第15話共和国軍本営
平原を俺たちは馬に乗り、疾駆する。
切れるように冷たい風が耳に痛い。
手綱を握り、俺たちは西を目指す。
そこには共和国軍の本営があるという。
俺たちの役目はそこに次席参謀たるパール大佐を送り届けることだ。
当の本人はエドワード・グリーンフィールド伯爵の背中につかまり、ひぁやああと悲鳴にならない声をあげていた。それに反し、嘘つき伯爵ことエドワードは高笑いを浮かべ馬を走らせていた。
俺はというと異世界の美貌の姫君を後ろに乗せ、馬を走らせていた。
背中づたいに姫さんの暖かい体温と吐息を感じる。
悪いが、まあ、これも役得というものだ。
姫さんは振り落とされないように俺の背中に力いっぱい抱きついていた。
この二匹の馬はどこから来たかというとエドワードがあの帝国軍の偵察隊から失敬してきたものだという。さすが嘘つき伯爵、抜かりがない。
まったくそれにしても乗馬なんて学生時代の体験学習以来だ。ということは人生で二度目ということだ。
エドワードは貴族のたしなみということだろうか、馬術は達人なみの腕前であった。俺はというとそんなエドワードの体の動きを見よう見まねで馬を走らせていた。俺の人並み外れた身体能力をもってすれは乗馬などは朝飯前であった。
俺がなぜ驚異的な身体能力をもっているのか。
ここでちょっとネタばらしだ。
実は俺の身体には七つの物語の
その名も竜王子アレクシス。
「最後の竜王子と白色の魔女」の
ソフィアがまだ人間だったころ、智美という名の可憐な少女だった時の話だ。
そういや、あいつは自分のことをボクっていうちょっとかわったやつだったな。
ソフィアこと智美が作り出した物語世界に俺たちは閉じ込められた。
なんと、驚くべくことに物語世界が暴走したのだ。
まだその時、智美が自身の能力を把握しきれていなかったことに起因する。
「最後の竜王子と白色の魔女」に登場する黒色の魔女という
俺たちは主人公たるアレクシスと協力してどうにか現実世界に戻ることができた。
その事件をきっかけに俺は竜王子から「竜の血」なるものを分け与えられ、彼と同じ能力を持つようになった。
「あっ、あそこです‼️」
かん高い声でパールが言い、ある場所を指差した。
その指先の向こうには無数の幕舎が見えた。
「どうどうどう」
手綱を握り、エドワードは馬を止めた。
俺も同じように馬をとめる。
「よしよし、良い子だ。ありがとうよ」
馬の太い首をなで、誉めてやると彼は嬉しそうに鳴いた。
「姫さん、どうやらついたようだぜ」
俺は振り返る。姫さんは若干疲れたようで、俺に頷いた。
俺たちの存在を見つけた何者かが駆け寄ってきた。
ふらつきながら馬から降りるパールにその人物は思いっきり抱きついた。
その様子を横に眺めながら俺は姫さんに手を貸し、馬からおろした。
「パール、パール‼️良かった、良かった。無事だったのね。私、どんなに心配したと思っているの‼️」
その人物は声の様子からして女性のようだった。
「いやあ、ごめんよエレノア。あの人たちのおかげで帰ってくることができたよ」
抱きついた女性の赤い髪をなでながらパールはそう言った。
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