第41話:結婚問題
リカルド王太子はとても悩んでいた。
セント・ジオン皇国がレイラ第三皇女との結婚を強く希望してくる。
いや、むしろ人質に出すと匂わせるほどの状況だった。
ハッタリが効き過ぎたのはリカルド王太子の計算外だった。
だが、この結婚はリカルド王太子にも都合がいい部分があった。
「レイドーン皇帝陛下には、この話をお受けするとお伝えしてくれ」
リカルド王太子は、レイドーン皇帝の勅使にレイラ第三皇女との結婚を受けると返事をしたが、同盟や支援や人質を優先して結婚を受けたわけではない。
愛するライラとローザと子供達を優先した結果だった。
幸か不幸かライラとローザが同時に妊娠した。
二人のどちらを正室に選んでも今の関係にヒビが入ってしまう。
生れた子供も王位継承争いを始めてしまうかもしれない。
魔力を高めた二人の子供が争うなど、絶対に許容できない事だった。
「承りました、そのお言葉を聞けば皇帝も喜ぶことでしょう」
レイドーン皇帝の勅使がへりくだって返事をしたが、リカルド王太子の心を掴む事は全くできていなかった。
不正の目立った家臣は処断されたものの、愚かな家臣が全て取り除かれたわけではなく、皇室への忠誠心はあるが他国の王族を下に見る家臣も多くいる。
この勅使もとても有能で皇室に対する忠誠心もあるが、内心ではリカルド王太子を下に見ていた。
それを表に出すほど愚か者ではないが、場の雰囲気を読んで行動を決めてきた前世の経験が豊富な、今のリカルド王太子を欺く事などできない。
「いや、喜んでいただかなくて結構だとレイドーン皇帝陛下にお伝えしてくれ。
はっきりとレイラ第三皇女殿下を人質だと言ってくださっているから、私も率直にお答えしよう。
皇室に忠誠を誓うあまり、フィフス王家や王家に忠誠を誓う貴族を下に見るようなモノは、この手で成敗する、そうレイドーン皇帝陛下にお伝えしてくれ」
勅使は恐怖のあまりその場に倒れそうになった。
リカルド王太子の目が、殺意を込めて睨んでいるのだ。
皇国にまで武勇が伝わるほどの猛者が、本気で殺気を叩きつけいるのだ。
それに耐えて平然とできる者などほとんどいない。
長年外交に携わり、皇国でも有能と評判な勅使だが、それは全て皇国という大国の力を使って圧力をかけた結果で、本人の能力ではなかったのだ。
「勅使殿は気が弱い上に返事もよくにできない礼儀知らずなようだ。
これでは私の真意を正しくレイドーン皇帝陛下に伝えてくれるかとても心配だ。
勅使殿に任せることなく、こちらからも返答の使者を送らせてもらおう。
宜しいですな、勅使殿」
リカルド王太子は戦友を呼んで皇国との交渉内容を伝えた。
同時に、皇国への往復路での行動も命じていた。
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