#2 ゆうじょー

「プハーッ」

毎日毎日働いてはそのご褒美が必要だった。

仕事終わりの酒は最高だ。そして“明日休み”というパワーワードをおつまみに。だらしなく「エヘへ〜」と笑うと左からツッコミを入れられる。「あんたさー、今はあたしの前だからいいけど、もし彼氏とかできたらどーすんのよ。まあ、仕事が仕事だし?当分は作れない環境だけどさ、けど、一生このまんまってわけにもいかないじゃんね」いつもこうやって遠回しに注意を受ける。でも、アタシを叱るのは、愛ちゃんだけだ。愛ちゃんは、いちごミルクキャンディーズのリーダーである姫宮愛花(ひめみや あいか)で、年は自分より5つ上の27歳だった。アイドルグループの面接会場で知り合った仲で、飲み屋さんで再び遭遇した時に素がバレてしまった。丸いテーブルに寿司やビールを並べて、愛ちゃんの家で宅飲みをしていた。しかし、趣味も合わなけりゃ性格も真逆なアタシと愛ちゃんだった。おまけに、私が黒髪ロングぱっつんなのに対し、愛ちゃんは茶髪ゆるまきロングで、ほんとうに色々と正反対だけど、サバサバした性格は馴染みやすいものだった。素で居られるのは気楽そのもので、仲のいい姉妹のようだった。本性を見せているのは愛ちゃんしかいないのだから。つまりは他のメンバーには、上辺だということになるが、別に嫌いな子はいないから仕事はしやすかった。というかそもそも、仕事に好きとか嫌いとか関係ないのだけれど。いちごミルクキャンディーズは、5人で形成されるアイドルグループで、リーダーの姫宮愛花(ひめみや あいか)と、背が小っさくてロリ系の白石桃奈(しらいし ももな)ことももにゃんと、やんちゃ系の野原羊子(のばら ようこ)、そして長身クール系のロシアと日本のハーフである黛ラズリ(まゆずみ らずり)をメンバーに、万人受けするアイドルとして、現在はテレビ番組やドラマ、などでも活躍している。まだまだ上り調子で、これからが楽しみだと周囲に言われているアイドルだ。…アタシはちょいナルシストなところがあると自覚しているが、このアタシがいて売れないわけがないと思ってるし、誰よりも努力している自信がある。だから、誰にも負けたくないんだ。それに遣り甲斐を感じられる仕事は楽しい。こうやって愛ちゃんと話してるのも楽しい。それ以上何がいるっていうんだ?愛ちゃんに、ささやかながら返事をする。「別に、恋人なんて作る必要ないもん。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ネコ♡ドル/猫っかぶりアイドル 鱗雲はねず @odorusorausagi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る