第21話夜明けの決闘
「彼女を頼む」
そう言い、俺は生首だけになったミリアをロイに手渡した。
ロイは穴だらけのブルゾンを脱ぎ、ミリアの首を受け取り、くるんだ。
「いったい、どうしたんだ?手短に説明してくれないか」
さすがにこの展開は俺の予想を越えている。
イリシアとかいう修道女を排除するにしても背景だけでも知っておきたい。
「僕たちはやつら聖者教修道騎士団の襲撃を受けたんだ。やつらは僕らの力を無力化する聖歌をもってるからね。麦穂を刈るように簡単に殺られてしまったよ。強硬派のリーダーであるミリアもこの様さ……」
ロイはぜえぜえと荒い息を吐きながら、そう言った。
「次元の扉の能力を持つ僕だけは逃げ出せたというわけさ……」
涙目でロイは言う。
「はっきり言うとね、僕は友好条約なんてどうでも良かったんだ。でもミリアには恩があった。彼女は混血である僕を貧民街から救いだしてくれた。他の純血たちと同じように扱ってくれた……」
ロイは大切そうにミリアの首を包んだブルゾンを抱きしめた。
「こんなこと言えた義理じゃないけど、お兄さん、仇をうってよ……」
ロイは言った。
「悪いが、そいつはできないな。でも、あの赤毛が俺の行く手を邪魔しようってなら、俺は力ずくでも突破するだけだ」
俺は答えた。
「うん、それでいいよ」
にこりとロイは微笑する。
「バジリスクに乗ってな。あの車の中は安全だ。大人しく呉越同舟しとくんだな」
俺がそう言うとロイは頷き、ミリアの首を抱え、バジリスクに乗り込んだ。
俺は歩みを進め、
眩しいほどの日の光が俺たちを包んでいる。
「ここを通してもらおうか」
俺は言った。
「駄目だな。魔族の首領とあの子供を渡してもらう。魔族には死の裁きを。それが我ら修道騎士団の使命だ」
熱気と殺気のこもった息を吐きながら、イリシアは言った。
「一つ聞く、なぜお前は姫さんたちをそれほど憎むのだ」
俺は狂信的な振る舞いをする女騎士にきいた。
「殺されたのだよ、家族をな。前の魔族の首領レイテにな。奴らは我々を侮蔑し、支配しようとしたのだ。聖職者であった父と母と幼い妹は奴らに殺された。私だけは
そういうとイリシアは右の眼帯をめくった。
眼帯の下は醜く潰れていた。
残る左半面の顔が整っているだけにその傷は醜悪であった。
イリシアは酔っていた。
あの熱のこもった、のこった目は狂気というまずい酒に酔った者特有の目だ。
人間とフェアリージェル、二つの世界の糸はどうやら複雑に絡まっているようだ。
だがらこそ、その二つの世界の困難を乗り越え、姫さんは友好条約を結ぼうとしているのだろう。
約束は必ず果たす、それが俺のポリシーだ。
イリシアにどんな過去があろうとも俺は突き進むまでだ。
「悪いが、ここは通るぜ」
俺は言った。
「通さぬ」
短く叫び、イリシアは後方に飛ぶ。
革鞭を振るうために距離をとったのだろう。
革鞭が空気を切り裂き、俺に襲いかかる。
「切り裂け、
俺はその革鞭を右手で受け止めた。
革鞭の先端が俺の絡み、棘が突き刺さる。
俺は自分の血に命じた。
さあ、本気を出してやろうじゃないか。
「力を貸せ、竜王子アレクシス‼️」
瞬時に俺は自分の血が沸騰するのを感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます