その後
目に涙を溜めた人がひとり、駆け足でアパートから出ていった。
鈴虫が鳴く夜。天気が悪くなりそうで外の人通りはまばらだった。
欲しかった言葉を貰えなかったその人は、駅のトイレで泣き続け、腫れた目で電車に乗って帰宅した。
怒られていたその人はときおり玄関を見つめながら、うずくまってこれまでのことを考えていた。
前日に何があろうとも、夜が明けた次の日はいつも通りの平日だ。
2人とも大学に向かったが、授業で接点のない2人が広い構内ですれ違うことはなかった。
夕方頃、電話が鳴った。
「うん。大丈夫。昨日は本当に......、
うん。うん。えっ。
......。
......そっ......か。わかった。
あ、えっと、その。......ありがとう。
......それじゃあ。」
電話を切り、見上げた空には、カラスが鳴きながら飛んでいった。
喧嘩 あじさ @hdng_bkm
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます