記憶

そう俺は一度死んでいる。死んだはずだった。

確かにあの時ルーシーが放った弾丸は俺の心臓をえぐった。

そして次に目が覚めた時には、無機質なコンクリートの塀に囲まれた固いベットの上に横たわっていた。

白衣に身を包んだ男達に囲まれ、ピリついた明らかに異様な空気感がその部屋には漂っていて、即座に腰についているであろう銃に手を掛けようとしたが、そこには何も無くただ空気が手の間をかすめただけだった。

俺が首を持ち上げようとした時、一人の細身の中年の男が俺の顔を覗き込んで軽く微笑みながら声をかけて来た。

『大丈夫かい?自分が誰だかわかるかい?』

もちろん覚えていた。自分が誰であり、何をしてきたか、どんな事があり今この場にいるのか。けれど悲惨な日々にあの地獄のような毎日に戻りたくなくて俺は嘘をついた。

『分かりません私は一体誰なんでしょう?』

なるべくか細く弱々しくなるように慎重に言葉を紡いだ。

男は困り果てた表情をして

『記憶喪失か、、、』と呟き頭をかきながらおもむろにポケットから携帯を取り出し電話をかけ出した。

そこからの記憶はあまりない。ただ一つ覚えているのは最後に男が呟いた言葉。

『コッチの世界にもう戻ってくるな、、、本当に勝手な話だがな』

この言葉は一体なんだったんだろう。一見俺を自由にする天使の囁きに聞こえるが、これは俺を戦場に縛る呪縛の言葉だったかもしれない。

 医師によると前と同じ様な場所に居てしまうと、記憶が戻ってしまう可能性があるらしく、それを知った日本国のお偉いさん方は俺の記憶が戻ることを恐れ、日本の普通の高校に入学させた。(生徒や教師の中に特殊に訓練された兵士が混ざっており、新手の監獄の様な物であるが。)

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本日2度目のさつじん予告 椚田 ねむり @nemurhime

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