ACT 6

 あの戦いから3日が経った。復興に向けて街の至る所で修復作業が行われている。人的被害はゆうに五百人を超えた。ラヴィさんの学校も休みになっている。ラヴィさんの様子はというと部屋で塞ぎ込んでしまっている。無理もない。師匠を亡くしてしまったのだから。私だって悲しみにふれている。しかしそれを許してくれない忙しさだった。落ち着いてきた頃にナージャ様の言葉を思い出して部屋に行き、机の引き出しを開ける。その中には小さな貝殻があった。そして一つの地図のように物が入っていた。その地図を広げると。いくつものばつ印が入っていた。どうやらアトランティスのめぼしい場所に訪れては探していたようだ。この貝殻と地図はあの人の生きた証でありそして本当に死んでしまった証明になったしまった。

 ラヴィさんの部屋に様子を見に行く。コンコンと扉をたたき呼びかけてみる。


「ラヴィさん失礼します。」


 扉を開けて入る。中には布団にくるまったラヴィさんの姿が目にはいった。カーテンも開けておらずに部屋の中は昼間なのに薄暗い。噛み殺しような鳴き声も聞こえてくる。私はどう声を掛けていいかわからずベットに座り抱きしめることしかわからなかった。気付くと私の頬にも涙が伝っていた。


 3ヶ月が経った。少しづつではあるがラヴィさんも元気を取り戻していった。学校にも通えるようになった。そして私たちはナージャ様の頼みを叶えるべく探し回った。しかし手掛かりは全くと言っていいほど見つからなかった。手詰まりを感じながらもすぐに噂を聞きつけては飛んで行った。アトランティス。それは人魚やクラーケンなんかの海の生物たちの国あるとされているがその行き方はどの文献にも載っていない。手掛かりのないまま月日が流れ、ラヴィさんの就任の日が来た。


「緊張するねイーリス。」

「大丈夫ですよ。私も練習たくさんしたじゃないですか。挨拶のスピーチもゆっくり自分のペースを守っていけば大丈夫です。」

「そうだよね。よし!頑張るぞ!」


 緊張の面持ちで幕があがる。開かれた幕とともに歓声が上がる。マイク前までラヴィさんと共に歩いていく。深呼吸して話し始める。


「みなさんこんにちは新金星のクランの王ヴィーナ・ラクルです。私は生まれは南の方にある村で捨て子として拾われました。しかしその村では私の目の赤いことから忌み子としても扱われていました。そんな生活を変えてくれたのは師匠でもあるナージャ様です。私を弟子にしてくれてたくさんのことを教えてくれました。

「でも。もっと一緒にいたいと思っていたけれど半年前の戦いで命を落としました。師匠は私たちや王都に住む人々を守るために命をかけて戦ったくれました。この戦いが終わってからは塞ぎ込む日々が続きました。悲しかったのです。しかしそんな私に前を向くように夢に出てきてくれて叱責してくれました。初めて師匠に怒られました。心配かけてしまって申し訳ないと思うと共にいつでも見守っていると言ってくれてくれたような気がして、そんな師匠のことを誇りに思います。そしてそんな人に私はなりたいと思います。

「短い就任あいさつになりますがこれで終わりたいと思います。ご清聴ありがとうございました。」


 割れんばかりの拍手に包まれながら。深々と挨拶をして席につく。その後はいろんな人の挨拶を聞きながらこの就任式は終わった。

 就任式が終わってからナージャ様のお墓に報告しに行った。2人でお墓の掃除をして報告をした。


「師匠今日就任式が終わった正式にクランの王になったよ。師匠みたいにうまくできるかわからないけど師匠に負けないように頑張るね。あとね報告がもう一つあってね。師匠の頼みかもしれないよ。」

