少女の居場所 後編

「ひゃああっはっは!! これで魔王が死んだぞ!! これで俺たちは英雄だ!!」




 嘘……。なんで?




 私の頭はそれだけでいっぱいになった。




「あなた達? まさか……ケンの正体……知ってたの?」




 ショックで口が震えた。でも、出た言葉はこれだった。


 リーダーらしき冒険者は面倒くさそうに




「ああん? それが依頼クエストだからな。『魔王ケン・アルベルトを殺せ』っていうイ・ラ・イ!!」




 と言って彼の顔が載っている依頼書を私に見せびらかした。




「さて、どうします? リーダー?」




 双剣の冒険者はそう言った。




「どうするって何がだ?」




「だからこの女ですよ!! この女を今ここで殺すか、拉致って楽しむかですよ!!」




「そんなもん、拉致るに決まってるだろうが!! ひゃああっはっは!! っておい……何やってんだ? 女」




 私は立って彼らにいつも常備している剣を突き出す。




「おいおい、お前が俺らに勝てると思ってんのか? 魔王を倒したお前に?」




「そんなの……関係ない……。私は……ただ……恨みを……晴らしたいだけ……」




 足が震える。




「ほう。いいじゃねえか……。そういう女、嫌いじゃないぜ!!!」




 リーダーらしき冒険者が私に襲ってくる。私は剣を持った状態で構えることしかできない。




 助けて!! ケン!!




 私は彼を信じた。の魔王を信じて、目を閉じた。




「ぎゃあああああああ!!!!」




 私は目を開ける。すると、リーダーらしき冒険者が腕を押さえながら悶えながら倒れていた。だが、その腕は誰かが持っていたのだ。




 私は腕を持った青年の名を口にする。




「ケン!!」




 私の目から涙がこぼれた。


 彼がいない間、とてつもなく不安だったこと。そして、彼が生きていることに涙が流れたのだ。




 すると、リーダーらしき冒険者がこう口に出した。




「お、お前!! なんで生きてんだよ!!」




「お前らに答える義理は無い。それより貴様ら、よくも俺の女に手を出そうとしたな?」




「あん!! 別にいいじゃねえか!! それよりお前、その女はただのパーティーメンバーだろ!? 俺たちにだってたの――」




「黙れ」




 その瞬間、彼からまたを感じた。


 他の冒険者が恐れだす。そして、リーダーらしき冒険者がいつの間にか気絶していた。




「おいおいおいおい、これはまずいぞ!! 逃げろおおおお!!」




 双剣の冒険者ともう一人、黒いコートを羽織った魔術師が走り出す。だが……




「お前か? 俺に雷を撃ったのは?」




 走ってる魔術師にケンが追いついた。そして、




「<魔王による黒雷ジ・スパーク>」




 ケンはそう唱えた。すると、上空から黒い雷が魔術師に直撃する。


 魔術師は「うっ!!」と悶えながら倒れた。双剣の冒険者は彼が倒れたことで足が止まる。




「さあ、貴様はどうするか?」




「おい、まさか俺にまで何もしないよな?」




「ああ、何もしない」




 ケンは彼の額を人差し指で少し置く。そして、




「<魔王による毒ジ・サリン>」




 と唱えた。双剣の冒険者は「へ?」と腑抜けた声を出した。


 だが、双剣の冒険者は突然苦しみだした。




「うっ! ううっ!!」




「ああ、大丈夫だ。死にはしない」




 そう言ってケンは私のもとに戻ってきた。








「よう、心配かけ――」




 私はケンに抱きつく。




「何をしている?」




「それは私のセリフよ!!」




 そう言って私は彼のぬくもりの中で涙を流していた。




「すまなかった。俺は別にあのぐらいなら死なないのだが……心配をかけてしまった。本当にすまない」




 ケンは私の頭を撫でる。




「本当に!! 心配したんだから!!」




 そう言って私は号泣した。








 やっと収まった。




 ケンは抱きついていた私を引き離す。




「じゃあ、エイミーを見つけようか」




「え、でも、まだ何も情報が――」




「大丈夫だ。もうどこにいるのか知っている」




 ケンはそう言って一歩、歩き始めた。私は何もわからない状態だったけれど彼がそう言うのならとまた彼を信じて彼について行った。








「着いたぞ」




 そうケンが言った場所は森の真ん中だった。




「どこにいるのよ?」




 私は彼に聞いた。でも彼は




「そこに眠る器よ、母なる大地に浮上せよ。<魔王による念動ジ・キネシス>」




 と詠唱を唱えた。


 すると、地面から見るからに眠っている女の子が現れた。彼女は、もう死んでいる。




 どう見ても魔族だ。




「嘘っ!!」




 私は口を手で覆う。


 彼女は誰かに似るような長い耳を持っていた。




 そしてケンはこう言った。




「そうだ。これは魔族とエルフの間に生まれた、いわばダークエルフ。そして――」




 そう彼女は間違いなくレミーさんの子供、エイミーちゃんだった。

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