第19話:塩化カリウム

 リカルド王太子は第二第三騎士団を率いて北魔境を探索していた。

 魔王軍の侵攻が撃退した今こそ、どうしても手に入れたいモノがあった。

 それはフィフス王国最大の弱点である塩だった。

 フィフス王国は内陸奥深くにあり、岩塩鉱がないので塩を全て輸入に頼っていた。

 もし塩が輸入できなくなったら、フィフス王国は滅んでしまう

 リカルド王太子は、自分が魔王ならフィフス王国の輸送隊、特に塩の輸送隊を攻撃するか、交易路の途中にある国を攻撃すると考えていた。


「こういう植物を探してください。

 この植物は草で一年で育ちますが、とても甘くておいしい実をつけます。

 米や麦、芋や南瓜に代わる主食にする事もできます。

 何より重要なのは、大量に出るゴミの葉や茎を燃やす事で、塩を作れるのです」


 騎士団員達にはどうしても信じられない話だったが、言っているのが倒れて以来才能が開花したリカルド王太子なので、探すだけは真剣に探した。

 一方前世の記憶を取り戻したリカルド王太子は、仮想戦記小説を書くときの調べた知識アイデアが色々あった。

 その中にバナナの皮や茎や葉を燃やして塩化カリウムを作るというモノがあった。


 まず突然変異で種がなくなり大きくなったバナナを見つけられるかどうか。

 突然変異バナナを見つけられたら、フィフス王国の食糧事情は大きく変わる。

 穀物の生産は今まで通り行うが、バナナを主食の一角にしたいと思っていた。

 バナナ単体では穀物よりも利益や生産性が悪くても、塩の生産を考えればどうしても発見導入したい作物だった。


 だがどうしてもバナナでなければ塩化カリウムが作れない訳ではない。

 南米のウィトト族は灰塩を作っていた。

 いや、ウィトト族だけでなく、南アメリカと中央アメリカの諸部族が草木を燃やして灰塩を作っていたのだ。


「具体的な灰塩、塩化カリウムの作り方」

一:野菜などの塩化カリウムを作る材料を集める。

二:灰のあまり出ない薪を使って灰を作る火をおこす。

三:集めた材料を薪の上に載せるようにして燃やして灰にする

四:灰が冷えたら炭や不純物を取り除いてフィルターを通して水でろ過する

五:ろ過した灰汁を容器に入れて再度火にかけて沸騰させ、塩の結晶を取り出す


 アメリカ合衆国保健福祉省が推奨している一日の摂取量は。

 塩化ナトリウム:二三〇〇ミリグラム

 塩化カリウム :四七〇〇ミリグラム

 ただ大量に摂取すると死んでしまうので、それだけは注意しなければいけない。


「殿下、見つけました、確認お願い致します」


 騎士達が次々とバナナを発見した。

 一種類だけでなく、多くの種類が発見された。

 リカルド王太子は騎士団とその家族を使って大々的に栽培実験を始めた。

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