「えっどういうことですか?もしかして見つけたのですか。」

「まだ私の想像を出れてないけどね。それに私の実力も足りなかったし。でも今日ならもしかしたらできるかもしれないって思っているんだ。ついてきて。」


 案内されたのは海が一望できる高台のような場所だった。


「どうやっていくのですか?」

「まぁ見てて。」


 そう言ってラヴィさんは半獣半人の姿に変わる。私も剣の姿に言われるがままになった。そして力を貯め始める。周りにバチバチと帯電し始める。その力を目の当たりにして感じる。実力がこれまでとは比べ物にならないほどに成長している。嬉しさも感じている。しかし方法というのは全くと言っていいほど見当がつかなかった。どうするつもりなんだろう。『紫電雷閃』と呟き、剣を振るう。すると海が真っ二つに割れた。割れた海は戻ることなく割れたまんまになっている。2人とも元の姿に戻り割れた海を眺める。


「こうしたら入り口が開かれるかなって思ったけど当たりだったのかも。」

「よくこんな方法思い付きましたね。」


 話していると割れた海の中から何者かが姿を現した。その体格は山ほどもあり、下半身は魚のような鱗と尾びれになっていた。何者かはすぐにわかった。海王神ネプチューンだった。


「お前かアトランティスの扉を開いたのは。何が目的だ。」

「師匠との約束を果たすため。お願いがあるの。どうしても届けたい物があるの。私たちを連れて行ってくれない?」

「その約束とは?」

「この貝殻を届けるため。」


 高らかに掲げ、貝殻を見せる。その貝殻をまじまじと見る。


「その貝殻はイリアのもの。どうして。」

「それはわからない。でも私の師匠がこれを届けたいって。」

「それについては説明いたします。お父様。」


 突然貝殻から声が聞こえてきた。そして貝殻が震えて泡らしいものが出てきたと思ったら人魚の姿へと変わっていく。その姿を見て驚く。


「イーリスがもう1人いる…。」


 その人の姿は私そっくりだったのだ。


「私たち精霊は信頼を得るためにその人の大切な人の姿を借りますが、今合点がいきました。」

「そうなんだ。ならどうして私の時は姿が変わらないの?」

「もうすでにこの姿で慣れていますからね。」

「そっか。ってあなたは?」

「私はイリアと言います。」


 海王神はその場でなぜか泣いているようだった。


「あなたはどうして貝殻の中に入っていたの?」

「私はずいぶんと前に死にました。この姿も魔法で作られています。最後に故郷の姉妹たちと話せるようにとナージャに託しました。」

「どうして今出てこられたのですか?見たところそんなに長い時間魔法が持つようにないようですが。」

「あなたたちと話したくなってしまったからです。貝殻の中でも外の声は聞こえていました。ナージャはいろんな話を貝殻に向かってしてくれました。あなたはナージャのお弟子さんでしたね。最近の話はあなたのことばかりでしたよ。聞いてくださいますか?」

「聞きたい聞きたい!師匠昔どんな感じだったの?」

「悪戯好きな人でしたよ。ふふ。なら話始めますね。」


 私は海の外側はどんなふうになってるのか知りたくて、夜こっそりとアトランティスを抜け出した。最初の方は海面から外の景色を眺めるだけだったが回数を重ねるうちに近くの海岸や街なんかを見にいくようになっていた。そんなある日私は嵐の海の流れに負けて、どっかの海岸に打ち上げられた。気がついた時に介抱してくれていたのはある男の子だった。私の姿に驚いているようだったが、怪我しているのを放っておけなかったらしい。優しい人っていうのが第一印象だった。水の上に上がれないことを伝えるとその男性は海岸沿いにある洞窟みたいになっているところに案内された。そこにたくさんの食べ物と治療のための薬や包帯を持っていてくれた。名を聞くとナージャというらしい。

