第40話:難民問題
魔王軍遊撃隊が大陸を跳梁跋扈した事で、難民が急増した。
国や領主の身勝手や失政のために、大陸の治安が極端に悪化していた。
食糧不足が極端となり、近隣の村同士で略奪が行われるようになってしまった。
唯一安全で食糧が豊富なのは、皮肉な事に魔王軍と戦い続けてきたフィフス王国と、大国であるセント・ジオン皇国、エルフのリストン大公国だけとなっていた。
三カ国の中で難民が無条件で逃げ込めるのは、義勇兵を募集しているフィフス王国だけだった。
「義勇兵の中で武器を持っている者はどれくらいいるんだい」
リカルド王太子は全く期待せずに確認の為に聞いていた。
そもそも最初から労働力として集めていただけだった。
激烈な魔王軍との戦いで失った農民を補充し、食糧生産をしたかっただけだ。
自警団として多少でも魔王軍を引き付けてくれれば十分な存在だった。
だがそれでも、武器を持っているかどうかは大きかった。
武器すらないと、自衛力すらないことになる。
「残念ながらほとんどおりません。
生まれ育った村の近くなら、農具程度はもっておりますが、中には農具すら持っていない者もいて、開拓させるにも農具からそろえなければいけません」
最初から期待していなかったリカルド王太子だが、それでも困った問題があった。
あまりにも急速に義勇兵が増えたために、農具の生産が間に合わないのだ。
最初から武器の生産は諦めていたが、農具すら間に合わないのは問題だった。
義勇兵の中に刀鍛冶や野鍛冶がいればいいが、流石にこの状態で王家や領主が武器や農具を作れるものを手放すはずがない。
もしいたとしても、材料にする鉄や青銅がない。
「とりあえず魔境の魔竹で竹槍を作らせてくれ。
硬い魔樹を選んで棍棒を作って与えてくれ。
農具も硬い魔樹を材料にして作るようにしてくれ」
「承りました」
そう側近に言ったリカルド王太子は、前世の知識とこの世界の知識を組み合わせた錬金術を考えていた。
ラノベやアニメに出てくる手法の中には、地中の鉄や銅を集めるものがあった。
それがこの世界で実行可能かどうかは分からないが、試してみる価値はあった。
実際にこの世界の魔力と前世の知識を組み合わせた手法で、莫大な魔力を日々生み出しその全てを備蓄できているのだ。
「ああ、待て、ウェルズリー王国出身の義勇兵を集めてくれ。
そしてその中でウェルズリー王国に侵攻する覚悟のある者を選抜してくれ。
元村人は家と土地を取り返して騎士や徒士に取立てると伝えてくれ。
街の元住人は宮中騎士や宮中徒士に取立てると伝えてくれ」
「承りました」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます