第23話英雄クリュゲス
二メートル近い体躯を誇る男と俺は背中あわせに立った。
クリュゲスは両手で
俺も呼吸を一つ整え、
「盟約により、助勢いたす」
朗々たる声でクリュゲスは言った。
「流星王戦記」では流星王の元で大陸統一に貢献した十二人の将軍の一人、それが彼クリュゲスであった。
物語世界では流星王の十二星将と呼ばれている。
旅を愛するクリュゲスは統一の後、流星王ルキシアに約束ははたしたと言い、王のもとを去る。
流星王はそんな彼のために巡行士という地位を与え、どこにいても王の友を名乗ることを許した。
聖者教団の騎士たちは完全に俺たちを包囲した。
それぞれに戦槌、槍、長剣、中にはモーニングスターと呼ばれる鉄球のついた武器を持ったものもいた。
じりじりとやつらはその包囲網を縮めてくる。
だが、クリュゲスの顔には不敵な笑みが浮かんでいた。
それを見て、俺もにやりと笑う。
彼と背中あわせでいるかぎり、どのような危地も切り抜けられるという自信が沸いてきた。
百戦錬磨の彼となら必ず生き残ることができるだろう。
「いくぜ、巡行士クリュゲス」
と俺が言う。
「おう」
と彼は短く答えた。
まず二人が動いた。
二つの戦槌がクリュゲスの脳天を砕くべく襲いかかる。
まったく、聖職者のくせになんて凶悪なものを持っているんだ。
それに容赦なくやつらは攻撃してくる。
やつらにとって俺たち異教徒は殺しても心はまったく痛まないのだろう。
なぜなら、彼らの教義では信じるものしか救われないからだ。
全知全能なら、信じないものもすくってみろってんだよ。
心のなかで愚痴っていると俺の首筋めがけて、
俺は右手でその皮鞭を掴んだ。
俺とイリシアの間にピンと皮鞭がはる。
ピリピリとした殺気が皮鞭ごしに俺を襲う。
「英霊召喚だと、ふざけた真似を」
奥歯をギリギリと噛み合わせながら、イリシアは言った。
憎まし気に俺たちをみている。
おいおい、片目とはいえ整った顔立ちが台無しだぜ。
「しかし、なんだ貴様は。その
イリシアは一人言う。
そりゃ、異質だろうよ。
七つの物語の
狂気に対抗するには想像力しかない。
「やっ‼️」
短い掛け声とともに大剣をクリュゲスがふるうと 二つの戦槌は真っ二つに折れ、飛び散った。
もう一振し、剣の腹を二人の騎士にぶち当たると後方に簡単に吹き飛んだ。
木葉が散るように簡単に飛んでいき、その騎士たちはぴくりとも動かなくなった。
間髪いれずに長剣を持った騎士が最上段からクリュゲスに切りかかる。
その斬撃をひらりと身をかわし、クリュゲスは大剣の柄でその騎士の背中にしたたかに打ち付けた。
ぐへっと醜い声を発し、騎士は倒れた。
宙に浮いた長剣を掴みとると俺は皮鞭を切った。
千切れた皮鞭は無様に地を舞った。
イリシアは憎々しい表情で俺たちを睨んでいる。
手に残った皮鞭をじっとみつめていた。次にぎろりと俺達を睨む。おお、怖い怖い。
俺は長剣を肩にかつぎ、その殺気に満ち満ちた視線を睨み返した。
「そんなに睨むなよ、せっかくの美人が台無しだぜ」
と俺は先ほどの心の声を口にした。
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