第2章 サンタ・クロースとシャーロット・クロース
第2章 ①『朝のできごと』
冬の朝は寒くて布団が恋しい。なんてことを言っているといつの間にか二度寝してしまって遅刻ギリギリになってしまうので気をつけよう。だけど俺は大丈夫、聖がいるので仮に目覚ましに気づかなくても優しく起こしてくれる。
なんて思っていたのが間違いだった……。
「……はぁ、はあ、ギリギリセーフ」
いつものように布団の中で丸まってダラダラしていて気づいたらギリギリの時間になっていた。いつもなら聖という最終兵器が動き出すのに、今日に限って日直で早くに家を出ていたのだった。
そして今、俺は全力疾走のおかげで何度か遅刻を免れて昇降口にいる。真冬の寒さだというのに汗をポタポタと地面に落としながら靴を履き替える。袖で汗を拭って教室まで向かおうとしたその時だった。
「ギリギリ、セーフ?」
「……俺に聞くなよ」
俺の後ろから似たようなことを言っている奴がいた。知っている声だったので、俺は呆れながら振り返る。というか、この時間を基本的な通学時間としているやつはだいたい決まっている。
「だって、佐倉がいるってことは結構やばめってことでしょ?」
「俺をアウトかセーフの判断基準に使うんじゃねえよ」
桐島菜々子。
俺と同じ一年一組の生徒で、圧倒的リア充オーラを撒き散らす青春ガールである。
茶色い髪は染めているわけではなく、あくまで地毛だと言い張るが実際のところ真実は分からない。髪をくくって横に垂らすサイドテールのスタイルが基本状態である。高校生にしてはスタイルはよくしっかりと出るところは出ており、引っ込めるところは引っ込んでいる。大きく実った双丘はカッターシャツとブレザーに包まれており、ハイソックスを纏った足はミニスカートから顔を出す。ミニスカートが異常に短いところに、ビッチ感が否めない。こいつらこれでパンツ見えたら怒ってくるんだもん理解できねえよ、じゃあ隠せよ。そしたら可愛くないダサいとか言ってくるし。なら諦めてパンツ見せろっつーの。それか「別にあんたに見せるために短くしてるんじゃないんだからねっ!」とか、ツンデレ混じりの言葉でも言ってみろ。なにそれすごい変態。
「あんた、また失礼なこと考えてるんじゃないでしょうね?」
こいつも走ってここまで来たのか、上気した頬は朱色に染まり、ほんのりと赤みを帯びた唇は妙に色っぽい。じりじりと近づいてきてぐっと顔を近づけられた俺は、思わず一歩後ずさる。顔が近い!
「別に考えてねえよ?」
「あんたって嘘つくの下手なのよ、そろそろ自覚なさい。顔に書いてあるのよ? 何度も言うけど、あたしビッチとかじゃないから!」
もうあと数センチで接触してしまうほどの距離まで詰められて、俺は照れ隠しに顔を逸らす。こいつ走ってきて汗かいたってのに、なんでこんないいにおいすんの? 女の子のにおい事情まじでどうなってんのか理解不能。
「だからそんなこと思ってねえっての!」
そういえば、桐島菜々子との出会いもこんな感じだったような気がする。
イケイケリア充グループにいるようなパリピ桐島と、地味めでクラスの隅っこにいるような隅スキーな俺が友達だと言うと驚く人も多い。俺と桐島の出会いを語るには少々時間を遡らなければならない。
具体的には、そう、夏休み前の暑い日くらいまで。
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