 私たちは時間を見つけてはたくさんのことを話した。故郷のこと、ナージャの仕事のこと。ナージャは近くで木こりの仕事をしながら騎士見習いをしていた。


「故郷に帰りたいけど全くわからない?」

「そうなんだ。ここがどこなのかもわからなくて。人の国の地名なんて分からないからさ。」

「そっか。アトランティスの行き方なんて俺も知らないしな。それにお前人魚なんだろ?他の人とかに見つかったら即見世物小屋行きだぞ?」

「わかってるよ。君以外には姿見せてないもん。私もそこまでバカじゃないよ。」

「それならいいけど。わかった。行き方なら俺も一緒に探してやるから。任しとけ。」

「さっすがナージャ。頼りになるぅ。」


 事件はある日突然起こった。私が夜ということに安心し切って海岸まで出て遊んでいた時に誰かに姿を見られてしまった。次の日血相を変えてナージャはそこに来た。


「お前見つかったらしいな。村中人魚が出たって話で持ちきりだぞ。やっちまったな。」

「ごめんナージャ。どうしよう。」

「ここにいても見つかるのも時間の問題から場所移した方がいいな。この洞窟を奥に行くと大きな湖みたいになってるところがある。そこの海底みたいなところにもしかしたら何かしら姿隠せる場所あるかもしれないから探してみてくれ。合図があるまでは絶対に水中から上がってくるな。合図はそうだな。大きな石を2回投げて、小さな石を3回投げる。それを合図に食べ物とか持ってくるから。絶対にそれ以外は出てくるなよ?」

「わかった。ごめんね。」

「落ち込むなよ。そのうち騒ぎも収まるだろうからそれまでの我慢さ。」


 言われた通り奥に行くと湖みたいなところがあり潜っていくと海底付近のところに私1人では余るくらいの横穴が開いていてそこを隠れ家にすることにした。

 ドボンと2回大きな石が水中に投げ込まれ続けてチャポンと小さい石が3回投げ込まれた。少し警戒しながら水面に顔を出すと、ナージャがたくさんの食料を持って来てくれていた。


「ごめん。ここに来られる回数が減るかもしれないから予備の食料あそこの岩陰に隠しておくな。気をつけて食べてくれ。次は3日後とかになるかもしれない。」

「わかった。ごめんね。」

「いいって。絶対に故郷に帰してやるからな。」

「ありがとう。」


 そんな生活が何日も続いた。ある日村の周辺に山賊が来ていることも聞いた。警戒をこれまで以上にするようにとここにくる回数も減らすことも言われた。寂しかったけどここにくる日はたくさんの話ができたのでそれを楽しみにしていた。

 ある日の会話。


「なぁなぁ聞いてくれよ。俺のご先祖様昔王様に使えていたらしくてな。その王国がでっかい戦争に巻き込まれて国が滅ぼうとしているときに俺のご先祖様が救ったらしいのよ。なんでも命と引き換えに強くなれる魔法とかなんとか使ったらしい。信じられるか?子孫の俺たちなんて魔法なんてもの使えないのにだぜ?」

「でも優しい心はしっかり子孫に伝わってるんじゃないかな。だって私のこと助けてくれたじゃない。」

「そういうもんかね。」

「そういうもんだよ。じゃなきゃ私今頃死んでたもん。ありがとねナージャ。」


 恥ずかしそうに頬を掻いていた。そんな彼を可愛らしいななんて思いながら見ていた。この時本気でこの人入れるなら故郷に帰れなくてもいいかななんて思って始めていた。


「おっとそろそろ警備の交代の時間だから行くな。」

「うん。気をつけてね。」

「行ってきます。」


 ナージャを見送って私は水中に戻る。すると、ドボンドボンと石が投げ込まれチャポンと小石が3回投げ込まれた。何か言い忘れたことでもあったのか?疑問を抱えながら水面に顔を出すとナージャではない汚らしい男が立っていた。


「見つけた。」


 急いで水面に潜ったが縄のような物が私の尾ひれをまとわりついてグングンと引き揚げられてしまった。そして頭を殴られそこで意識が途切れた。

 次に気がついた時私はどこか知らない場所の物置小屋のようなところで箱に繋がれて入れられていた。あの男はもしかしたら山賊だったのかもしれない。私たちの約束事を見られていたのだ。助けてナージャ。私は必死に薄暗いその場所で願った。物音がしてそっちの方を見てみるとさっきの男がこちらに来ていた。何人かの仲間も引き連れているようだ。私は怖くてまだ気を失っているフリをして男たちの会話に耳を傾けた。


