正義の味方じゃないんだもんっ!

アリエッティ

誤解しないで..。

 よしっ、今日こそ言うぞ!

..何度も会っている筈なのにこれだけは言えない。なんだか悲しい。


アナタは気付いてた?

私の気持ち。

...ううん、ゼッタイ気付いてないよね

私にとってのヒーローなのに。


彼との出会いは偶然だった

ふとした瞬間、奇跡的な重なり。

これが運命だったなら嬉しいなぁ..!


「様子はどうだ?」

「非常に暴れています。」

「マズいな、彼はまだか?」

「只今向かっている最中です。

それまでどうにか時間を稼ぎます」


私は彼に猛アタックした、積極的って事じゃなくてその..好きって感情が抑えられなかったから。

どうにか気付いてもらいたくて、私の気持ち。アナタへの想い...。


だけどアナタはクールよね、私を見つめる度いつも静かに呟くの。

その声は退屈そうで、直ぐに興味が余り無い事に気がつくんだぁ。


「私はこんなに好きなのに..。」

ねぇ、アナタはどこから来るの?

一体何処に住んでるの?

いつまで

私の手の届く範囲にいてくれるの?

「教えて。ねぇ、パワ..」「撃て!」


複数のミサイルが全身を狙う。


「……!」「よし、怯んだ!」

嗚呼、私はイケナイ女..!

結局は嫌われ者、どこでも同じよ。

〝この星でも〟変わらなかったわね....

「ミサイルランチャー有効!

怪獣ドゴリゲロス、悶えています。」


「引き続き時間を稼げ」「はい!」

私は所詮倒される側の存在、小さい頃からそうだった。


私が生まれたのは荒れたドラムという星、強い怪獣が多くいる星だったから宇宙の中では良く目立ってた。

争いが好きな怪獣たちは日夜暴れ回っては足元のモノを踏み潰していた。


幼稚で無知、破壊する事しか考えていない。こうはなりたくないとおもっていたがそれは同時に、こうなる未来をどうにか否定する足掻きになってた。


「アナタも立派な怪獣になるのよ?」

母にしつこくそう言われた。もうこの星にはいられない、そう思って私は思い切って星を出た。

暖かい場所が必ずある、争わなくていい未来を築ける場所が絶対に。


だけどそれは間違いだった。


「怪獣よ!」「皆逃げて!」「ママ!」

地球という星の〝ニンゲン〟は、私を見て泣いていた。それどころか兵器を使って攻撃してきた。..私はそのときただ立っていただけ、何もしてない。

「やりきれなくて暴れたわ。

ビルを壊して車を蹴って、ヤキ暴れ」


そんなときだった

アナタに出会ったのは。


「トウッ!」「キュン..!」

無口なアナタ、構えた腕からは光線が出てた。痛かったけど、嬉しかった。


「パワフルマン!」「パワフルマンだ」

ニンゲンがそう叫んでた。

初めてだった、殺意ではなく憂いのある目で見つめられたのは。

「何度もアプローチした、だけど彼は鈍感で全く気付かない。」

目隠しをして開けたらビルが業火に焼かれているロマンティックな演出。

なんでも食べ尽くす宇宙植物の花束を贈呈、これも無反応で即光線。

パワフルマンのエネルギーランプを5回点滅させて〝アイシテル〟のサイン

これは結構反応してくれたけど、なんだか彼凄く疲れてた。


「..隊長!

来ました、パワフルマンです!」

「漸く来たか、パワフルマンよ!」


態度で示してもダメ、だから今日はきちんと口で言うんだ。はっきりと、自分の声で伝えてやるんだ!

「トウッ!」き、キタッー!

落ち着け私、ゆっくり、丁寧に...!


「あ、アナタの事が..」「…トウッ?」

はぁ〜緊張するぅ〜!

落ち着け、静かに、丁寧に..。

「ア、アナタの事バァ...!」


「..口にエネルギーを溜めてる?」

「一撃だ、直ぐに終わらせるつもりですよ隊長。負けるなパワフルマン!」


はぁ〜やっぱりやめようかな!?

..いやいや、待て、ここまで来たのよ?

勇気出さないでどうするのっ!

「アナタの事ガァ..!

ス、ス...好きダァァァッ!!」

「トウッ!」


「光線だ!

凄い、なんだあのエネルギーは!?」

「負けるなパワフルマン!」

なんで光線が出るのよぉ〜!!

あ、でもパワフルマンもビームで答えてくれてる。..嬉しいかも。

「光線が弱まった?」

「今だ押せパワフルマン!」


「トウッ!」

え、光線つよくなってる?

「思い通じた?アイシテルって事?」

なんでもいい、私は受け入れるよ。

「トウッ!」


その後、彼は人々の歓声を浴びて帰っていった。私の思いは特に通じていなかったようだ。この日私は少しだけ、積極的なアプローチが出来た。

「もうっ!

鈍感な彼、いつ気付くのかしら?」

私が欲しい歓声はずっと一つだけ。

いつかそれが聞ける日まで、悲しい嫌われ者を演じ続けてみようかな?


「私は暴れる怪獣だけど、アナタは私にとってもヒーローなのよ?」

トウッ。

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