その後

目に涙を溜めた人がひとり、駆け足でアパートから出ていった。

鈴虫が鳴く夜。天気が悪くなりそうで外の人通りはまばらだった。


欲しかった言葉を貰えなかったその人は、駅のトイレで泣き続け、腫れた目で電車に乗って帰宅した。


怒られていたその人はときおり玄関を見つめながら、うずくまってこれまでのことを考えていた。




前日に何があろうとも、夜が明けた次の日はいつも通りの平日だ。

2人とも大学に向かったが、授業で接点のない2人が広い構内ですれ違うことはなかった。

夕方頃、電話が鳴った。


「うん。大丈夫。昨日は本当に......、

うん。うん。えっ。

......。

......そっ......か。わかった。

あ、えっと、その。......ありがとう。

......それじゃあ。」


電話を切り、見上げた空には、カラスが鳴きながら飛んでいった。


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喧嘩 あじさ @hdng_bkm

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