「宝剣の方はどうなった?」

「今夜の警備は若いおとこふたりだけらしい男2人だけらしい。盗るなら今日だな。」

「しかも人魚も手に入ったんだろう?これで当分は遊んで暮らせるな。ウハウハだな。」


 ナージャが危ない。どうにかして知らせないと。でもどうやって?考えていても答えはみつからなかった。次第に声が遠くなっていったのを見計らって私はこの結ばれている縄をどうにかしようと辺りを見渡す。瓶が近くに置いてあり、これを割ってかけらで縄を切った。切れて自由の身になった私は鱗を一枚剥いで呪文を唱える。これで両の足を手に入れた私は近くにあった布を一枚羽織り、物置小屋から脱出した。しかしここがどこなのかはわからない。とりあえず海の匂いのする方へと走った。すると次第に建物が見えてきた。走ってまわってナージャを探す。その時どこかの家から火が上がった。山賊たちが攻めてきたのだ。急いで探す。声が聞こえてきてそちらの方に向かう。すると見慣れた姿がそこにいた。ナージャだ。


「ナージャ!!」

「ん?イリアか!?どうして。」


 駆け寄りナージャの胸に飛び込む。緊張が解けてその場にがくりと膝をつく。


「足?人間の姿になれるのか?どうしてここに。」


 小声で話す。この姿に驚いているようだ。


「ナージャその子は?見ない顔だな。」

「親戚っす。遊びに来てて。」

「そうか。可愛い子じゃないか隅に置けないな。」

「やめてくださいよそんなんじゃないっすから。」


 顔を真っ赤にしてナージャが言う。私までなんか恥ずかしくなったがそれどころではない。


「ナージャ。山賊が攻めてきてる。家が火事ににもなってる。」

「えっ。本当か」


 すると慌てた様子の人がいろんな方向から火の手が上がったいることを報告に来た。私はこの家事の原因が山賊が絡んでること、山賊に捕まっていて逃げてきたことをナージャに告げた。


「そうだったのか。なら、歩けるか?教会があるからそこに村民みんな避難してるはずだからそこに連れて行く。俺たちは対応に行かなきゃならない。」

「わかった。」


 ナージャの案内で教会まで行く。そこにはもうすでにいろんな人がいた。


「ここで待ってろ。必ず迎えにくるから。」

「気をつけてね。」

「ありがとよ。いってくる。」


 ナージャの後ろ姿を見送った。教会の中にはたくさんの人がいる。小さな子供や妊婦の人。お婆さんまでいる。皆教会の真ん中に立っている像にお祈りをしているようだった。私も真似てナージャが無事に私の元に帰ってくるように祈りを捧げる。外を守っている兵士の人の声が聞こえてきた。


「貴様たちなんだ!!」

「どこから来た!!」

「うわぁ!!」


 すぐに扉が開かれ。剣を持った男たちが乗り込んできた。


「ここにいるもの全て殺してしまえ。」


 その声とともに切りかかってくる。誰かれ構わず剣を振り下ろしてくる。私は近くにいた女の子と男の子の手を引くと教壇の上に行き、その子たちを後ろにして盾になった。1人の男が。


「お前人魚の女か!人に化けられたのか。こりゃいい。楽しんでしまうか。」


汚らしい笑みを浮かべながらこちらに歩み寄ってくる。私は怖かったが後ろの子たちだけでもと思って逃す。そいつの手が眼前まで迫った時。その汚い手が切り落とされ、誰かが目の前に立ち塞がった。


「その人に触れるな。」

「ナ、ナージャ?」


 そいつの首を跳ねて次々と山賊たちに切りかかって行く。助けに来てくれたのだ。他の人たちと共に。あらかた片付けてしまうと私の方に来てくれた。さっきの子たちも無事らしかった。抱き寄せられて少しびっくりする。


