魔王殺しの尖兵
「すまない……」
ケンがそう口からこぼす。
そう彼が言った先にいるのは安らかに眠っている一人の少女、名はエイミー。ダークエルフだ。
でも彼女はもうここにはいなかった。
私はそんな彼女を見て酷く動揺し、足が崩れた。
「なんで……こんな……ことになったの?」
私は唇を震わせながらそう言った。ケンはこう答えた。
「それは彼女が魔族だからだ」
「でも、なんで……エイミーちゃんは魔族なの?」
私はケンにそう訊いた。その瞬間、私の目から涙が顔を伝って落ちていく。
「レミーは
「それと何が関係があるの?」
「ああ、レミーはきっと魔族に恋をしたのだろう。そしてその魔族への愛が深かったため追い出された。だが、気がかりがある」
私は疑問に思う。
「テルイズは国境を挟んだ町、中立の町だ。そして、この王国に隣接している国は魔族を保護下に置いている。だから、テルイズは本来魔族がいてもおかしくはない。しかし、テルイズには魔族が一人もいない」
ケンはそう言った。確かにそう思う。
でも、私はここで彼に提案する。
「ケン!! あなた、蘇生魔法使えるよね?だったら――」
「無理だ」
私は思いついたあまりに一度は安心した。でも、彼はきっぱりと無理だと断言した。
私は再び落ち込む。
「なんで?」
「エイミーの
私はひどく落ち込んだ。凄く悔しかった。
どうしてこんな小さい女の子が違う種族だからと言って死ななければならないのか。
それはケンも同じだ。
「これを見てくれ」
ケンはそう言って自分の額と私の額を重ねた。
すると、私の頭に誰かの記憶がぐるぐると回った。
「俺たちに何の用ですか? ハリーさん」
これは多分さっき倒したリーダーらしき冒険者の記憶だ。
今、目の前にいる人はハリーさん。
すると、リーダーらしき冒険者にある二枚重ねて依頼書を渡した。一枚目に書いてあったのは前に見せられたケンを殺すように命じた依頼書だ。
「この魔族を殺せ」
「え? 魔王ですか?」
「ああ、そうだ。私が手紙で奴をここに呼んだ。だから、殺せ」
「え、いやでも、その仕事は俺たちに――」
その瞬間、ハリーさんから物凄い重圧がくる。
初めて会った時に感じた重圧いやそれ以上の重圧が押し寄せてくる。
「わ、わかったよ」
そしてもう一つの依頼書を見る。するとリーダーらしき冒険者が少し嫌な態度をとる。
その依頼書に女の子が映っていた。
私はそのときその依頼書に書いてあった依頼者名に驚愕する。
「この女を殺すんですかい?」
「ああ、そうだ。拉致して殺せ。それから殺した後地面に埋めてどこに埋めたか隠すんだ。いいな?」
もう一度ハリーは重圧を出す。
「……わかった」
リーダーらしき冒険者はそう言ってギルドを出た。
それから、彼ら三人と念のために呼んでいた冒険者複数はその夜に決行した。
エイミーちゃんを家から拉致した。
だか、森に行く途中エイミーちゃんは起きたのだ。
エイミーちゃんは彼らから逃げようと走った。
でも、彼らの方が上手でその結果、命の根幹たましいもろとも光によって滅せられてしまった……。
私たちはギルドに帰った。
「エイミー……娘は見つかったんですか!?」
咄嗟にレミーさんは私たちに駆け寄った。
でも、レミーさんの足は崩れてしまっていた。
それはケンがエイミーちゃんの亡き姿を抱き抱えていたからだ。
「そ、そんな……」
レミーは一粒、一粒涙を溢してゆく。
そんなレミーさんに私は見てられなかった。
「ミカ。エイミーを頼む」
「……うん」
ケンはエイミーちゃんを私に渡した。
そしてーー
「どう言うことだ!? ハリー・テルイズ?」
ケンはハリーの机を叩く。
「さて、一体何のことでしょう?」
「惚けるな、貴様がエイミーを殺せと言ったのだろ?」
「はて、あなたは何を言ってーー」
「自惚れるな!! ハリー・テルイズ!! いや、天使タリウルとでも呼べばいいのか?」
その瞬間、ハリーはニヤリと笑った。
そして、ギルドの屋根が吹っ飛んだ。
私たちは見てはいけないものを見ていた。
その翼は神々しく美しく、そして同時に絶望と恐怖を味合わせた。
神より魔王殺すため生まれた尖兵。
ーーその名は天使。
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