紅葉する森

雨世界

1 あなたに、会いたいな。

 紅葉する森


 プロローグ 


 あなたに、会いたいな。


 本編


 私は君を待っている。ずっと。……ずっと。


 秋の公園


 その日、秋野紅葉は木々が色鮮やかな赤色や黄色に紅葉している、(そのたくさんの木々の葉は、まるで燃えるような赤色や黄色をしていた)家の近所にある秋の公園の中にいた。

 その公園はとても大きな公園で、公園の中に池があり、紅葉はその池の周囲にある道の途中に設置されている白いベンチの上に一人で座っていた。

 紅葉はその小さな耳にヘッドフォンをつけている。

 その旧式の少し大きめのヘッドフォンからは、紅葉の大好きな人の音楽が流れていた。(ラブソングだ)その音楽を聞きながら紅葉は一冊の本を読んでいる。

 その本は『紅葉する森』と言う題名の、真っ白な表紙と裏表紙をしたとてもシンプルなデザインの本だった。

 紅葉は深緑色のセーターをきて、赤色のロングスカートを履いている。首元には真っ白なふかふかのマフラーを巻いていた。

 季節は秋。月は十月の中旬くらい。

 でも、気温は冬の十一月くらいに、朝とても冷え込んだ寒い日だった。

 紅葉はその髪型をいつものように長いポニーテールにしている。そして、やっぱりいつものように、お気に入りの大切な赤色の紐でその綺麗な黒髪をまとめていた。

 紅葉は時折、本を読むことをやめて、栞を挟んで本を閉じて、少しだけ息を吐きながら、澄み渡った青色の秋の空を眺めたりしていた。(そして、読んでいる本の内容をゆっくりと頭の中で咀嚼していた)

 紅葉はその大きな目を秋の公園の中に向けた。

 大きな公園だけど、公園の中にいる人の数はあまり多くはなかった。紅葉の目に見える人は公園の中を仲よさそうに手をつないで散歩をしている老年の夫婦(たぶん)の人たちと、公園の池の上を白いボートに乗って遊覧している若い男女の恋人たち(やっぱり、たぶんだけど)と、それから公園の池の周りの道を走っている、真っ白なスポーツウェアをきた、一人の女の人の姿が見えるだけだった。

 それ以外に紅葉に見えているものは、……紅葉の周囲の空間にたくさん舞っている紅葉した木々から舞い落ちる落ち葉の風景だけだった。

 紅葉の周囲の大地は赤色や黄色の落ち葉でぎっしりと埋っている。

 紅葉が視線を自分の膝の上に下げて、読んでいた紅葉する森の続きを読もうとして、本を開いて栞を指でつまんだときに、一枚の落ち葉が、紅葉の読んでいた本の間に(まるでさっきまで挟んであった真っ白な栞の代わりのように)落ちてきた。

 その落ち葉が本の間に落ちるのと同時に、がさっという足音がして、(その音はヘッドフォンで音楽を聴いている紅葉には聞こえなかったけど)紅葉の視界の中に一人の人の足元が見えた。

 その黒い革靴を履いた、なんだかとても懐かしい感じがする足元を見て、紅葉はゆっくりとその視線を上に向かってあげて行った。


 すると、そこには……。

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紅葉する森 雨世界 @amesekai

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