「良かった。無事で。ここら辺で無事なところがないかもしれない。封建も奪われちまった。みんなここから離れるかお前も来い。」

「ナージャ後ろ!!」


 ナージャの後ろに切りかかってくる山賊の生き残りがいた。私を守るためにそいつの攻撃を受けてしまう。急いで駆け寄るが私は山賊に人質にとられてしまう。


「イリアを離せ!!」


 傷口を押さえながら、ナージャが叫ぶ。そいつは汚い笑いをあげながらこう言う。


「動くな!こいつがどうなってもいいのか?こいつ聞いたところ人魚らしいな血を飲めば不老不死だ。それに宝剣は俺が持ってる。何人たりとも邪魔できない!!」


 脇腹に鋭い痛みが走る。そして勢いよく突き飛ばされた。力が入らずよろよろとする。


「イリア!!」


 刺されたらしい。霞む視界にはナージャの顔が映る。そいつは高笑いを上げながら、血の付いた短剣を舐めている。


「ナ、ナージャ泣かないで。」

「待ってろすぐに医者のところに連れていってやるからな。」


 私の傷口を押さえながらナージャが叫ぶ。壁の方によりかけてくれる。


「ぐっん、なんだこれは。」


 そいつはみるみる体が膨張すると弾け飛んだかと思うと剣に血が吸われていった。剣が姿を変えた。一瞬にしてそこにいた人みんなを殺してしまった。ナージャは片足がなくなっていた。痛みに叫ぶ。そいつは殺し終えるとどこかに行こうとしていた。


「待てよ。逃すかよ。」


 ナージャの体が光り始める。所々崩壊しているようにも思える。そいつに飛びかかると激しい鍔迫り合いが起こる。そいつと互角に渡り合っている。


「オマエ、カラダ、イイナ。」


 そいつが初めて話した。不気味な声だった。そいつも胸元に光る短剣見たいの物が見えた。ナージャはそこの剣めがけて振り下ろす。見事その短剣を2つに切り折った。そいつはみるみる体が霞のように消えていった。最後に。


「マタアオウ。」


 そう言い残して。戦いが終わったナージャが駆け寄ってくる。崩壊が進んでいるようにみえる。


「大丈夫か!?すぐに医者のところに連れて行くからそれまでがんばれ

!!」


 私は途切れかけている意識を必死に起こしてナージャに話す。


「ごめんね。多分もうダメ。私のこの貝殻故郷に届けてほしいお願い。それとね最後に私ナージャに言いたいことがあるの。」

「最後とか言ううな!絶対に助けてやるから。」


 ボロボロに崩れて行く体で私を抱えてナージャが走る。


「聞いて。私ねナージャのことが大好き。出会えてよかった。大好きだ…よ…。」


 そう言って私は最後の力を振り絞ってキスをする。そこで私の力は尽きた。遠のく意識の中でナージャの泣く声だけが聞こえていた。


「でそこから私の魂はこの貝殻の中に入ってこれまでずっとこの貝殻の中に入っていました。ナージャと口づけした時に私の血に触れたのでしょう。それで不老不死となった彼は私の約束を果たすために色々と探してくれて今に至るですかね。


 ラヴィさんは隣で号泣していた。私も涙が我慢できずにボロボロ流しながら聞いていました。


「聞いてくれてありがとうございました。私が話したかった事はこれだけです。」


 そう言うと彼女の体は光に包まれていく。


「時間みたいですね。ナージャのところに行ってきます。何か最後にナージャに言うことありますか?伝えておきますよ?」

「師匠に私は元気ですって。」

「ラヴィさんは立派になられましたよと伝えてください。

「わかりました。あと、お父様。私は楽しい人生でした。姉妹たちにそう伝えてください。」


 イリア様は私たちに笑顔を残して光に包まれた。帰り道。


「あっちでちゃんと会えたかな師匠たち。」

「きっと会えてますよ。」


 私たちは街が一望できる高台の公園に寄って沈みゆく夕日を見ていた。

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