第4話異世界の姫君
目の前に立ち、ブルゾンのポケットに手を入れた少年はへらへらと作り笑いを浮かべ、俺の顔をじっとみつめていた。
グラマーなドレスの女はふらふらと少年の背後で立ち上がる。苦痛のためかもともとの秀麗な顔がひどく歪んでいた。
「ミリア、ここは一時撤退したほうがいいよ」
冷たく、少年はいい放つ。
ここで彼らがどこかに消えてもらえれば楽でいい。無理をしないのが俺のポリシーの一つだ。
俺の目的はまずは明子たちを助けることであって、目の前の集団と戦闘し、壊滅させることではない。
「混血の分際で貴様なにを言っている‼️」
男の一人がそう言い、少年につかみかかろうとしたが、少年に触れる直前に完全に停止した。
少年が強くにらむだけで男は白目をむいて倒れてしまった。
「あんまり僕を怒らせるんじゃないよ」
意識を失っている男の顔に氷のような視線を送る。
口は笑っているが目は笑っていない顔をこちらにむけて、少年は軽く手をふった。
「じゃあね、また会おうよ、お兄さん」
空間にまぶしいほどの金色の魔法陣が浮かび、少年はその中に消えていった。
「わかりました、ロイ。ここはあなたの提案にしたがいましょう」
そうミリアは言い、ふらつきながらもその中へと消えていく。
周囲の男たちも倒れいる別の者たちをかつぎ、次々と消えていった。
まあ、追う必要もないだろう。
俺は振り返り、明子の方に歩み寄る。
「大丈夫か」
と声をかける。
「ええ……」
短く、明子は答えるがかなり苦しそうだ。
見たところ右腕は骨折しているようだ。それに体のいたるところが打撲しているように見える。
「ところで明子、この人は?」
銀色の髪をしたとびっきりの美女に視線を向け、俺は聞いた。
「助けていただき、ありがとうございます。私は異世界フェアリージェルのハイランド王国の第一王女レイラ・ハイランドと申します」
胸元に手を当て、レイラと名乗った王女は俺に軽く頭を下げた。
王女様ね。
確かに気品のある顔立ちをしている。
しかも異世界ときたものんだ。
面白くなってきたな。
俺の記憶が確かなら、明子たちの組織が一枚どころか二枚も三枚もかんでいるのは間違いない。
「明子、まずは病院に行こう。話はそれからだ」
明子の体を抱き上げると彼女は恥ずかしそうに微笑んだ。
「すまんな、剣太郎」
と明子は言った。
明子とレイラ姫をバジリスクの後部座席に乗せ、俺はハンドルを握った。
「ソフィア、近くの病院に案内してくれ」
「わかったわ、剣太郎」
モニターに地図が表示される。
距離的にはそれほど遠くないだろう。
俺は病院に向けて、バジリスクを走らせた。
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