愛し君に花の名を捧ぐ(カクヨム)

【愛し君に花の名を捧ぐ】/浪岡茗子様

https://kakuyomu.jp/works/1177354054883427672

掲載サイト・カクヨム

10.5万文字、完結


 久々に中華ファンタジーが読みたくなって探したところ、こちらの物語と出逢いました。

「あ、これ確実に好きな雰囲気」と冒頭から惹き込まれます。


 二十歳になる西の国の末姫、リーリュアと、三十代半ばの東の国の皇帝、苑輝えんき

生まれた国も違う十五歳は年の差がある彼女と彼が、共にしあわせの花を咲かせるまでの嫁入り物語。

ヨーロッパの女の子がアジアの殿方に嫁ぐみたいなイメージでしょうね。



◇◇◇

▼個人的な見どころポイント


*主人公への好感度レベル

★★★★★

 金髪翠目をした西の国のお姫様、リーリュアちゃんは応援したくなる主人公です。序盤は十年前の過去編が展開されますが、幼いリーリュアちゃんがそれはもうおてんば姫で可愛い可愛い。笑


 跳ねっ返りで言うべきことは主張する、困難に負けないリーリュア姫は私の好みドンピシャの主人公ちゃんでした。


 過去編ではリーリュアちゃんが十歳、苑輝さまはまだ皇太子の頃で、二十五歳。ここから十年後に嫁ぐ嫁がないの一悶着をこの二人が繰り広げることになるとはね⊂((・▽・))⊃

幼子の初恋を甘く見ちゃいけませんよ、皇帝陛下?



*無自覚皇帝とおてんば姫様のじれじれらぶの行方を宮女になって物陰からひっそり見守りたいレベル

★★★★★

 この作品を読んで私は無自覚溺愛男子が好きなことに気付きました。自覚症状ありでヒロイン溺愛しまくってるメンズはもちろん大の好物ですが、自覚症状なくヒロインに過保護になるメンズ、だいっすき。


 「だからそういうところがねー、わかってやってるのも質悪いけど、自覚症状なく優しくするのはもっと質悪い……」と苑輝さまに私は頭抱えた。


 妻にする気はないから祖国へ帰れって苑輝さまはリーリュア姫に言うんですよ。ならとことん冷たく突き放して遠ざけてくれたらいいのに、あれやこれやと異国の姫様に関わるからさぁ……。

まったく無自覚なんだからこのイケメンは。(そういうとこ好き)


 苑輝さまとリーリュアちゃんの一向に進まない恋物語にヤキモキしているのは読者だけではなく、読者と同じ視点で二人を見守る熊の武人さんが物語にいいお味を出してくれました。


 彼がリーリュアちゃんに送るある花の名前にときめく。それこそが、この恋物語のタイトル「愛し君に花の名を捧ぐ」の意味です。


 このままでも存分に完成度の高いお話でしたが、ひとつ欲を言えば苑輝さま視点や彼の心情描写がもう少しあれば、彼のリーリュアちゃんへの感情の変化や心の揺らぎが見えてもっと楽しめたかもしれません。


 異国の姫をこの国の皇帝として庇護してやらねば……と、最初は兄にも似た保護者目線の庇護欲だった感情がいつ頃、あの、その、もにょもにょ……となったのでしょう?🎤


 あの時点では絶対もう皇帝はリーリュアちゃんに対してアレがアレでアレだったでしょ!?さぁ白状なさいっ!と、読者は苑輝さまにお尋ねしたいことが山盛りなんですよ。

根掘り葉掘りインタビューしたいわ。


 【愛し君に花の名を捧ぐ】は同一作者さまの作品【富貴天に在らず、吾に在り】のスピンオフということで、こちらもあらすじを読むと、あああっ!なるほど、このお話の主人公は【愛し君に花の名を捧ぐ】に出てきたあの人の○○……!と、まんまと続けざまに読んでしまいました。


【富貴天に在らず、吾に在り】

https://kakuyomu.jp/works/4852201425154926302

35.1万文字、完結


 作者様が先に公開されたのは【富貴天に在らず、吾に在り】、そこからのスピンオフが【愛し君に花の名を捧ぐ】だと思われますが、私は【愛し君に花の名を捧ぐ】を先に読んでいてよかったと思いました。

図らずも私にとっては【富貴天に在らず、吾に在り】が【愛し君に花の名を捧ぐ】の続編スピンオフとなりました。

まさにご褒美。


 【富貴天に在らず、吾に在り】にも苑輝さまとリーリュアちゃんが出てくるんですけどね、続編の二人は……ああ……切ねぇ〜!!!

今すぐ二人まとめて抱きしめて差し上げたい!!

そうよ、そんなんだよね。それが人生ってものよねと激しく首を縦に振りました。

嫁入り物語の先があります。お姫様は幸せになりました、のその先がここにありましたよ。


 こちらでは何度かうるっと涙腺が刺激されました。【富貴天に在らず、吾に在り】の主人公ちゃんがまた破天荒な型破りキャラのおかげで、太陽のように作品全体を明るく照らしてくれるので助かりますが、嫁入りラブストーリーだった【愛し君に花の名を捧ぐ】とは物語の雰囲気が異なり、扱うテーマは重たいです。


 苑輝さまとリーリュアちゃんに忍び寄る悪意、陰謀、文書改ざん、貧困層と富裕層による環境の差、戦争孤児、女の悩み、現代にも通じる様々な闇に型破りな主人公、明麗めいれいちゃんが挑みます。

しかも【富貴天に在らず、吾に在り】のさらに続編まであるんですよ。


【懐璧】

https://kakuyomu.jp/works/1177354054891545963

(愛し君に花の名を捧ぐ、富貴天に在らず、吾に在りと同じ世界)

6.8万文字、完結


 【富貴天に在らず、吾に在り】サイドの続編のため、苑輝さまとリーリュアちゃんの出番は少しです。

【富貴天に在らず、吾に在り】の本編時間軸からは五年後の話になります。


 作者さまはストーリーにほんの少し混ざるほろ苦さの演出が絶妙ですね。

手放しにハッピーエンドとも喜べない、でもこうすることが最良であったエンディングかもしれないなぁと、しばし余韻に浸りました。


【愛し君に花の名を捧ぐ】【富貴天に在らず、吾に在り】両作品ともに「好きな人と出逢った女の子はしあわせになりました」のふわふわとしたおとぎ話では終わらせず、キャラクター達にその先の人生を歩ませている。


 ただのハッピーエンドは本当はどこにも存在しない、浮き沈みがあってこそ人生なのだと、三作を続けて拝読した私が最も感じた作者さまからのメッセージでした。


 中華ラブストーリーがお好きな方へ、ぜひとも三作セットでお召し上がりを♡

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