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英雄パーティーに追放された私は世界を脅かした魔王に拾われるのであった 六月 @shimoshiro

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