第106話:決断
「リカルドに覚悟があるのなら構わないのではないか。
余には既にリカルドに臣従して頭を下げる覚悟はできている。
リカルドのお陰で国内の悪臣佞臣は取り除かれている。
西と北の魔境の備えもリカルドのお陰で万全だ。
余だけでも十分治めていくことができるだろう。
リカルドは新たに定めた皇帝直轄領の事だけを考えればいい。
その直轄領も優秀な代官や騎士に任せれば問題ないのではないか」
リカルド王太子は、忠告や反対の意見を父であるペンドラ国王から聞きたかったのだが、諸手を挙げて賛成されてしまった。
忠告や反対がないだけでなく、家臣を信じて任せればいいという、心と肩の荷を軽くしてくれる助言をもらえた。
実の息子に頭を下げて臣従する覚悟はできているという、父親の有難い言葉をもらい、次に話を聞きたいライラとローザの城に行った。
「私はどちらを選ばれてもいいと思います。
皇帝に就かれても就かれなくても、リカルド王太子はリカルド王太子です。
今まで通りできる限りお支えさせていただきます。
とは言っても、こうやってお迎えする事くらいしかできませんけど」
カウリー伯爵夫人ことライラの話を聞いたリカルド王太子は、心から安堵できた。
リカルド王太子が王位に就こうと皇位に就こうと、ライラは変わらない事が確信できたからだ。
バートランドもすくすく大きくなっている。
魔力を増やすために身体をデザインしたが、普段は魔力を暴走させないように封印してある。
リカルド王太子が一緒にいる時だけ魔力を循環させている。
それは三男のヒューイも同じだった。
バートランドと同じように膨大な魔力を持てるように魔改造している。
ローザとの間に生まれたボライソーと一緒に海を支配して欲しいと思っている。
陸の魔族よりも圧倒的に強い魔獣がいるのが海だ。
しかも人間は海上では全力を振ることができない。
しかし飛行魔術と遠距離攻撃魔術が使えるリカルド王太子は別だ。
広大な海の資源を活用できるうえに、他大陸にまで遠征が可能だ。
魔族の侵攻を完全に撃退できるようになったら、大陸の人口は爆発的に増える。
その時に食糧を巡って人族同士が争わないように、海からの移民する道をリカルドの代で確保しておきたいのだが、それを引き継げるだけの子孫を育てておかないといけない。
「別に皇帝に成ってもいいんじゃないか。
辛い時は何時ものように添い寝してやるよ。
それにリカルドが皇帝に成ったら、バートランドとコンラッド、それにヒューイとボライソーも王位につけるんだろ。
だったら悩まずにとっとと皇帝を名乗ってくれよ」
ダドリー伯爵夫人ことライラが冗談交じりに言い放ってくれる。
確かにその通りだな。
四人を王位につけた上で、レイラの子供と差を付けたいのならそうするしかない。
内乱の芽を摘んだうえで四人を王にするには皇帝を名乗るべきだった。
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