第39話:糞尿問題
リカルド王太子は今まで以上に防衛力を高めようとした。
魔王軍だけでなく人族にも喧嘩を売ったので、ノウェル辺境伯家方面から人族が攻めてくる可能性が高くなっていた。
リカルド王太子の前世の性格は、ライラとローザとお腹の子供以外は見捨てても構わないと思っていたが、今生の性格は共に戦った戦友や民を見捨てない。
二つの性格が葛藤した結果、籠城する時の力を高めようとした。
「魔境からスライムと飛べない鳥を集めてくれ」
リカルド王太子が考えたのは、民の糞尿を利用した養鶏と養豚だった。
ラノベでよくある方法にスライムに糞尿を処理させる方法があるが、糞尿を処理させたスライムを食べる気にはならないだろう。
だがそのスライムを鳥や豚に食べさせた後で、その鳥や豚なら人間も気にせずに食べることができる。
前世の沖縄では人の糞尿で豚を飼っていた。
「危険がない成長の早い豚のような獣がいるのかどうか」
城内や領都内で飼う動物の候補は鶏と豚に似た獣だが、問題もある。
昔前世で小規模な養豚業が行われていた頃、毎年数人が豚に殺されていた。
豚は元々猪だから、牙切りが行われるようになる前は、その牙で殺されたのだ。
豚は賢くて、人間の股の間に頭を入れて、動脈を切り裂いて大量出血させる。
元々は天敵の肉食獣をその方法で撃退していたのだ。
養豚を導入するのなら、その点を十分に注意しなければいけない。
「それと飛べない鳥がこの世界にいるかどうかだが」
人間に害を与えない豚のような獣がいなければ、飛べない鳥がいればいい。
だが鶏に全く問題がないわけではない。
鶏や鳩は人間に直接害は与えないが、仲間同士の喧嘩で結構な数が死ぬのだ。
ケージに入れていても、その隙間から嘴で弱い個体を攻撃してしまう。
伯父が養鶏をしていた頃は、嘴をバーナーで焼いて丸くして、突いても弱い個体が殺されないようにする技術が導入されていなかった。
だからよく殺された鶏を食べさせてもらったものだ。
「最悪筋を切るか風切羽を切ればいいか」
動物虐待と言われるかもしれないが、そもそも命を食べるというのは残虐なモノで、命を奪って食べているという事を自覚し感謝して食べればいい。
それに籠城戦を想定すれば、少しでも多くの食糧を防壁内で生産する必要がある。
それ以上に大切な事は、糞尿を処理しなければいけない事だった。
籠城戦で糞尿を上手く処理できないと、城内に疫病が蔓延してしまう。
堆肥にするのも一つの方法だが、籠城中は防塁の外に出せないから、安全を考慮するならスライムに処理させるのが一番だとリカルド王太子は判断した。
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